ドレス
「よし。ミミ、余の妃として活躍しているのだ。褒美をくれてやる」
そういって、ある日フェルが私にプレゼントをくれた。
この世界の美の基準といえば「コルセットで極限までウエストを締め上げ、スラリと背の伸びた、大人びたクールな美女」であり…残念ながら私は、その真逆。
背は小さく、ふっくらしていて、子供っぽい顔つきで、声も甘くてクール系は無理。
実家で「妹より劣る」とされた部分の一部はこの見た目もある。
妹はこの世界の美の基準そのままだったから。
仕方ないじゃんか、前世と見た目と声そのままなんだよ…黒髪黒目も含めて。
対する妹は金髪碧眼。
そりゃあ見た目だって敵わない。
でも、そんな私にフェルはドレスをプレゼントしてくれた。
「ミミ、その柔らかそうなふっくらした可愛い身体にコルセットは似合わないよ。もっと君の良さを引き立てるドレスをフェルと相談したんだ」
「え…?私なんかに似合うドレスあるかな」
「ある。余が用意させた」
コルセットを使わない、胸元からふんわりと広がるエンパイアラインのドレス。
「さっそく着て来てごらん」
「気に入ったならさらに追加で作ってやるからな」
ということで試着タイム。
一旦自室に戻って侍女たちに着付けしてもらう。
「…どうかな?…わあ!全然苦しくない!コルセットなし最高!しかもめちゃくちゃ可愛い!フェルー!エルー!見てー!」
部屋から飛び出てフェルとエルにドレス姿を見せる。
「やはり似合うな。追加でいくつか作らせる」
「可愛いよ、ミミ」
そして数日後。
今日は夜会があるので、フェルの婚約者として私も強制参加である。
「ミミ、今日の夜会のドレスも新しく作らせたエンパイアドレスにしよう」
「コルセットなしで夜会って大丈夫…?」
「ミミ、こっちの方が似合うのだから胸を張って着ていけ」
「…うん、わかった!」
フェルの婚約者として出た夜会。
エンパイアドレスを着ていくと、貴族たちは騒いだ。
…いい意味で。
「なんという愛らしさだ…!これが新しい美の形か!」
「ミシェル殿下は、魔道式街灯を提案したりピーマンを広めたりと斬新かつ革新的な方だが…流行りすら新しく作られるとは!」
「さすがは皇帝陛下の婚約者!」
これが「コルセットからの解放」「流行では無く自分に似合うドレスを選ぶと言う『流行り』」をこのナーロッパの世界にもたらすことになったのは、わたしとしても意外であったが…フェルとエルはにんまりしたり顔だったので、この二人にとっては当然のことだったらしかった。




