黒橡の探し物 その3
「で、一体どこに落としたんだ?その忘れ物…落し物…探し物…ってのは」
2階の北校舎に行くための、渡り廊下を歩いていた。外はまだ明るかった。
「落としたのに落し物以外何なのよ。そして私は落としてないわ。探し物よ。今となっては。」
「それもそうかもな。机の中に入れておいたやつが消えるなんて、ミステリーかよ。」
盗まれた可能性もあるが、この人に限って盗まれるかなぁ…。分からないけど。
「実際に見ていないと、ミステリーか窃盗かなんて分からかいわよ。ハッキリしていないうちは決めつけたくないの。」
「ふーん。ま、そりゃそうだよな。」
北校舎には職員室がある。クロエ嬢は中に入り、探し物が無いか聞きに行った。
が、見つからなかった。廊下で待っている間、付近でそれっぽいものを探してみたが駄目だった。
グラウンドでは陸上部・サッカー部・野球部にソフト部が練習な励んでいた。
「やはり盗まれたのかしら…そうなれば厄介ね…」
「なあ、探し物って何だ?それが分からないと、始まらねぇぜ?」
言うべきなのか、一瞬の迷いが見えた。だが、その躊躇いはすぐに消し去り言った。
「お守りよ。話をしている最中に置いてきてしまったのを思い出してね。肌身離さず持ってるタイプだから、取りに来たのよ。」
「そうなのか。でも盗まれたにしては動機がわからねぇな。ただの嫌がらせか、他の目的か。」
「…大事にしてたのに、見つからなかったらどうしよう…」
よほど大事なものなのだろう、口調の変化とトーンが下がったところから馬鹿でも推測できた。
「大丈夫だ。絶対に、見つけ出してやるから。」
驚いた顔をしたが、すぐに俯き呟いた。
「…ありがとう」
「あら…」
それに気づいたのは、クロエ嬢が先だった。
「ん、どうした?見つかったか?」
職員室を通り過ぎ、一階への階段まであと少しの距離で立ち止まった。
「いいえ、その、誰もいないのよ…」
「…どういう事だ、クロエ嬢。さっき見た時は外での活動をする部活はやっていたぞ!?ほんの5分程度で…」
「分かってるわ…まだ終了時間じゃないし、雨も降ってない…なのに、いないのよ…皆…」
慌てて俺も覗き込む。先程まで賑わっていたグラウンドはもぬけの殻だった。誰もいない。
「は……?一体、どういう事だよッ!」
「落ち着いて!」
我に返り、再度グラウンドを見てみる。先程確認した通り、誰もいなかった。
「しょ、職員室!さっきまで先生はいたし、誰も出てきているところを見てねーぜ!」
二人で走り出す。すぐそこの距離が長く感じた。
勢いよくドアを開ける。
「せんせー!!」
中は静まり返っていた。そう、結論からすればここにも、誰もいなかった。
「あ…」
愕然としていた。窓は施錠されているし、机のコーヒーは湯気がたっていた。
「お、おい!ドッキリなんだろ!?わ、分かってるぜ、せんせー達!」
「そうです!馬鹿にするのは、や、やめてください!先生方!」
俺達の叫びは反響し、誰の耳にも届かずに消えた。
「と、取り敢えず、教室にでも行こーぜ!みんなを探そう!」
「え、ええ…勿論よ!」
吹奏楽部の音色も、家庭科部の調理する音も、聞こえなかった。自分達の息と、走る音が聞こえていた。
3年生の教室は2階、なのでその角を左に曲がれば、俺達、1組の教室が見える。
ドアは元から空いていたので、教室に祈るような勢いで入る。
そこには、誰もいない代わりにクロエ嬢の机の上にはお守りが置いてあった。
「こ、これよ!あった…良かった…!」
安堵の表情になった。俺自身もほっとした。
「やったじゃねえか!やっぱり、ドッキリなんだな!はっはっはー!」
「全く、誰なのよ…」
「そうだな。根本的な問題を解決していない。」
「探しましょうか。」
教室から出ようとして、見た光景は誰かの後ろ姿だった。
「…今、誰か廊下を…!」




