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第四話 U-Class


 入学までの数日間。


 セフィリア学園都市、外縁層。


 ギルド近くの宿を拠点に、

 ルークは過ごしていた。


 試験に受かった実感は、

 まだ薄い。


 だから落ち着かなかった。


 朝は剣を振り。


 昼は魔法の制御訓練。


 空いた時間も、

 灰銀色の障壁や魔力剣を何度も作り直していた。


 未完成。


 それだけは嫌というほど分かる。


 特に魔力剣。


 一振りで崩壊する現状では、

 実戦で使い物になるとは言い難い。


「……もっと安定させないとな」


 小さく呟く。


 そして入学の日。


 宿の鏡の前で、

 ルークは少しだけ自分の姿を見ていた。


 黒を基調とした制服。


 白い外套風のパーツ。


 そこへ入った金の装飾。


 セフィリア魔法学園、

 魔法士学科の制服。


 見慣れない服装だった。


 鏡の中には、

 昔よりずっと背の伸びた自分がいる。


 黒に近い灰色の短髪。


 訓練で引き締まった身体。


 細身ではあるが、

 剣を振り続けた腕には確かな筋肉がついていた。


 七年前、

 何も出来ず泣いていた子供とは違う。


 ――ここまで来た。


 その実感だけは、

 少しだけあった。


 ルークは軽く髪を整え、

 小さく息を吐く。


「……本当に入学するんだな」


 期待はある。


 でも同じくらい不安もあった。


 属性適性ゼロ。


 既存体系外。


 自分だけ、

 明らかに普通じゃない。


 それでも。


 ここまで来た。


 だから、

 もう止まるつもりはなかった。


 朝食を済ませたルークは、

 指定された時間に合わせて学園へ向かっていた。


 セフィリア魔法学園、魔法士学科棟。


 ルークは入口付近で、

 ミレイアと合流した。


「ちゃんと来たわね」


「来ますよ普通に」


 ミレイアは小さく笑う。


「そうね」


 試験会場の時より、

 少しだけ自然に話せている気がした。


「行くわよ」


 ミレイアに続いて、

 学科棟へ入る。


 窓の外では、

 上級生らしい生徒達が朝の自主練をしていた。


 軽く火球を撃ち合う者。


 風魔法で加速しながら走り込む者。


 静かに魔法陣を展開し、

 魔力制御を確認している者もいる。


「……やっぱ凄いな」


 思わず呟く。


 魔法士学科棟周辺だけでも、

 学園の空気はリーベルとは全く違っていた。


 ミレイアが少しだけ振り返る。


「緊張してる?」


「多少は」


「すぐ慣れるわ」


 その言葉は、

 どこか教師らしかった。


 廊下を歩きながら、

 ルークは周囲を見回す。


 魔法士学科の生徒達だろうか。


 腰へ魔導具を下げた者。


 武器を背負っている者。


 普通学科とは違う空気を感じる。


 そのまま、

 ミレイアは教室前で立ち止まった。


「ここよ」


 ルークは小さく息を吐く。


 そして、

 教室へ足を踏み入れた。


 教室の中には、

 既に多くの新入生達が集まっていた。


 ざわざわとした話し声。


 互いの様子を探るような空気。


 その中には、

 見覚えのある顔もあった。


 深紅の髪を揺らす少女。


 カレン。


 銀髪の少女。


 シエル。


 そして、

 柔らかな雰囲気の茶髪少女。


 フィア。


 三人とも、

 こちらへ気づいたらしい。


 カレンとは一瞬だけ視線が合い、

 すぐ逸らされた。


 シエルは無表情のまま、

 じっとルークを見ている。


 フィアだけが、

 少し困ったように微笑んだ。


 ルークは空いている席へ座った。


 その時。


 前方へ立ったミレイアが、

 静かに手を叩く。


「それじゃあ始めるわね」


 自然と教室が静かになった。


「まず、魔法士学科について簡単に説明するわ」


 新入生達の空気が少し引き締まる。


「魔法士学科は少数精鋭学科よ」

「今年の一年生は五十四名」


 やはり少ない。


 そんな空気が広がる。


「午前は他学科と共通授業」

「午後からは実戦訓練、演習、クエストが中心になるわ」


 普通学科とは、

 かなり違う。


「それと、魔法士は基本的にパーティー運用よ」


 その言葉で、

 周囲の空気が少し変わる。


「生徒達も基本的にはパーティー単位で活動するわ」

「クエストも演習も、基本は複数人前提ね」


 ミレイアは教室を軽く見回した。


「だから、相性は大事」

「卒業まで同じ仲間で動き続ける魔法士学科生も少なくないわ」


 その言葉に、

 周囲の生徒達も自然と近くの相手を意識し始める。


 知り合い同士で集まる者。


 互いの魔法について話し合う生徒達。


「一緒に組まないか?」


 そんな声も聞こえてくる。


 ルークは少しだけ、

 居心地の悪さを感じていた。


 知り合いは少ない。


 しかも。


 属性適性ゼロ。


 既存体系外。


 自分だけ、

 明らかに異物だ。


 ミレイアはその後も、

 実戦訓練や演習制度について説明を続けていく。


 模擬戦。


 学科対抗演習。


 実地クエスト。


 魔法士学科は、

 実戦を前提に組まれた学科だった。


 時折、

 新入生達から質問も飛ぶ。


 気づけば、

 かなりの時間が経っていた。


「さて、全体説明はここまで」


 ミレイアの言葉と共に、

 教室の空気が少し緩む。


 椅子を引く音。


 立ち上がる生徒達。


 知り合い同士で話しながら、

 新入生達は次々と教室を出ていく。


 その中で。


「ルーク、カレン、シエル、フィア」


 一瞬。


 空気が止まった。


「あなた達は残りなさい」


 ざわ、と教室が揺れる。


「なんだ?」


「特別呼び出し?」


「……あの四人か」


 小さな声が飛び交う。


 ミレイアは気にした様子もない。


「他の生徒は解散していいわ」


 その言葉で、

 生徒達は再び動き始めた。


 椅子を引く音。


 談笑。


 足音。


 新入生達は、

 ちらちらと四人を見ながら教室を出ていく。


 やがて。


 教室に残ったのは、

 ルーク達四人と教師達だけだった。


 前方では、

 他の教師達も小さく視線を交わしていた。


「本当に編成するんですね」


「既存評価外をまとめるのか……」


 困惑したような声。


 でも。


 ミレイアだけは変わらない。


 静かに四人を見渡し、

 そのまま口を開く。


「あなた達は今日からUクラスよ」


 ルークは少し眉を寄せた。


「U……?」


 聞き慣れない呼び方だった。


「表向きは、

 既存評価困難生徒管理枠」


 その説明に、

 周囲の空気がさらに微妙になる。


 問題児枠。


 異端管理。


 そんな印象が透けて見えた。


 だが。


 ミレイアは気にした様子もない。


「既存評価で測れないだけよ」


 真っ直ぐな声だった。


「才能が無いとは言ってないわ」


 その言葉に、

 ルークは少しだけ目を見開く。


 ミレイアは続けた。


「カレンは高火力だけど制御が不安定」


 カレンが不機嫌そうに視線を逸らす。


「シエルは理論完成済みだけど出力不足」


 シエルは特に反応しない。


「フィアは広域感知特化。

 ただし単独火力不足」


 フィアが少し肩を揺らした。


「そしてルーク」


 一瞬、

 視線が集まる。


「既存体系外」


 教室が静かになる。


 ルークは少しだけ居心地悪そうに視線を逸らした。


 異端。


 多分、

 周囲から見ればそうなのだろう。


 でも。


 ミレイアだけは、

 最初から否定しなかった。


 微妙な沈黙が落ちる。


 ルークは少し居心地悪そうに視線を彷徨わせた。


 その時。


 たまたまカレンと目が合う。


「……なに見てんのよ」


 突然の言葉に、

 ルークは少し戸惑う。


「いや、別に見てたわけじゃ……」


「……それならいいけど」


 言いながら、

 カレンは少しだけ視線を逸らした。


 多分、

 本人も上手く説明できていない。


 その横で、

 シエルがじっとルークを見ていた。


「……変な魔力」


「気になる」


 悪気ゼロだった。


 フィアが慌てて間へ入る。


「え、えっと……」

「よろしくね?」


 困ったような笑顔。


 多分、

 空気を何とかしようとしている。


 ルークは思わず苦笑した。


「……なんか大変そうだな」


 それが、

 ルークのUクラス第一印象だった。

無事タイトル回収できました!


一旦ここまで


明日からは


出来るだけ毎日更新


頑張っていきたいと思います!

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