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ロイロの日常  作者: 寸劇
第一章 変化のない 春
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黒橡の探し物 その3

「で、一体どこに落としたんだ?その忘れ物…落し物…探し物…ってのは」

2階の北校舎に行くための、渡り廊下を歩いていた。外はまだ明るかった。

「落としたのに落し物以外何なのよ。そして私は落としてないわ。探し物よ。今となっては。」

「それもそうかもな。机の中に入れておいたやつが消えるなんて、ミステリーかよ。」

盗まれた可能性もあるが、この人に限って盗まれるかなぁ…。分からないけど。

「実際に見ていないと、ミステリーか窃盗かなんて分からかいわよ。ハッキリしていないうちは決めつけたくないの。」

「ふーん。ま、そりゃそうだよな。」

北校舎には職員室がある。クロエ嬢は中に入り、探し物が無いか聞きに行った。

が、見つからなかった。廊下で待っている間、付近でそれっぽいものを探してみたが駄目だった。

グラウンドでは陸上部・サッカー部・野球部にソフト部が練習な励んでいた。

「やはり盗まれたのかしら…そうなれば厄介ね…」

「なあ、探し物って何だ?それが分からないと、始まらねぇぜ?」

言うべきなのか、一瞬の迷いが見えた。だが、その躊躇いはすぐに消し去り言った。

「お守りよ。話をしている最中に置いてきてしまったのを思い出してね。肌身離さず持ってるタイプだから、取りに来たのよ。」

「そうなのか。でも盗まれたにしては動機がわからねぇな。ただの嫌がらせか、他の目的か。」

「…大事にしてたのに、見つからなかったらどうしよう…」

よほど大事なものなのだろう、口調の変化とトーンが下がったところから馬鹿でも推測できた。

「大丈夫だ。絶対に、見つけ出してやるから。」

驚いた顔をしたが、すぐに俯き呟いた。

「…ありがとう」


「あら…」

それに気づいたのは、クロエ嬢が先だった。

「ん、どうした?見つかったか?」

職員室を通り過ぎ、一階への階段まであと少しの距離で立ち止まった。

「いいえ、その、誰もいないのよ…」

「…どういう事だ、クロエ嬢。さっき見た時は外での活動をする部活はやっていたぞ!?ほんの5分程度で…」

「分かってるわ…まだ終了時間じゃないし、雨も降ってない…なのに、いないのよ…皆…」

慌てて俺も覗き込む。先程まで賑わっていたグラウンドはもぬけの殻だった。誰もいない。

「は……?一体、どういう事だよッ!」

「落ち着いて!」

我に返り、再度グラウンドを見てみる。先程確認した通り、誰もいなかった。

「しょ、職員室!さっきまで先生はいたし、誰も出てきているところを見てねーぜ!」

二人で走り出す。すぐそこの距離が長く感じた。

勢いよくドアを開ける。

「せんせー!!」


中は静まり返っていた。そう、結論からすればここにも、誰もいなかった。

「あ…」

愕然としていた。窓は施錠されているし、机のコーヒーは湯気がたっていた。

「お、おい!ドッキリなんだろ!?わ、分かってるぜ、せんせー達!」

「そうです!馬鹿にするのは、や、やめてください!先生方!」

俺達の叫びは反響し、誰の耳にも届かずに消えた。

「と、取り敢えず、教室にでも行こーぜ!みんなを探そう!」

「え、ええ…勿論よ!」


吹奏楽部の音色も、家庭科部の調理する音も、聞こえなかった。自分達の息と、走る音が聞こえていた。

3年生の教室は2階、なのでその角を左に曲がれば、俺達、1組の教室が見える。

ドアは元から空いていたので、教室に祈るような勢いで入る。

そこには、誰もいない代わりにクロエ嬢の机の上にはお守りが置いてあった。

「こ、これよ!あった…良かった…!」

安堵の表情になった。俺自身もほっとした。

「やったじゃねえか!やっぱり、ドッキリなんだな!はっはっはー!」

「全く、誰なのよ…」

「そうだな。根本的な問題を解決していない。」

「探しましょうか。」

教室から出ようとして、見た光景は誰かの後ろ姿だった。

「…今、誰か廊下を…!」


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