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たびゆめ ~何度でも追い求め続けよう~  作者: 幸明沙夜
NEVER EVER GIVE UP
19/60

19 到来

はぁ はぁ はぁ はぁー



カチカチカチッ


 エレベーターが閉まるのも待てなくて閉まるボタンを連打してしまう。

 朝、電話がきてから飛び起きた。

 能力を駆使して目にも止まらぬ速さで駆けて来てしまった。

 エレベーターのドアが開き切るのも待てず、また走る。



バタバタバタッ



結城(ゆうき)君!? ここは病院ですよ!! 走らないで!」

「ごめんなさい!!」



 遥絆(はな)が…。



 遥絆が…。




ガラッ


 目を覚ました。


「あははは。 じゃぁ次は、せんろのおうたね」


 遥絆の声が聞こえる。

 誰かと話してる?


「遥絆?」


シャー


 カーテンを捲ると満面の笑みの遥絆一人だった。


「あーにぃ!! おはよう」


「あれ? 誰かとお話してなかったか?」

「してたよ! あーにぃも聞こえるの?」


「?」

「はるの声!」


 遥大(はる)!?



「ゆめの中でもすっと、はるとお話してたんだけどね。 はるにごはん食べてないんじゃないかって言われて、食べないと会えなくなっちゃうって言われて、目が覚めたの」


「遥大は…。 遥大は、どこにいるか言ってた?」

「暗くて何もないところだって、つまんないから一緒におうたうたおうって、ずっと、うたってたの」

 遥絆は、普段通り楽しそうにお話してくれる。


「遥大! あーにぃがきてくれたよ。 …うん。 はるのよそうどおり汗だくっ! あははは」

 遥大のことも気になるが…。

 目が覚めた遥絆は、ココにはいない遥大と会話が出来るのだと、独り言のように話しているのだ。

 その光景は、知らない人が見ると異様な光景にしか見えなかった。

 ここは、病院だ。

 精神疾患と間違われないように無事に退院しなくては…。


 どう伝えれば分かるのだろうか…。


 そもそも、本当に精神疾患ではないと判断して、間違っていないのだろうか?


「あーにぃの声は、はるには聞こえないって。 だから伝えてほしいって。ぼく、つよくなりたいから、がんばってるって。 あーにぃがむかえに来てくれるまで、がんばるって言ってるよ」


 俺は、思いっきり遥絆を抱きしめた。


「あーにぃ? どうして泣いてるの? 大丈夫?」

「お兄ちゃん嬉しくって…。 遥大に必ず見つけるって伝えて!」


「うん!!」


 そう言って、俺が泣いている間、歌をうたってくれた。

 遥大の声は、俺には聞こえないが、きっと二人で歌ってくれていたのだろう。



♪せ~んろはー…





ゴポゴポゴポゴポゴポッ

 暗い暗い中で水泡が揺らめく。







「寿――――――――!?」

 警視庁中に響きそうな大声で駆けつけてくる男がいた。


「そんな大声を出す距離ではないでしょう?」

 耳をふさいで怪訝な顔をしても美人だ。

「これが出さずにいられるか!」


「結城がどれだけ危険な立場にいるのか分かっているのか!?」

 束ねた長髪が乱れるほどに憤怒している。

「分かってるわ」


「いいや! お前は分かっていない!!」

「分かってるわよ!」


「分かってない!」

 二人の押し問答に終わりが見えそうになかったので、桜雅が割って入る。

東条(とうじょう)警部。 いい加減にして下さいよ~。 主任も分かってるって言ってるじゃないですか」


「しかしだな。 結城の後見人になるとは思ってもいなかった…」

 長年の付き合いで頑固で融通の利かない性格を知っているからか、観念したように長い溜息を吐く。男であるがその姿も綺麗な顔立ちのせいで絵になる。

「私と一緒に生活するのが一番安全でしょ! 一般人に危険も及ばないし! あの件は公に出来ないから、能力の安全対策で上には話を通しているわ」

 あの件とは、計画的交通事故で手伝った男が殺害されたことだ。


「えぇ!? 主任あっきーと一緒に住むんですか?」

 事務作業に一生懸命になっていた和心も手を止めて、書類が破れそうになるくらい力が入っていた。

「遥絆ちゃんも退院するから、三人よ! 一気に賑やかになるわ」

「子連れかー。 寿主任それ、婚期、逃しま…」


ドゴッ

 分厚い本が桜雅の顔面に直撃する。


「何か言った? 桜雅(おうが)?」

「いえ…」


「あ! じゃぁ、他に男が寄らない、今が東条警部のチャンスですね。 ファイティンです!!」

「ああ…。 いや、そうじゃなくて、私は危険だと言っているんだ!」

 寿澪の身の安全に不安を抱いているせいか和心の恋の応援も右から左で聞き流す東条。


「だから、私達がいるのでしょう!」

 そう伝える寿警部に賛同し、皆の視線が東条警部へ向かう。


 目の前の仲間の決断に驚きながらも覚悟を決める。

「そうだな。 いくらでも協力は惜しまない。 零係は、まだまだ少数精鋭だからな!」






「こんにちは」

 聞き慣れた声が二班に向かってくる。


「わんっ わんっ わんっ」

 サンタが尻尾を降って大喜びしている。


「あっきー!? どうしたんですか?」

 突然の結城暁澄の来訪に驚く和心。

「あれ? 寿さんから聞いてないですか?」

「伝え忘れてたんじゃ…」

 また分厚い本が飛んできた桜雅。


「サプラ~イズ! 今日から零係二班のバイト君です! 改めて自己紹介どうぞ」

 自分の伝達忘れを無かったかのように振る舞う寿澪。



結城暁澄(ゆうき あきと)15歳 高校生です。 学校ある時は夕方だけなんですけど、夏休みも始まるんで宜しくお願いします!!」





 もうすぐ、新しい夏がやって来る。



ここまで読んでくださった皆様、本当にありがとうございます。

皆様のお陰でここまで描ききれました。


次から、第二章となりますので、しばしお待ちください。

また零係共々、宜しくお願いします。



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