12 逮捕
まだ事態がよく分かっていない…。
化け物は俺??
「あっきー凄いです! 治癒だけじゃないんですね」
「何の能力かしら? コントロールを急ぎましょう」
「危険人物やないんか?」
「サンタ。彼は大丈夫よ」
寿さんがそう言って、誰かへ連絡している。
「なんや! それは失礼して、すまんなぁ」
「…あ。いえ…」
犬と話している…。
ドラマのようだ。
「改めて、サンタや! よろしゅうなっ!」
「結城暁澄です。 …宜しくお願いします」
「サンタさんのしゃべりって、ギャップありますよね? 未だに違和感です」
和みんがサンタを撫でまわし、サンタは、気持ちよさそうにしている。
「はぁ…。 驚きで話し方なんて気になりませんが…」
犬と話していること事態が可笑しい!
慣れると、そういう感覚になるのか?
慣れって怖い。
でもしゃべりだけで考えると…。
まぁ確かに…。
白いマシュマロのような姿の犬を眺める。
「可愛い女の子と思ったら、おっさんだったって感じですね」
「それです!!」
「おーい。2班コントロール失敗だけは止めてくれよ」
「広範囲爆発とかな!」
黒服の大人達が奥から、そう言って野次を飛ばしながら笑っている。
「大きなお世話よ」
「あ。化物! 頑張れよ!!」
「…は、はい!!」
激励を飛ばして頂けるのは有り難いが…。
化物と言われて、返事をするのは嫌だ。
暫くは、化物が定着浸透しそうで溜息をつく。
「はぁ…」
俺にそんな能力なんてない。
そもそも飴なんて降らそうとは思っていない!
3人…と1匹でエレベーターに乗り込み、寿さんが鍵を使用して扉を開け、通常にはないボタンを押すと専用表示になり、地下へ進み始めた。
地下8階。
「さぁ。ここが特別室よ」
エレベーターのドアが開くと、ガラス張りの二十扉があり、ガラスの奥は2階建て分の高い天井と何にもない広いフロアであった。
中央にドアが2つ見える。
「さて、コーヒーで大丈夫かしら? ジュースもあるわよ」
ガラス張りの二十扉を入り、中央のドアに案内された。
入ると普通にキッチンダイニングとリビングがある。
メゾネットタイプの居住空間だ。
なんだか、長期戦になる予感しかしなくなる。
俺は、どれだけココにいることになるんだろう…。
「リアル精神となんちゃら部屋ですね!!」
「遊びじゃないのよ。 天祥ちゃん」
「はーい…」
一瞬で押し黙る。
寿さんが天然娘を飼いならしている。
凄い…。
和みんの〝しゅんっ〟とした姿に思わず、笑ってしまう。
「コントロールの前に能力の事から話しましょうか。 能力の芽生えには、きっかけがあると言ったこと覚えているかしら?」
「あんまり…」
「大丈夫よ。 今から詳しく話すわね」
そう言いながら、寿さんがコーヒーを飲んでいる姿に緊張感が緩む。
落ち着いて話が聞ける。
やはりこの人は、人との接し方が上手だ。
「この能力自体、内面的な要因で芽生える事が分かっているわ。 簡単に言うと、PTSD(心的外傷後ストレス障害)になるような心のトラウマや危機的状況を体験した場合とかね」
「…事故に合わなければ、能力もないままだったってことですよね?」
「そうよ」
やっぱり、あの事故さえなければ…。
こんな能力なんて要らない。
要らないから…。
返して欲しい。
失ったもの全てを…。
「能力となるかどうかは、DNAに因るみたいなの。 親が能力に芽生えない人であったとして、もし兄弟で一人だけ能力に芽生えた場合は、兄弟皆が能力に芽生える可能性があるわ。 そして、能力者の子供が能力に芽生えやすいとは限らないの。 違うDNAが混じるせいか、まだ定かではないわ」
「兄弟!?」
「そう。 行方不明の結城遥大君。 テレビの映像では、確かに助かっていたのに消えた」
「!! 遥大がいた…良かった!!」
やっぱり、生きていた。
どこかに絶対に…。
生きている!
「遥大が能力を使ってる可能性があるってことですよね?」
「ええ。 他の事件に巻き込まれている可能性もあるから、絶対とは言い切れないけれど…。 能力覚醒も捨てきれないわ」
「誰がどこで使ってるとか分からないんですか?」
「ごめんなさい」
「サンタは、俺が能力者だって分かったじゃないですか!?」
「わいの能力は、能力者の使用した能力が誰のもんかってのを特定するだけやで! わいの自慢の鼻でな!」
「能力感知犬サンタさん! サンタさん。 大事な能力をお忘れですよ~」
「他にあったかいな?」
「しゃべっとるやないかーい! モフモフの刑です~」
そう言って和みんが撫で回している。
刑にはならないくらい気持ち良さそうにサンタが身を委ねている。
じゃれている光景を見て、笑っていると優しい口調で寿さんが話を続ける。
「弟さんとご両親、ご友人。零係の方からも全力で捜索を継続していくわ」
「!? 捜索して下さるんですか?」
車両が行方不明になることは珍しく、捜索打ち切りとなっていた。
不思議なことばかりが重なる。
考えたくはないが、実際に見ていない以上、皆の死を信じられない。
無理な事は分かってる。
頭では、理解しているが…。
気持ちが追いつかない。
心では、理解できないんだ。
生きていて欲しい!
「だから、能力コントロールに集中して専念しましょう」
「…はい!」
「ところで、何をすれば良いですか?」
「まずは、結城君の能力が自分の能力であることを受け入れる必要があるの。 否定をしないで、目を背けていることから向き合いましょう」
「……」
なんだか…。
一番難しいことをしなくてはならないようだ…。
ポーン
聞き覚えのある高い音が木霊する。
「何の音ですか?」
「エレベーターが開くと居住空間にだけ知らせてくれるのよ。 インターホン代わりにね」
遠くから声が聞こえ始める
「ヤベー。ヤベー。ヤッベーーッ」
バンッ
勢いよくドアが開く。
「桜雅!?」
「主任! 魔女の件調べてたら、一斑も危険犯罪捜査の線で調べてて…」
ドンッ
「邪魔だよ! 二班!! どけどけっ!!」
大勢の黒スーツが横暴に入ってくる。
俺の家ではないけど、靴くらい脱げばいいのに…と、思ってしまうくらい不作法だ。
長髪を束ねてる綺麗な顔立ちをしたオジサンが俺の目の前で書類を広げる。
「結城暁澄!」
「無差別右足切断連続傷害危険犯罪容疑で逮捕する」




