不遇王女の逆転劇
「ねえねえ、このドレス見て!フェルとエルが私のためだけに作ってくれたんだよ!全然苦しくないのに、すっごく可愛いでしょ?」
きらびやかな夜会の席で、私は惜しげもなくドレスをひけらかす。
それは一見すると傲慢でわがままな態度だが、そのドレス姿の愛らしさや無邪気さ、日頃の行いから貴族たちは嫌味とは受け取らずに素直に褒める。
「お似合いですわ、ミシェル様!」
「まさに流行の最先端ですわね!」
「わたくしたちも次はコルセットなしのドレスに致しますわ!」
そんな貴族令嬢たちに囲まれて、褒めそやされる私にフェルとエルはご満悦だ。
「良いぞミミ!もっと見せびらかすが良い!お前の良さを見せつけてやれ!」
「ふふ、ミミ。とても似合うよ、可愛らしい。みんな見惚れているよ」
フェルとエルが自慢げに私の手を取ってキスをしたり隣に立ってガード役をしてくれたりするのを、貴族令嬢たちは憧れの眼差しで見つめる。
「なんという愛らしさ…あれこそ自然な美しさというものではないか?これからのトレンドは決まりだな」
「豊満で柔らかな美しさだ…豊穣の女神もお喜びになられるのではないか?」
「わーい!フェル、エル!二人のセンスが誉められてるよ!」
「戯け、ミミが褒められているのだ!」
「そうだよ、ミミの美しさあってこそだよ」
…私は気づかなかった。
この会場で私が褒めそやされる中で、実はこの夜会に参加していた両親と妹がこの国での私の功績…「魔道式懐中電灯、魔道式ランタン、魔道式街灯の導入の提案」「ピーマンの宣伝と普及」「ドレスの新しいトレンド」を聞かされ見せつけられてガタガタと震えていることに。
「ミシェル!ああ、私たちの可愛い、優秀な娘よ!」
お父様とお母様がそう言って寄ってくる。
妹は俯きがちについて来た、その婚約者だろう人は気まずそうだ。
私は四人が来ていると知らなかったから、きょとんとしてしまう。
手のひらを返したその態度にちょっとびっくりだが、そもそもこの功績は全部「そのわがままを叶えられる実力のある婚約者とその乳兄弟」がいたからできたこと。
今更擦り寄られても、「フェルとエルがいなければ私は無能なまま」なので祖国に戻る気はないのだが。
「誤解だったのだ!お前は神童の頃から変わらなかったのだな!さあ、我々と共に帰ろう!」
「婚約者はトレードすればいいわ!どちらの婚約書にも我が国の姫を婚約者にとしか書いてないもの!」
私は心の中で両親と妹に合掌する。
私にだだ甘いフェルとエルがそんなもの認めるはずがない。
それに…これでは妹が可哀想だ。
妹の婚約者も困惑した様子だし。
「お父様、お母様、それは無理です。私にはフェルとエルが必要ですし、フェルとエルも私を大事にしてくれていますし」
「そんな、我が国にも貴女は必要よ!」
「―…さっきから黙って聞いていれば、よくもぬけぬけと」
あーあ。
私知らなーい。
「余の妃を出来損ないと呼び、冷遇して来たクズどもが今更何の用だ」
いやフェル、冷遇まではされてない。
姉妹間格差が激しすぎただけ。
「今更その価値に気付いてももう遅い。それとも我が帝国と戦争したいか?」
「せ、戦争っ…!?」
「大人しくミミをこちらに預けていればそんな乱暴なことはしないよ。でもミミに固執するなら…わかるよね?」
両親は拳を握りしめて震える。
帝国との戦争は、祖国にとって必ず痛手になる。
回避するには私を諦めるしかない。
「…し、失礼を致しました。もう、二度と、ミシェルに帰ってこいとは言いません……」
「ミシェルと陛下の結婚は、必ず祝福致します…」
「それで良い。さっさと帰るがいい」
半ば追い出される形で夜会を出る、両親と妹とその婚約者。
こうして華麗に実家ざまぁとなったわけだが。
「…はぁ、怖かった。二人とも守ってくれてありがとう!」
まあ、怖かったのはその守ってくれた二人の覇気なのだが。
「ふん、当然だ。お前は何も心配せず、ただ余のそばで輝いていれば良い」
「そうだよ、ミミ。あんな人たちのところより帝国の方が君を輝かせられるんだから」
「うん!私もっと二人にわがまま言って甘えまくって、国にも貢献できるよう頑張るね!」
私はそう言って、二人に微笑む。
二人もそれに満足そうに頷いてくれる。
前世の苦労と、今世の姉妹間格差。
それはこの幸せを噛み締めるためのスパイスだったのだ。
不遇王女の逆転劇、とでも呼ぼうか。
私のこの人生は、これからもフェルとエルに甘やかされて続いていく。
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