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たびゆめ ~何度でも追い求め続けよう~  作者: 幸明沙夜
ABSOLUTELY RESCUE
25/60

6 あまあま

「わんっ」


ガサガサガサッ



 寿さんと東条警部が座っているベンチの後ろで木陰から覗いている少年がいた。

 サンタの声で驚き、覗きを止めて立ち退こうとし始める。

 昨日の能力臭の残り香とこの少年の匂いが一致した。


「ちょい待ち! どこにも行かせねぇぞ~!」

「げぇ!? 何だよ! この壁! コノヤロー出せよ!!」

 桜雅(おうが)さんが得意のバリア能力で少年を確保する。


「これから、いいとこだったのに!」

「それは、オレだって分かってるっつーの! あー! 本当にイイところだった!!」

 少年の一言に同調してみせる桜雅さん。


 その姿に溜息が出る。

 この人は、少年の心を持ち過ぎだ!

 (なご)みんがいたら、エロ桜雅と呼び始めるだろう…。


「勝手に甘い空気を増長させて良いものではありません!」

「あっきーが能力者、教えんとエサやらんとか、言うさかい。 わいも飢え死には御免や」

 再度、溜息をつく…。


 このエロ動物達を動かすのが、どれだけ大変だったか…。

 寿さんの判断は、正しかった。

 俺がいなかったら、どうなっていたのだろうか…。

 口では、楽しんでるように言っているだけで、ちゃんと止めるとこで止めてる筈だ。

 ちゃんと…。


 …起こらなかったことを考えるのは止めておこう。



 それに東条(とうじょう)さんなら、寿さんへの気持ちが強すぎて、状況が分からなくなるほど、己を見失う事にはならなさそうだ。

 今も硬直したまま、微動だにしていない…というか、出来ないのだろう。

 寿さんの右足は、東条さんに掛かったまま、寿さんがベンチの背もたれに頬杖をついて、能力犯確保の様子を見ていた。


「…長いと思ったのよねぇ。 サンタと桜雅のせいだったのね」

 俺は否定をしない。

 大きく頷いて見せる。


「何言うとんねん! わい、ちゃんと働いたで!」

「心外だなぁ~。 オレも真面目に確保してるじゃないっすか!」

 サンタと桜雅さんがしらばっくれる。


 少年も負けじとしらばっくれ始める。

「オレ悪いことしてないぜ? あんた達こそ何なんだよ!」

「警察で~す! 能力使ってたこと、バレちゃってんの! 素直に謝っとけって!」


「ウソだろ!? オレ悪くないって! エロ動画よりリアルな感じが面白くて覗いてただけじゃん!!」

「へぇ~。 お前の能力って、そんな簡単にそうなっちゃうわけ?」

 桜雅さんが上手く能力の話を聞いているが単に知りたいだけのような気もしてくる。


「そんなワケないじゃん! 甘々全開能力で背中を押してるだけっ! だから、お互いに気持ちがないと上手くいかないんだよ」

「上手くいく場合は、どうなんの?」


「そりゃ。 二人の世界ってやつじゃね? どんだけ近寄ってもオレの存在に気づかねぇから、面白れぇのっ!!」

「よし! その話、後で詳しく教えろなっ!」

 一応、桜雅さんが調書を取る話をしているのだろうが、そう聞こえないのは俺だけだろうか。


「あんた達、すっげぇイイ感じだったんだけどなぁ~。 無自覚に好意持ってる人が能力に掛かりやすいみたいで、積極的になるんだぁ。 自覚ある人は、ゆっくり能力にかかるから、時間かかるんだよ。 後は、当人同士の性格次第!」

「坊や? 背中を押しすぎると今後の行く末がどうなるのか、叩き込んであげるから覚悟しなさい」

 面白がられていた寿さんが静かに怒っている。


 おとり捜査だから、途中まで普通におとりでも問題ないだろうと思って、途中から〟我に返る〝と、俺の能力を使ったことは黙っておこう。

 途中まで甘々全開に掛かっていたとなると、寿さんは東条警部のことを…。

 いや。

 そもそも、おとり捜査中なわけで本当に能力に掛かっていたのか…。

 演技でおとりとなっていたのか…。

 それは、寿さんだけが知っている事実だ。


 気になる…。



「何だよ!? このオッサンが理性捨てずに燃え上がらなかったからって、八つ当たりすんなよな! オバサン」

「オバッ!?」

「寿さん。 相手は子供ですからっ」


「しっかし、オッサンよく耐えたよなぁ。 オバサンのこと好きでたまらないんだろ?」

「そんな事あるわけないでしょ! 君の登録や今後の事、それから、君には精神的に早すぎる能力だから、能力についての勉強もするわよ」

「げぇ!?」


 寿さんは、やはり演技をしていたのだろうか。


 この少年は、お互いに好意がないと上手くいかないと言っていた。

 それは、つまり能力に掛かっている時点でお互いに好意があるという事だ。


 こんなにも決定的なのに寿さんは、本当に気づいていないのだろうか。

 素人が演技であんなに積極的に出来るものだろうか。

 演技でないとするなら、こんな大勢の前だし、気付いていても隠す…か。


 寿さんのみぞ知る。




「なぁ。 暁澄(あきと)。 あの小僧、無自覚に好意持ってる方が…って言ってなかったか?」

「言ってましたね。 でも理性保てるように俺の能力使ってますし、おとり捜査中でしたから、分かりませんよ」

 途中から…という事は、黙っておこう。


 桜雅さんに言えば、公にされてしまう。



「東条警部! 寿主任からの好意あるかもだそうっスよ!!」

「桜雅さん。 さっきの寿さんのせいで、今日は何を言っても耳に入らないですよ」

 ベンチには、放心状態の東条警部が座ったまま遠くを見ていた。



「俺なら、能力かかった振りして、好き放題しちゃうけどな~」

「最低ですね…」


「わいは、(れい)(はよ)う幸せんなって貰えたら、それでええんやけどなぁ。 今日のは、きっかけになったんやろか?」


 サンタが犯人確保に時間を掛けたのは、そういう事だったのか…。

 俺もサンタに賛成の意を込めて撫で回してやる。


 奥手な東条さんが告白するか。

 無自覚な寿さんが東条さんへの好意を気付くか。

「…どっちが先になりますかね」



「「全くだ!」」



 サンタと桜雅さんが賛同した。


 そう思って、見つめる視線の先には、寿さんと東条警部がいる。

 調書は、後日となり、身元引受人が来るまで少年を警察署の方でお願いした。






「ごめんなさい」

 寿さんが東条警部に謝罪していた。


「なんだ? 畏まって…」

「絶対に気持ち悪かったと思うの。 私がしていたのは、セクハラみたいじゃない?」


 さすが大人である。

 勤務中であるし、公私混同もよくない。

 女性であるのに積極的に動いた自覚があるという事は…。


 残念なことに演技なのか?


「本当にごめんなさい」

「いや。 捜査だ。 謝るな! お前の方こそ、嫌だったろう…すまない」


 さすが、こちらも大人である。

 相手への気遣いに愛を感じます。



「心地よかったわよ」


 素っ頓狂に無自覚に意味深発言を投下する寿さん。

 やはり演技であんなことが出来る人では、なさそうだ。

 東条警部の顔からも笑みが零れそうになっている。


「出会ってからの付き合いも長いしね。 今更、嫌も何もないじゃない?」

「…そう言うものか?」


 いいえ!

 決して、そう言うものでは、ありません!

 東条警部。 落胆しなくて大丈夫です!

 鈍感に誤魔化されないで下さい。


「そうよ。 でも東条のそういう真面目なとこ、嫌いじゃないわ」


 あぁ…。

 東条警部は、本当に分かりやすい人だな。

 寿さんの言葉でまた元気になっているのが分かる。

 俺も心の底から、貴方を応援します。


 最後に寿さんが追い打ちを掛ける。




「東条に想われている人は幸せね」


 寿さんですよ!!




 全く東条警部の好意に気付いていないことが分かり。

 寿さんが東条警部への好意にも無自覚なことが分かり。



 今日が終わる。




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