戻ってきた神童
「あ、そうだ。フェル、エル」
「どうした、ミミ。またわがままか?」
「うんそう。この間のわがままの続き」
「…うん?あの国家プロジェクトは順調に進んでいるよ。なにか追加して欲しい機能でもあるの?」
「うん、エル天才!追加して欲しい機能というか、魔力があって」
クエスチョンマークを頭上に浮かべる二人。
「あのね、魔道式懐中電灯や魔道式ランタンには、無力な平民でも恩恵を得られるように…最初から莫大な魔力を充填しておいて欲しいんだ。それで、安価で薄利多売して欲しいの。そしたら平民の生活は豊かになるでしょう?あと、魔道式街灯は夜だけだけどずっと明るくないと意味ないからそっちにも魔力を充填してから設置してね」
「………」
「………」
私のわがままに二人が固まる。
あれ、わがまますぎたかな?
「最初から、魔力を…充填…?」
「安価で薄利多売………」
フェルとエルが呆然とする。
何か変なこと言ったかな?
「平民にも魔道具の恩恵を、だと?ミミ、自分の言っていることがわかっているのか?魔道具は貴族の特権だぞ?」
ああ、そういえばこの世界では魔道具は使用者の魔力を直接流し込んで使うもので…だから平民たちには縁のないものだった。
平民たちには魔力がないから。
でも、そんなの可哀想だ。
どうせならみんなで使えるようにしたい。
「ミミ…君の言ってることはつまり、魔力というエネルギーの個人供給に頼っていた魔導社会の根底を覆すことだよ?わかる?」
「でも、平民たちが使えないんじゃ何の意味もないじゃん。みんなで社会を良くしたいのに。フェルとエルなら、「自分の中の魔力を一箇所に集めて、限界までぎちぎちに詰め込む」くらい簡単でしょ?あとはその魔力を魔道具に貯める構造を作るだけで、それだってフェルとエルの頭脳なら絶対できるもん。ねえ、お願い!」
私はお願いと媚びるようにフェルに擦り寄る。
そんな可愛い従妹の、恐ろしいほどの「魔導改革」に一瞬冷や汗が出るほど慄いたフェルとエルだったが…。
「…は、はは。すごいね、ミミ。ようやく神童だった君が帰ってきた。「魔力を最初から充填する」だとか、「魔道具の無魔力者への普及」なんて…考えたこともなかったよ」
「ふはははは!すでに余の妃として自覚があるようで大いに結構!余の妃として実に相応しい!元々そのつもりだったが、この国家プロジェクトをミミの名前で大々的に宣伝しよう!余の妃が、平民たちへ慈悲を向けたとな!」
フェルは私を抱きしめて言う。
「必ずこの国家プロジェクトを実現しよう。ミミの名を世界に轟かせ、ミミを蔑ろにした実家にも目に物見せてくれる!」
「わーい、フェルありがとう!エルもありがとうね!」
「ふふ、どういたしまして」
「宮廷魔術師を呼べ!善は急げだ、魔力を充填して貯めておく装置の設計を急がせろ」
「わかったよ、フェル」
こうして国家プロジェクトの規模がさらに大きくなるのだった。




