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第七話 パーティーの形(後編)


 それから数日。


 Uクラスの連携訓練は続いた。


 最初は酷かった。


 カレンの砲撃余波で、

 ルークの結界が削られ。


 シエルの拘束が間に合わず。


 フィアの指示が遅れ。


 ルークが全部を抱え込む。


 何度も崩れた。


 それでも。


 少しずつ、

 変わり始める。


「左……!」


 フィアの声。


 以前より速い。


 ルークが即座に反応する。


 灰銀色魔力が地面を走る。


 影のように伸びた魔力が、

 左側へ到達した瞬間。


 障壁が、

 ゴーレム進路上へ突き上がる。


 鈍い衝突音。


 進路が止まる。


「シエルさん!」


「……ん」


 簡略術式。


 高速構築。


 以前より短い。


 以前より速い。


「――《氷槍》」


 青白い氷が走る。


 左側ゴーレム脚部を凍結。


 動きが鈍る。


「カレンさん、今です!」


「分かってる!」


 深呼吸。


 今度は。


 ちゃんとルーク位置を見ている。


 射線確認。


 深紅色魔法陣。


「――《紅蓮砲》!」


 轟炎。


 直撃。


 凍結したゴーレムが吹き飛ぶ。


 熱風が抜ける。


 その瞬間。


 全員、

 一瞬だけ止まった。


「…………」


「……今の」


 ルークが小さく呟く。


 ちゃんと繋がった。


 まだぎこちない。


 まだ未完成。


 でも。


 役割が、

 少しだけ噛み合った。


 フィアが目を丸くしている。


「で、できた……?」


「……少し」


 シエルが小さく頷く。


 カレンも小さく息を吐いた。


「……悪くない」


 ミレイアが、

 フィールド外から少し笑う。


「そう。

 それでいいのよ」


 訓練終了後。


 演習場には、

 夕暮れの風が流れていた。


 停止したゴーレム。


 砕けた土塊。


 焦げ跡。


 戦闘後特有の静けさが残っている。


「はぁ……」


 ルークがその場へ座り込む。


「思ったより疲れるな、

 パーティー戦って……」


「アンタ、

 無駄に動きすぎなのよ」


 カレンが水筒を飲みながら言う。


「前も横も後ろも、

 全部見ようとしてたでしょ」


「……否定できない」


 ルークが苦笑する。


 でも。


 少しだけ分かった。


 自分一人で全部やるんじゃない。


 役割を繋ぐ。


 後ろを守る。


 そのための立ち位置。


 少し離れた場所では、

 シエルが静かに何かを書き込んでいた。


「何してるんだ?」


「……整理」


「訓練の?」


「……効率、少し上がったから」


 短い。


 でも。


 前より少しだけ、

 会話が自然だった。


 フィアはそんな二人を見ながら、

 小さく息を吸う。


「あ、あの……」


 三人がそちらを見る。


 フィアは少し肩を震わせながら、

 それでも言葉を続けた。


「……ありがとう、ございます」


「え?」


 ルークが目を瞬く。


「さっき……

 ちゃんと合わせてもらえて……」


 自分の指示。


 遅かった。


 拙かった。


 でも。


 ルークは反応してくれた。


 シエルも、

 カレンも動いてくれた。


 それが、

 フィアには少し信じられなかった。


「……別に、

 普通でしょ」


 カレンがそっぽを向いたまま言う。


 でも。


 声音は前より柔らかい。


「……フィア、

 ちゃんと見えてる」


 シエルも小さく言った。


 フィアが少し目を丸くする。


 褒められ慣れていない。


 だから反応に困っていた。


 ルークはそんな空気を見ながら、

 少しだけ笑う。


「なんか、

 前よりパーティーっぽくなってきたな」


 一瞬。


 静かになる。


 カレンが少しだけ顔を逸らした。


「……まだ全然でしょ」


「……未完成」


 シエルも小さく呟く。


 でも。


 否定はしなかった。


 その時。


 ミレイアが演習場へ戻ってきた。


 四人を見る。


 そして。


 少しだけ笑った。


「……よし」


 一拍。


「初クエスト、

 行ってきなさい」


 空気が止まる。


「……え?」


 ルークが思わず聞き返した。


 フィアも固まっている。


 カレンは驚きながらも、

 少しだけ嬉しそうだった。


 シエルは静かに目を細める。


 初めて、

 学園の外へ出る。


 初めての実戦。


 初めてのクエスト。


 夕陽が、

 四人を赤く照らしていた。

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