⁑リューイの居ない世界(6)
翌日…いや、だいたい20時間くらい後…
医療センターの僕が眠っている部屋に…昨夜と同じメンバーが集まった。
「ああ…リューイさん…」
「…っ」
ヴィンセントとリカルドが、僕の姿を見るのは…あのLIVEの夜以来だった。
全く動く気配の無い僕を見て…改めて目の当たりにした現実に、2人は言葉を失っていた。
「それでも今は、だいぶ安定してる」
エルンはそう言って、僕の腕に装着された機械の数値を、リカルドに見せた。
「…そうか」
「何ならコアのレベルは、リカルドよりよっぽど高いはずだよな」
エルンはそう笑って、リカルドの肩を叩いた。
「ははっ…そうだよなー」
「…そうですよね、もちろん僕なんかよりも…ずっとずっと、強いんですもんね…」
ヴィンセントは、じわじわと溢れてきた涙を両手で拭いながら言った。
そして彼らは、ベッドのすぐ傍にテーブルを設置して…寝ている僕の姿が見えるように、席についた。
既に、ヴィンセントが用意した料理が並んでいた。
いつものオードブルセット(もちろん魚のフライ入り)と、刺身の盛り合わせ…そして、ご飯の上にホワイトソースとチーズをたっぷり乗せて焼いた…ワインに合う、ドリアのようなもの。
僕を含めた人数分のエール…それから日本酒と、エルン秘蔵のワインも2本ずつ用意されていた。
「足りなかったら、ストアに走ります」
「大丈夫だろ…どうせまだ、ワイン残ってんだろ?」
「…まだ足りないのか!!」
「いや、足りなかったら…の話だ」
そんな風に…キーファーとエルンの、いつもの小競り合いもしながらの…賑やかに、彼らは乾杯した。
「エールが美味いぞ、リューイ!」
キーファーは早速、僕に向かって言った。
「リューイさんの好きな、魚の揚げ物も…日本酒と生のお魚もありますよ」
ヴィンセントも、必死に訴えるように言った。
残念ながら、全く反応は無かったが…
「まあ、賑やかにやろう…」
「そうですね…そのうちリューイさんの耳に届くかもしれないですし…」
「あ、何なら毎日、ここで飲んだらいいんじゃないー?」
「頼むからそれはやめてくれ」
リカルドのとんでもない提案を…エルンは即却下した。
「でも、それも良いかもしれませんね」
ヴィンセントが、ポソッと言った。
「毎日…とは言わなくても、僕もときどき、こうしてリューイさんと一緒に過ごしたいです」
「…そうだな」
カイトは、ふっと寂しそうに笑いながら続けた。
「リューイも…その方が嬉しいかもしれない」
キーファーがまた、思い立ったように言った。
「リューイの部屋だったら、いいんだろ?」
「そりゃあまあ…そうだ」
「自室療養にしたらいい」
「いやでも、連れて行くのはともかく…本人がこんなだからな…中に入れるか」
「ウィルフリードだったら出来んだろー」
「あ、でも…その後リューイさんの部屋に入るためには、いちいちウィルフリードさんにお願いしなきゃならなくなっちゃいますよね!」
「ああーそっか〜」
「絶対、あいつにそんな貸しは作りたくないな」
「だったら、カイトの部屋ならいいんじゃないか?」
「…あ、そうだねー」
「…っ」
「いやでも…何か動きがあったときに…やっぱりここに居てくれないと困る!」
「……」
残念ながら、エルンの正しい鶴のひと声で…皆は黙ってしまった。
「リューイ…さぞかし喧しいだろうな」
エルンは、ふふっと笑いながら続けた。
「本当に…刺激になるかもしれないな…」
言いながらエルンは、立ち上がって、再び僕の腕に巻かれた機械を覗き込んだ。
「そうだ!」
キーファーが、ふと思い付いて言った。
「あの、例の音は聞かせてみたのか?」
「ああ、あのリューイさんの…」
「いや…」
「そうだった…あんなに強力な、あの音だったら…もしかしたら効くんじゃないのー?」
「…!」
そこにいる皆が、希望の光を見出したような表情になった中…カイトは、少し諦めたような口調で言った。
「ま、あれは…意識の無い状態で聞いて効果があるかどうか…分からないけどな…」
「試してみましょうよ!」
「やってみようー!」
早速エルンは、いったん部屋を出て…自分用の録音再生機を持って、バタバタと戻ってきた。
「確かに…何で今まで気付かなかったかな…」
呟きながら…彼は、僕の枕元にその機械を置くと…再生のスイッチを入れた。
その機械から…例のメロディーが流れ始めた。
「この音があれば、とりあえずワインが無くなる心配は無いな…」
キーファーが、笑いながらエルンに向かって言った。
「あははは…そんな事もあったな」
「何ですか?…それ」
「この音を聞いて、酔っ払いエルンが、ワインを出した事があるんだ」
「ええーっ…ホントですか!?」
「そんな事もできんのー?」
「リカルドにも出せるかもしれないぞ」
「……そうか…」
それを聞いた非力なリカルドは…
目を閉じて、必死に力を込めて両手を合わせた。
「んんんーっ」
「…」
残念ながら…
やっぱり何も出なかった。




