第三話 「華のティータイム」
※本作はオリジナル作品です。
※BLゲーム世界が舞台ですが、女性主人公視点で進みます。
※更新は不定期です。
並ばないと買えないことで有名なRaB itsのチョコを、
運良く手に入れていた私は、それをお茶と一緒に丁寧に準備した。
香りの良い茶葉を選び、温度にも気を配る。
ほんの少しでも、心地よい時間になるように。
(完璧な布陣ね)
カップにミルクティーを注ぎながら、私はさりげなく声をかける。
「ミルクティーでいいかしら?」
「あ……はい。
あ、ありがとうございます……」
遠慮がちに返ってくるその声に、思わず胸がきゅっと締めつけられた。
そして、何を隠そう。
うゆくんは、大の甘いもの好きである。
(つかみはバッチリね)
内心ほくそ笑みつつ、そっと様子を窺う。
よし。
少なくとも、警戒はされていないみたい。
うゆくんは、恐る恐るチョコを一つ手に取った。
少しだけ迷うように視線を落とし、
それから、小さく口を開けて——
「……」
ぱくり。
「……っ」
その瞬間、分かりやすく表情が変わる。
ぱあっと、花が咲いたみたいに。
驚きと喜びが、隠しきれないほどに広がっていく。
(かわいい……)
もぐもぐと頬を膨らませるその姿は、
庇護欲を盛大に刺激する、可愛さの暴力だった。
しかも、味わうように、ゆっくりと咀嚼しながら。
ほんの少し恥ずかしそうに、視線を揺らし、
小さく表情を変えていく。
その様は、まさに百面相。
(無理、尊い……)
視線を逸らしたくなるほどの破壊力に、
私は内心で何度も深呼吸を繰り返した。
そのとき——
うゆくんが、ぽつりと口を開いた。
「あの……鈴乃お姉様は……
どうして、突然現れた僕に……こんなによくしてくださるのですか?」
その声音には、わずかな戸惑いと、
ほんの少しの不安が滲んでいた。
(……ああ)
やっぱり。
いくら優しくされても、理由が分からなければ怖い。
——それは、当たり前のことだ。
そんなの、前世からあなたのことが大好きで大好きで仕方ないからに決まってるじゃない……!
なんて言葉が、喉元まで込み上げる。
けれど、それは言えない。
私は一度、小さく息を吐いた。
「それは……」
言葉を探す。
けれど、うまく出てこない。
だって……私があなたを好きになったことに理由なんて、ないんだもの。
ただ好きだから。
ただ幸せになってほしいから。
それだけで動いているのだから。
「理由なんてないわ」
私は、静かにそう言った。
「ただ、あなたに幸せになってもらいたい。
それだけよ」
言葉にすると、あまりにも簡単で。
——それが、すべてだった。
「それに」
私は、少しだけ視線を和らげる。
「急に知らない場所に来て、不安なんじゃないかと思っただけ」
少なくとも、これは嘘じゃない。
むしろ、紛れもない本音だ。
うゆくんは、きょとんとした表情を浮かべた。
まるで、理解が追いついていないかのように。
けれど、少しずつ。
その言葉が心に染み込んでいくように。
ゆっくりと、表情がほどけていく。
「……そう、なんですね」
ぽつりと、小さく呟く。
そして、ほんの少しだけ、肩の力を抜いたように。
「……ありがとうございます」
頬を赤らめながら、はにかむように微笑んだ。
(無理……っ)
私は、静かに尊死したのだった——
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次回は学園編です〜☺︎




