21/26
第二十話
そうだ、アルはいつも待っていてくれた。もう遅いかもしれないし、愛想をつかされてしまうかも知れない。消えてしまったアルを追ってようやく気付いた気持ちなど。アルにとっては笑えないエピローグのようなものかもしれない。
アルの中で物語は終わりかけている。自分はとうにそこから降りてしまった脇役なのかも知れない。間違ってしまった話は小説のようにバックスペースで消したりは出来ないが、どうか新たに綴るだけの能力が自分にあればいい。
結末を繋ぐ言葉を拾って夜道に車を走らせる。その全てを伝えられるだろうか。アルに届くだろうか。もどかしさに苛立ち、感情が暴れまわる。遅すぎるお前は遅すぎると唾を飛ばして罵る自分と、未だ間に合うと縋りつくように祈る自分とが、やがて溶けて混じりだしアルに向けて放たれようとしている。
一言でいい。
それでいい。アルと同じだ。応えてくれるかどうかなど、最早問題ではない。アルもこんな風にして気付いたのだろうか。愛されなくてもいいと。それは距離にも時間にも関わらない不動の存在だ。奪わず、望まず、ただ与えたいとだけ思う特別な人。
それがつまりアンリミテッドな愛情。
お願いだ。
葵は祈るようにそう思う。
生まれた距離の代わりにお前の想いを捨てないでくれ。




