黒猫と少女 その四
突然の事に対応出来ないまま、猫の話は語られ始めた。
「おいおい、俺は確かに双子だけど、俺の方が兄なんだけど?」
「ねえ、ベルフェゴールって誰よ?」
猫はきょとんとした顔で見つめる。
また あの笑い声をあげる。そしてゆっくりとした足取りで近づいてきた。ゆっくりと。
「にゃっはー!で、まずそこなのにゃ?」
「あっ…」
確かにそうだ!でも、もう遅いらしく、質問を訂正しようとしたが、駄目だった。
クロエ嬢も同じ顔をして、猫を見ていた。
「いいにゃ。まず、お前は確かに兄だが片割れにゃ。
ん?ベルフェゴールの娘。何か言いたいのかにゃ?」
「ええ、聞きたいわ。片割れって普通、弟や妹の事を言わないかしら」
「こいつに、通用する理由にゃいだろ。こいつはにゃ 悪魔の器だからにゃ。ま、それもまた今度の話にゃ!」
やばい、頭痛がしてきた。ズキズキする。キツイ。
なんで、こんな時に?立っていたくない…
「私の場合は、何なのよ。父親の秘密を探りたいから二日間あんたを探しまくったんだから!」
「そーにゃ、あんたの父親か。あんたの父は……正確に言えば実の父親か。」
「…実の ってどういう事なの?」
段々と意識が朦朧としてきた挙句、何故か なぜか…
泣きたい気持ちになった。
「にゃに!あんた 母親から教えてもらってないか?んにゃあ、また今度にゃ。然るべき日が来たら言おうかにゃ、こいつの事も。」
急に視界が暗くなり、その途端、頭痛も消えた。
そして、そこを境にしてそれからの事が何一つ思い出せなかった。
目に映る木、あの公園の木だ!と、思ったが…
空は青いし、何にせよ音はしっかり聞こえていたから戻ってきたと実感できる。
「あら、目が覚めたのね。今は正午を三十分過ぎた所よ。おっ…おはよ。」
どうやら、公園のベンチで寝ていたらしい。
ぐぅ~と腹の虫が鳴く。ちょっと恥ずかしいな。
「ん、おはよ。お腹、すいたな。どうする?」
携帯の画面を拡大し見せてきた。
「今、調べてたんだけどここから徒歩で五分内に美味しいパンケーキとスパゲティが食べれるらしいカフェがあるらしいの。どうかしら?」
「ここ、圏外じゃないんだな。」
「当たり前よ。こんな住宅街が圏外なわけない。普通でしょ?」
「あー…そうだったな。」
青空に広がる雲の中に、猫に見える気がする雲を
見つけたのだが、すぐに見失ってしまった。
「なあ、そこ近いのか?」
「徒歩五分圏内よ。さっきも言ったでしょ」
あー。完全に寝ぼけてる気がする。
「さて、行きましょ。歩ける?もう大丈夫?」
手を差し伸べてくれたので、掴んでみたら……
殴られた。 グーだ。理不尽だ。
「痛い…」
「もう!手なんて握ってあげるワケないでしょ?期待しないでよね。本当阿呆。」
もう一度 言わせてもらおう。 理不尽だ。
「なあ、教えてくれるか?あの後のこと。」
あの後―俺が気を失ったあとの事が気になる。
どうやって戻ってきたとか。
「いいわよ。ただし、お会計はよろしくね」
マジですか。本当ですか。慈悲とは。
「早く、行くわよ。」
先程までのことを全く気にすることない足取りと、表情で先に進んでいった。




