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爪先立ちのマリア  作者: 皐月
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第二十話

そうだ、アルはいつも待っていてくれた。もう遅いかもしれないし、愛想をつかされてしまうかも知れない。消えてしまったアルを追ってようやく気付いた気持ちなど。アルにとっては笑えないエピローグのようなものかもしれない。

アルの中で物語は終わりかけている。自分はとうにそこから降りてしまった脇役なのかも知れない。間違ってしまった話は小説のようにバックスペースで消したりは出来ないが、どうか新たに綴るだけの能力が自分にあればいい。

結末を繋ぐ言葉を拾って夜道に車を走らせる。その全てを伝えられるだろうか。アルに届くだろうか。もどかしさに苛立ち、感情が暴れまわる。遅すぎるお前は遅すぎると唾を飛ばして罵る自分と、未だ間に合うと縋りつくように祈る自分とが、やがて溶けて混じりだしアルに向けて放たれようとしている。

一言でいい。

それでいい。アルと同じだ。応えてくれるかどうかなど、最早問題ではない。アルもこんな風にして気付いたのだろうか。愛されなくてもいいと。それは距離にも時間にも関わらない不動の存在だ。奪わず、望まず、ただ与えたいとだけ思う特別な人。

それがつまりアンリミテッドな愛情。

お願いだ。

葵は祈るようにそう思う。

生まれた距離の代わりにお前の想いを捨てないでくれ。



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