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第6話 盛大な勘違いをしてくれてありがとう

 館の門を挟んで魔物たちと対峙(たいじ)する。僕の姿を見せた途端、魔物たちは警戒して身構える。僕は両手を挙げて敵意がないことを表す。


「待ってくれ。僕はあなた方と話がしたいだけだ。戦うつもりはない」


 魔物たちは互いの顔を見合わせる。


「お主は何者だ」


 ドラゴンに殺気を飛ばされながら尋ねられる。


「僕の名前はマーリングだ。シュタイアーという吸血鬼を僕が倒し、彼の血液を体内に取り込むことで吸血鬼になったんだ」


 僕はこれまでのことを簡単に話す。


「人間の身でありながら、シュタイアーを倒すとは大したものであるな! その話が本当であればの話であるが」


 ジャイアントが感心したような声音で呟く。


「バーサーク化の魔法が使えるのであれば、十分ありえる話だ」


 ドラゴンが納得したような表情を浮かべる。


「あのいけ好かないシュタイアーを殺ってくれたのはありがたんだが、また吸血鬼がこの森に居座ることになっちまったか~」


 ミノタウロスが残念そうな素振りをみせる。


「そう言えば、お主とシュタイアーとの間には色々あったのだったな」


「エルドこそ、死んだ子供をアンデッドドラゴンにされちまったことがあるだろ。ファーベだって、前に集落近くの魔物の血をシュタイアーが吸い尽くしたせいで、冬を乗り越えるのが大変だったはずだ」


 ドラゴンの名前がエルドで、ジャイアントの名前がファーベというのか。


「うむ。あの時の恨みはもちろん忘れていない」


「あの時はなんとか貯蔵しておいた食料を分配して事なきを得たのである。しかし、多くの者が瘦せこけてしまって大変だった」


「そうだよなぁ。やっぱ、吸血鬼が近くに住んでいても邪魔なだけだし、殺ってしまわない?」


 おいおい。なんか雲行きが怪しくなってきたぞ。


「ちょっと待ってくれ。僕は先ほども言った通り、あなた方と矛を交えるつもりはない。この館で静かに暮らすから見逃してくれ」


「つってもなあ。シュタイアーがあの館を作ってこの森に住みはじめた時も似たようなことを言ってたからなぁ。結局あいつは俺らとの約束を破ってろくな事をしなかった。吸血鬼なんて噓つきだ。信用できない」


 ミノタウロスがバトルアックスを掲げる。


「スティークの言うとおりである。それに、今のお前は眷属がおらず、吸血鬼の能力を扱え切れていないはずである。殺すなら今しかないのであるよ」


 ミノタウロスの名前はスティークか。


「まったくだ。おまけに、人間から吸血鬼になるのにかなりの魔力を消費する。バーサーク化で魔力を使い尽くすことなく、吸血鬼になることができたようだが、今のお前はかなり魔力を消耗させているのではないかな」


 ドラゴンのエルドが翼を大きく広げて威嚇してくる。


「ということだよ。さぁマーリングとやら、そんなところにいないで館の敷地からでてきたらどうだ? 大人しく殺されるっていうなら苦しみは与えないって約束してやる」


 スティークが勝ち誇った笑みを浮かべる。


 うーん。これはピンチだな。しかし、彼らは盛大な勘違いをしている。僕には生まれつき大量の魔力を持っている。だから、バーサーク化の魔法や吸血鬼化で魔力を使い果たしたりはしていない。


 まあ、吸血鬼になるまでは魔力の操作が苦手だったせいで、バーサーク化以外の魔法をまともに扱うことができなかったわけだが。


 この辺のことはあえて彼らに言わなかったからな。おかげでこちらにも勝機はある。    


「僕は戦いたくないんだけどな」


 僕は門をくぐり、館の敷地からでる。これで彼らの攻撃にさらされることになる。まぁ、殺されそうになったら再び館の敷地へと逃げ込むつもりだ。


「お前の意思なんてどうでも良いんだよ!」


 スティークがバトルアックスを上段から振り下ろす。


 僕は腰に吊るされたメイスを右手で持つと、バトルアックスを受け止めた。


「魔法を使わず、わざわざメイスで受け止めたな。やっぱり魔力が少ないのか。片手でこの俺の攻撃を受け止めるとは、さすがは吸血鬼。しかし、魔力がない上に3人でかかれば確実に殺れそうだ」


 スティークが下卑た笑みを浮かべる。


「さぁ、それはどうかな」


「1人を多人数でいたぶるのは気が引ける。しかし、吸血鬼は厄介なのである。くらえ!」


 ファーべが大剣で僕を横なぎに払おうとしてくる。僕は空いている左手の爪を伸ばして防ぐ。


「尽きかけた魔力を防御に回すとは、愚かなものだな。しかし、これで両手はふさがった。お前は終わりだ」


 エルドは鋭くとがった尻尾を突きだし、僕を刺し殺そうとする。


 僕はメイスを思いっきり上へと振り上げる。その衝撃により、バトルアックスを持っていたスティークは後ろにのけぞる。次の瞬間、僕は翼を使って飛び上がる。


 飛び上がる前に僕がいた場所にエルドの尻尾が突き出された。


 上空から魔物たちのことを見おろす。


「三人とも随分と密集しているな」


 僕一人を殺すために、三人で襲いかかってきたのだ。おまけに、彼らは身体が人間よりも大きい。当たり前と言えば当たり前だ。


「ブラッディ・スピア・ストーム!!!」


 僕は吸血鬼が使える固有魔法の中でも特に強力な魔法の詠唱を行う。すると、僕の周りに数百もの赤い槍が現れる。


 赤い槍たちは驚愕の表情を浮かべる3体の魔物たちに襲いかかった。

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