黒橡の探し物 その2
「何やってんのよ、ショウ、エイン。」
「話していただけだよ。男二人ですることなんて遊びとお喋りくらいだ。」
興味ないわ とでも言いたげな表情で自分の机に戻って行った。
「なぁ、クロエ嬢。そっちは何で戻ってきたんだ?」
クロエ嬢は先程クラスメイトがほぼ全員出て行った時に、友達と喋りながら同じく、出ていったはずなのだ。
「忘れ物よ。でも、」
クロエ嬢は何かを言いかけて止まった。
「どうしたんだ?クロエ嬢。見つからないのか?」
エインが尋ねる。俺も少し表情を見たが、顔には少しばかりの焦りが見えた。
「そうよ、無いのよ、おかしいわ、ええ、おかしい」
「なぁに、落としただけだろ?さすが生徒会長は物を落とした経験が少ないのかぁ?」
そうだ、物を落とすのは誰でもあるだろ。なのに、ここまでおかしい、おかしいと連呼されるとこっちがおかしいのかと思えてくる。
「確かにさっき見た時にはあったのよ…」
机の中を見直して、サブバッグのチャックを開けて覗き込む。その行動を何度か繰り返していた。
「あーショウ、手伝ってやれよ…俺今日部活あるからさ。お前今日はないだろ?」
小声で話しかけてきた。耳がくすぐったい…。
「んっ、別にいいけどよ。あの人がOKするか?プライドの塊だぜ。ありゃ」
「アピール、だぜ。」
「何のだよ。」
まだ忘れ物捜索は続いていた。まあ、女子の困った顔を見れば良心が痛むのが俺だからな。
「クロエ嬢、差し支えなければ放課後、一緒に探すか?」
呆れた顔でこちら見てきた。少し考えていたのかまをあけてから
「よろしく頼むわ。」
とだけ返事を返した。
「ショウ、頑張ってやれよ。」
散っていたクラスメイトは、チャイムの鳴る本当に少し前に帰ってきた。
皆何かを見に行っていたのか、凄かったと言っていた。
何を見に行ったんだ?と前に座っていたやつに聞いたら、転入生と言っていた。
変な時期に来るもんなんだなと思った。3年の春に来るなんて相当な変人だ。
チャイムが鳴ってから3分後、先生が来た。6校時目は数学だった。
全くわからない授業ほど、つまらないものは無い。
だからこそ、窓側の席という特権を使い、外を眺めていた。
「青鈍、ここの問に答えろ。」
突如当てられて、答えられない俺に先生は
「皆、外ばかり見ているとこうなるぞ!」
「…はぁ。」
俺がいいお手本なのだろう。お手本を見せるために当てたのだろう。確かに外を見ていた俺も悪いけど、そこまで言うのも何か、悪い気がする。
そのまま授業は続いていく。淡々と、教科書通りに
進む授業だからつまらない。勿論、持論だ。
桜は一時間前よりも寂しくなっていた…気がする。
いや、多分、気のせいではなく、絶対だ。
「これで数学を終わるぞー。号令!」
日直の合図に合わせ全員が立つ。礼をして、着席。
「掃除だからな。しっかり、綺麗になるように行うのだぞ。」
各々の掃除場所に向かっていく姿を見ながら俺は、教室に残っていた。正直、教室掃除ほど嫌いな掃除場所はない。
時々、ちゃんとしてる奴もいるけど そんなの珍しくなってきた。先生も、ろくに見に来ないし。
手を抜いて掃除をしていれば隅にはホコリが溜まるもの。そんなの、見える所だけ綺麗にしておけば、世間の評価は高いのだ。
掃除も終わり、帰りの会も終われば 部活動の時間に入る。俺の所は今日、顧問が出張のため休みなので、探し物を探す予定だ。
始まりを教えるチャイムが鳴る。
先生や委員会からの連絡が大半を占めている時間だ。
「うし…頑張るか」
少し呟いただけなのに、後ろの席のエインには届いたようで
「やる気だねぇ。ショウ、好きなのかい?クロエ嬢のこと」
また恋バナに繋げてくる。やっぱ高校生だからな。
別に何でもないけど少し嫌そうな顔をして返す。
「んなわけねーだろ。少し優しく接したからってよぉ好きが理由じゃねーよ。暇なだけだし」
嫌な顔で返したからか、彼女を哀れむ目で
「へぇー クロエ嬢が可哀想だねぇ。」
「…そうか??」
放課後の忘れ物探しは、忘れらないものとなるのだった。




