黒橡の探し物 その1
夢の中で、君は俯いていた。何故なのか、気になってしまったから、尋ねてみた。
君はこちらを向いて喋ろうとしたが、口から出てきたのは、言葉だった。
夢を見ていた。場所は教室で今は授業中。
徹夜してまでゲームの攻略に勤しんでいたせいなのかそれとも疲労か。
窓の外を見れば、咲き誇っていた桜も散り始めていた。綺麗だなんて、束の間なのは本当らしい。
寝ていた事に先生でも気づかないくらいの時間。
その間に見たものは人生を一度、終わった感覚に陥れてくれる、そんな夢だった。
暇なのは他の奴らもみたいで、皆欠伸だとか落書きだとか、手紙回しだとかで潰していた。
「おい、ショウ見ろよ。」
後に座る奴もその気みたいだった。でも、そんな気にはなれなかった。
「いや、そんな気じゃねぇわ」
俺が俺じゃなく、他の誰かが中でまだ誰かが泣いている気がしてならなかった。
早く、家に帰りたかった。何故?知らない。自分でも分からない。
そんな時期なのかもしれない。けど、何かが違うと確信できる。
チャイムが鳴り、号令を済ます。皆、授業から解放され、蜘蛛の子を散らす用に廊下へ出るものもいれば友達の席に行く者もいた。
「ショウ、お前らしくないなぁ今日は。」
「そんなこと無いわ。ただ、眠いだけ」
嘘と事実が混ざりあっていた。あいつはいつも眠そうな目でこちらを見ていた。
「そんなお前こそ、眠いんじゃねぇの?」
「毎日8時間は寝てる。十一時就寝さ。」
よくそこまで早く眠れるな なんて思ったが、普通なのかもしれない。
「へぇ…そっか。おめでとう」
「お前ってずれてるよな。感覚が。」
「んなはずねーだろ。」
桜は風によって運ばれ、窓にあたる。
空いている窓の隙間からは、いくつか入ってきていた。
いつの間にかクラスメイトは俺達を残し、消えていた。何でだよ。
「あ、カブトムシだ。しかも、特大だ。いや〜ロマンロマン。」
一瞬、期待した。
「いるわけねぇだろ。今は春だぞ、春!」
散ったままクラスメイトは帰ってこないため、教室内はとても静かだ。
「いるかも…しれないだろ。」
それを、無理やり、壊そうとしていたのだろう。
それは、俺が落ち込んでいると思ったのだろう。
「まだ、分からないことばかりの世の中に、当たり前とか定義なんて求めるなよ。」
「ああ…そうかもな。難しくて全くわからなかったがな。」
当たり前なんてない世界なのかもしれない。そんな中で、夢みたいな体験をすれば、絶対に、感覚は、普通を超えるだろう。
二人のみで 誰もいないクラスに入ってきたのは、
生徒会長、黒橡クロエだった。




