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リュボーヴィ クローリク  作者: 西瀬 零真


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第二話 「初めて名前を呼ばれた記念日」

※本作はオリジナル作品です。

※BLゲーム世界が舞台ですが、女性主人公視点で進みます。

※更新は不定期です。

気を取り直して、うゆくんに屋敷内を案内した。


なるべく自然に、けれど距離は縮めたい。

そんな相反する感情に、内心うずうずしながら歩いていると。



「あ、あの……

案内してくれて……あ、ありがとうございます。

鈴乃(すずの)様……」



その一言で、世界が止まった。


——今、呼んだ?

私の名前を?


初めて、うゆくんに名前を呼ばれた瞬間だった。


私はこの日を、

「初めて名前を呼ばれた記念日」として、

心の中に、そっと保存した。


(無理、尊い)


ぐらり、と足元が揺らぐ。

今にもよろめきそうになる身体を必死に堪えながら、

私はどうにか平静を装う。



「……ええ」



声が震えていないか、不安になる。

(落ち着いて。ここで崩れたらすべて終わりよ)

私は一度、小さく息を整えた。

そして——



「私のことは、“お姉様”と呼んでくれて構わないわよ?」



できるだけ自然に。

あくまで“ついで”のように。

けれど内心は、全力で祈っていた。

(お願い……!)



「えと……()()()()()……?」



その言葉が、ゆっくりと紡がれる。

一音、一音が、胸の奥に深く突き刺さる。


(はい、いただきました)


静かに、しかし確実に。

私は心の中でガッツポーズを決めた。

表情には一切出さない。

けれど内側では“完全勝利”である。


(生きててよかった……)

——終。


……なわけない。

まだ魅せたいシーンはたくさんあるので、こんな序盤で終わらせるわけにはいかない。

むしろ、ここからが本番だ。

私はさりげなく、次の一手を打つ。



「ちょうど、RaB(ラビ) its(ッツ)のお菓子があるの。

よかったら一緒にどうかしら?」



ほんの少しだけ、柔らかく微笑む。

決して押しつけがましくならないように。

けれど断りにくい、絶妙な距離感で。



「……僕が、いただいてもいいんですか?」



少しだけ遠慮がちに、うゆくんがこちらを見る。

その表情に、胸がきゅっと締めつけられる。

(可愛い……守りたい……)



「もちろんよ。

遠慮する必要なんてないわ」



私はそっと歩き出した。



「こちらよ。着いてきてちょうだい」



こうして——

うゆくんを自然に自室へ招き入れることに成功した。

名付けて、“餌付け作戦”。

(完璧ね)


このまま、姉として少しずつ距離を縮めていければ……

それだけで、十分すぎるほどの成果だ。

私は内心の高揚を押し殺しながら、

何食わぬ顔で、ティータイムの準備を始めた。


ここまでご覧いただき、ありがとうございます。

よければ評価・ブクマ・♡で応援していただけると励みになります。

感想など頂けましたら泣いて喜びます…!


次回は推しとティータイムです☺︎

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