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ロイロの日常  作者: 寸劇
第一章 変化のない 春
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黒橡の探し物 その4

「おい待てよ!」

クロエ嬢は呼び止める暇もなく、廊下へと飛び出していった。

慌てて追いかけるも、少し進んだ先で立ち尽くしていた。クロエ嬢は俺に気づいて後ろを振り向く。

「あら…ショウ…何をしているの?早く帰りなさいよ。今日、部活ないんでしょ?」

「…は?まぁ、確かに無いけれど、いや…は?」

何言ってんだこいつと思った。いや、真面目に。

追いかけて行ったんだろ?で、なんだなんだ…早く帰れと促してきた。

「なんで驚くのよ。私に見つかると悪い事でも隠しているわけ?はぁ…また器物破損届かしら?」

「いやいやいや、溜息をつきたいのはこっちだぜ!?あのクロエ嬢が追いかけていった奴は!?お守りは!?」

「…何の事よ?阿呆だとは思っていたけどここまでなのね。お守り?何であんたがそれを知ってるわけ?」

どうも噛み合わない。俺が悪い夢か何かを見ている…とでも?

「あ、え、っと何でもねーよ。やましいことなんて何も…ねぇし。」

傾きかけている夕日は窓から俺達を照らす。

「そう、じゃあ、これで私は帰るわね。用事がないのに居続けるのは補導の対象よ。」

「そーかよ。クロエ嬢こそあまり遅くなると狼にとって喰われるぞー」


違和感を覚えていた。何かがおかしい。いや、全てだ。部活が無いことを知っていた?それとも今までの事を忘れていた?

1度教室へと戻り、荷物を取りに入った。

「ん…何だよ…何が可笑しいんだ?」

おかしい事だらけだが、それ以上に突っかかる。

窓から差し込んだ光が、机や椅子、窓側にある花瓶に影をつくる。そして教室に1人の俺。

「あ…」

そうだ、この世界は可笑しい。きっと、あの学校にいたはずの生徒や先生、全員が消えた時からだ。

それ以前は普通だった。確かに探していた。

「追いかけなくちゃあな…」

走らないと、あのクロエ嬢の偽物に。帰らせるわけには行かない。帰らせたら…駄目だ。俺が帰れなくなるに違いない。本能的なやつだ。

荷物を置いて昇降口へ全力で走る。まだ帰ってないことを願い、下駄箱の方へ目を向ける。

「意外と、早かったじゃない。」

「どーゆー意味だ、それ。」

「私にここまで早く会いに来てくれるなんて、思ってなかったわよって事。」

「冗談きついぜ?俺は待ち合わせに来るのは早いからなぁ」

「あらそう。さて、帰りましょ。」

「おいおい、待てよ。俺はクロエ嬢に会いに来たわけじゃない。」

「気づいたってこと…?そう…じゃあ帰らせてあげるわ」

案外諦めは早く、白状した。でも、まだもやもやが、謎が残る。

「何で、こんなことになってんだ?俺は」

こちらを睨みつけてきた。悲しみと怒りに濡れて、美しくも思える瞳で。

「考えなさいな。あなたの推理はまた今度聞くことにするから。」

「おい…!?待てよ!?」

捕まえようとしたけど、逃げられてしまった。飛んで消えたような…静かに消えていった。

俺も急いで、外へと続く扉に向かった。

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