表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リュボーヴィ クローリク  作者: 西瀬 零真


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/39

第三十二話 「はじめてのふたり」

※本作はオリジナル作品です。

※BLゲーム世界が舞台ですが、女性主人公視点で進みます。

※次回4/11更新予定です。

私は、初めてのお友達ができて、完全に溶けきっていた。

でろーんと液状になった私を見て、

奈々(なな)は「気持ちが悪いですよ」と一蹴してくるが、

私には、この嬉しさを止める術がなかった。


今日は念願のお友達、(みやび)ちゃんとお出かけの予定である。


映画を観て、お茶をして、本屋に寄って——

実はお互い好きな作品が同じで、オタク仲間にまでなれたら——なんて……

ついつい、そんなことまで想像してしまう。


雅ちゃんの気が変わる前に、約束を取り付けられたのはラッキーだった。

元々の目的は彼女たちのルートの修正だったが、

改めて正式にお友達になれて、こうしてお出かけできるのは至福である。


待ち合わせは、駅前の噴水のある公園だ。


この時の私は——

もう物語が動き始めていることなど、知る由もなかった。


噴水の前で待っていると、高級車が現れた。

その中から、雅ちゃんが姿を現す。

さすがは財閥の一人娘だ。

恐らく、同じ家格の私でなければ、遊びに行くことすら許されなかった可能性すらある。


執事と思しき男性が、わざわざ挨拶をしてきた。

私も丁寧に挨拶を返すと、執事は時間になったら迎えに来ると言い、深く頭を下げ、帰っていった。


雅ちゃんは、いかにもお嬢様といった格好をしていて可愛い。

フリルのついたワンピースを着こなせるのは、可愛い彼女だからこそ、だろう。


私はさっそく彼女の手を引き、喫茶店へと向かった。



「ちょ、ちょっと……急に引っ張らないでくださいまし」



そう言いながらも、雅ちゃんは手を振り払うことはなかった。

ほんの少しだけぎこちないその距離が、どこかくすぐったくて、少し嬉しくなる。


自分も人のことは言えないが、彼女もなかなかの箱入りらしい。

店内に入り、メニューを開いた瞬間——

彼女の目が、分かりやすく輝いた。



「な、なんですのこれ……」


「それは、メロンソーダよ」


「この……緑色の液体と、上に乗っている白いものは……?」


「アイスよ。もしかして、こういうの初めて?」


「え、ええ……見たことはありますけれど……実際に頼むのは……」



そう言いながらも、ちらちらと視線を向けてくる。



「何事も経験よ!」


「……で、では」



おずおずと注文したメロンソーダが運ばれてくると、

雅ちゃんはしばらくそれをじっと眺めていた。



「……綺麗ですわね」



そっとストローを差し、恐る恐る口をつける。



「……!」



その瞬間、彼女は目を見開いた。



「どう?」


「……これは、なかなかいけますわ!」



どこか得意げにそう言う姿に、思わず笑みがこぼれる。


パフェも同様だった。

一口ごとに表情がころころ変わるのが、あまりにも分かりやすい。



「甘いものが好きなのね、嬉しいわ。

他にもおすすめはたくさんあるから今度遊ぶときに、色々教えてあげるわ」


「今度……

別に甘いものは嫌いではないし、

楽しみにしておいてあげますわ」



そう言いながらも、雅ちゃんのスプーンは止まらない。

その様子があまりにも可愛らしくて、

私はただ、静かにそれを眺めていた。


——友達と過ごす、なんでもない時間。

それがこんなにも楽しいものだなんて、思いもしなかった。

……前世でも、友達いなかったしなあ。


喫茶店を出たあと、私たちはそのまま本屋へ向かった。

しばらく店内を歩いていると、

雅ちゃんが、とあるコーナーでぴたりと足を止めた。



「……?」



視線の先を追う。

そこにあったのは——ホラーコーナーだった。



「まさか……」


「この類、大好きですの」



即答だった。

棚から一冊手に取り、ぱらぱらとページをめくる。



「こういう未知の存在とか、説明のつかない現象とか……

とても興味深いですわ」


「そうなんだ……」


「宇宙も好きですのよ。

人間の理解が及ばない領域というのは、とても魅力的で……」



楽しそうに語るその横顔を見ながら、私は確信した。

——方向性がまるで違う。

オタク仲間への道は、思っていたよりも厳しそうだった。


本屋を出ると、空はすっかり夕焼けに染まり始めていた。

昼間の喧騒も少しずつ落ち着き、どこか穏やかな時間が流れている。



「もうこんな時間か……」


「そうですわね。

今日は本当にあっという間でしたわね」



そんなことを話しながら、公園の中をゆっくり歩く。

すると——

甘い香りが、ふわりと漂ってきた。



「……あ」



視線の先にあったのは、小さなクレープ屋さんだった。

カラフルなメニューと、焼きたての生地の匂い。

その前で——

雅ちゃんが、ぴたりと足を止めていた。

じっと、クレープ屋を見つめている。



「……」


「……」



……分かりやすすぎる。

私は、くすりと笑いながら声をかけた。



「クレープ、食べたいなぁ……」


「べ、別にあなたが食べたいのなら、

私も一緒に食べてあげますわ」


(かわええ……)

私はすぐに注文を済ませ、クレープを受け取った。



「はい、どうぞ」


「……ありがとうございます」



そう言いながらも、雅ちゃんの視線は完全にクレープに釘付けだった。

一口、ぱくりと食べる。



「……っ」



その瞬間、分かりやすく目が輝く。



「どう?」


「……お、美味しいですわ」



なんとか取り繕っているが、隠しきれていない。



「ちょっと一口ちょうだい」


「え?」


「交換こ、よ」


「な、なにを仰って——」



私はそのまま、はむっと彼女のクレープを一口もらった。



「……ほんとだ、美味しい」


「で、でしょう?」



どこか誇らしげに胸を張る姿に、思わず笑ってしまう。

そのまま、二人で並んでクレープを食べる。


——こんな時間が、ずっと続けばいいのに。

そう思った、その時だった。



「なんや、えらい美味そうなん食べてはるなぁ」



——ボトッ。


雅ちゃんは、その姿を見た瞬間、

思わず手にしていたクレープを落としてしまった。



「急に声かけて堪忍なぁ。

つい見かけてしもてなぁ。

……あれ、クレープ落としてはったやろ? もったいなぁ……」


「あなたは……」



雅ちゃんはそう言い、明らかに怯えた顔をしていた。

私が割って入ろうとする。

けれど——彼の視線は、雅ちゃんから一切外れなかった。



「なんや、これから()()()になるお人やのに、えらい冷たいなぁ。

そんな邪険にせんといてぇな」



婚約者?


こいつまさか………………

3人目の攻略対象……!?


ここまでご覧いただき、ありがとうございます。

よければ評価・ブクマ・♡で応援していただけると励みになります。

感想など頂けましたら泣いて喜びます…!


やっとの思いで新キャラ登場です☺︎

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ