2 おいわい
『夏の心霊特集 今日は東京郊外で住み着いていると有名なビルに来ています』
「あー! 和心ココ知ってます! 鳥肌が立つくらい何か寒いんですよ。 このビル!」
「へぇ~。 あ、俺も行ったことあるわ。 そんなの感じなかったけどな」
「桜雅は、鈍感ですか? 絶対あそこには、何かいますよ!! 和心は二度と行かない。 近寄らないと心に決めています!」
「鈍感で結構。 そんな怖いもんに敏感なんて御免だわ」
「ちょっと、そんな怖いもの遥絆ちゃんが帰ってきたら消しなさいよ!」
「へいへい」
「もちろんですよ」
今日は、遥絆ちゃんの退院の日。
子供は、素直だから、拒絶とかされたら、どうしようかしら…。
これでも一応、これから、上手くやっていけるか緊張しているのよ。
子供なんて、縁のない生活をしていたから、人に振る舞う料理をするなんて、久しぶりだし、よく考えたら、お弁当もいるのよね。
世の中の主婦を尊敬するわ…。
それにしても結城君が零係に来てから、職場以外で集まる機会が増えているわね。
こちらとしては、子守要因が増えて助かるわ。
今も料理の準備を手伝ってくれていた筈なのだが…。
「そこのお二人さん。 手が止まっているわよ!」
「今いいとこだったのに~。 犬は寝てれば良いからいいよな」
「桜雅! あの映像。 やっぱり女の人がいましたよ~っ! サンタみたいに寝てたら、桜雅デブりますよ…」
遥絆ちゃんも楽しめるように今日は手巻き寿司を準備している。
桜雅は、手巻きの具材を切る係。
天祥ちゃんは、とっても意外な事に料理が上手であることが判明して、驚きを隠せなかったが、食い意地が張っていると、一言で納得してしまったわ。
「桜雅~。 あと、シーチキンマヨとコーンマヨも作って下さい」
「じゃぁ、混ぜれば良いだけにしといてよ」
「そのくらい適当に自分でやって下さい」
「どうせなら、美味い方がいいじゃん?」
「…なんか上手く乗せられた気がします」
「しょうがないわよ。 天祥ちゃんの手料理美味しいのだもの」
「ここにも乗せるのが上手い人がいました! 悪い気はしませんがキッチンから出られなくなりました」
「お吸い物と茶碗蒸し完成よ。 手巻き寿司にあと必要な具材何があるかしら?」
「和心は、キンパ風に焼き肉も入れたいです!」
「何それ! 美味そう! 手巻きなんて一人暮らしになってから、してないもんなぁ」
「じゃぁ、もやしのナムルも一緒に用意しようかしら…。 あとは、キムチもね。 クリームチーズとサーモンも準備して…。 あ、桜雅アボカドも切って頂戴」
「へーい」
「和心も一人じゃない晩御飯が増えて嬉しいです。 主任また来てもいいですか?」
「いつでも大歓迎よ。 ついでに作ってくれると有り難いわ」
「あっきーと遥絆ちゃんの為なら、任せて下さい!」
「ついでに俺の分も頼むわ」
「桜雅の分は、手伝わないと数に入れません!」
「ケチ!」
「ケチで結構。 桜雅に大盤振る舞いしても何の得にもなりません」
「しょうがねぇな。 食べるために手伝うかぁ」
そうこうしているうちに玄関の方で声がしてきた。
「ただいまー!!」
遥絆ちゃんの元気な声に皆、笑顔で静かにする。
「誰かテレビ消して!」
小声で伝えると、サンタがのそっと起きて、チャンネルのボタンを押してくれる。
賢い犬過ぎることに感謝し、後でご褒美おやつを奮発してあげようと心に決めた。
ガチャ
リビングのドアが開いたと同時に大きな音が木霊する。
ぱーんっ
パンッパーンッ
「「遥絆ちゃん! 退院おめでとう」」
可愛いワンピースに身を包んだ遥絆ちゃんが大喜びではしゃぐ。
「うわ~っ!! ありがとう! はなうれしい!」
私の見立ては間違っていなかった。ワンピースが良く似合っている。
サンタも遥絆ちゃんに尻尾を振って、じゃれ回っている。
「遥絆ちゃん初めまして。 お兄ちゃんと一緒に働いている仲間の和みんです」
「はじめまして。 なごねぇ? ん~…なーねぇ! よろしくね」
「やっべー。 噂以上に可愛いなっ。 遥絆ちゃん! オレ、桜雅。 宜しくな!」
「はじめまして。 おーが。 おにぃね!! よろしくね」
「ヤバイ…。 オレ結婚したくなった。 娘が欲しい!」
「あー。はいはい。 嫁の顔が見てみたいですね」
「料理美味いし、フリーで丁度いいじゃん! 天祥、俺の嫁になれば?」
「んなっ…!!」
天祥ちゃんの顔面が一気に赤面している様子を見て、満更でもない様子だなと感じるが、ここは触れないでおきましょう。
せっかく、信頼関係が出来ているチームなのに色恋沙汰で班編成変更とか、面倒だわ。
「寿さん。 お洋服ありがとうございます。 料理まで準備して頂いて、遥絆が喜んでいて、本当に嬉しいです」
「何言っているの! 明日から、毎日なのだから、洗濯は結城君に任せたわよ!」
「「はい」」
結城君と言う言葉に遥絆ちゃんも反応して返事して見せる。
「はなもおせんたく手伝えるよ」
「ありがとう。 一緒に畳もうね」
「うん」
「可愛い~。 オレも手伝いたくなるわぁ」
「そんなこと言って、桜雅は言うだけで、しないくせに何を言ってるんですか?」
「そんなことねぇって。 なぁ遥絆ちゃん。 おにぃと手巻き寿司つくーろー♪」
「うん! 作る!! はなね。 たまごさん入れるの♪」
「結城君じゃ駄目ね。 二人とも結城君だから、暁澄君って呼ばないとね」
「あははは。 はい。 宜しくお願いします」
「あ! ことねぇ! おようふくありがとう! ことねぇだいすき!!」
遥絆ちゃんと手巻き寿司を作っている桜雅が悶絶し始める。
「暁澄! オレは決めた! オレも大好きと言って貰えるように通うからな!」
「どうぞ。 好きなだけ来て下さい。 遥絆、良かったな。 遊んでくれるお兄ちゃんとお姉ちゃんが増えたぞ~」
「うん! ありがとう!!」
本当に賑やかな夕食で遥絆ちゃんが喜んでくれて良かったわぁ。
緊張が解けたら、ホッとした。
片付けが終わって、遥絆ちゃんが眠ったら、ビールを飲みましょう。
夕食時もまだ仕事の終わらない主婦を思うと、益々、尊敬した。
母親か…。
もうじき8月ね。
花束を持って、久しぶりに会いに行こうかしら…。
遥絆ちゃんが眠った後も天祥ちゃんと桜雅が先程の心霊特番を録画していたらしく、熱中して暁澄君と見ていた。
お酒を片手にサンタへおやつをあげながら、その様子を見ていた。
この前の拘置所内で起こった不審死に関して、能力犯罪である可能性が高かった。
サンタを連れて、東条が拘置所へ行ったが、能力特有の匂いが二種類、残っているだけだとサンタが言っていた。
拘置所内のどこにも同じ匂いの人間は、いなかったのだ。
釈放された人間なんて、いなかった。
警察官も不審死と同じ人員だった。
どんな能力で、どうやって侵入して、どう殺したのか。
まだ、何も掴めていない。
結城暁澄が危険であることに変わりはない。
だから、こうして家にいる人数が多いのは助かるわ。
暁澄君にだけは、不明点が多すぎて、まだ伝えていない。
折を見て伝えなければ…。




