深夜と少女 その一
とりあえず、薄手のパーカーに愛用している自転車。それにリュック。
リュックの中には重くならない程度に。防虫スプレーや軽めの夜食。あと、懐中電灯。
その位でいいかと思い、後は夜を待つのみ。
今日は親が二人共、仕事がまだ終わっていないので、妹弟と俺の三人だ。
妹の作った夕食をいただき、食べ終わったら部屋に戻りゲームに勤しむ。
妹弟たちがシャワーを浴び終わったら、兄の番。
着替えを片手に、無駄に広い階段を小走りで駆け下りてゆく。
「冷たっ。てか、行かなきゃなあ…」
小さく呟いた。正直、幽霊に会うよりも、父親から怒られるかも…そうなるのが、怖いのだ。
いやいやお世話になっているレーゲ姐さんの誘いを断るなんて、礼儀知らずと言なわれそうだからな。
そろそろ出ようと思い、扉の取っ手に手をかける。
その瞬間、脱衣所に置いた携帯から着信音が流れたのが耳に入ってきた。
レーゲ姐さんからの電話だ。
「もっしー、ショウ。私!私だよ。実はさ~、事故起こしちゃって…三百万相手に払わなきゃ…でないと、捕まっちゃう!」
「姐さん…開幕から詐欺はきついよ…。てかさ、三百万は自分のお父さんから貰えるだろ?」
オレオレ詐欺だっけ?もしかして、俺があの男と同じと言いたいのか?
「ちぇっ…!騙せると思ったのになぁ。あんた頭良かったっけ?」
「いや…さすがにさ?わかると思うよ、それは。」
「確かに。本物のバカは友達から騙されていることに気づけないかと思うからね」
「俺はだいじょぶってことかな?良かった良かった」
「いや、あんたは騙されやすいよ。お人好しだからね。それで、損してる。いつもいつも」
「そっか…ありがとう。今度から気をつけるよ。」
「ショウ、あれ?振り込んでくれたっけ?」
「急に話を戻さないでくれ…そして、何のようなんだよ。こんな時間にさ?今八時!」
そう、今は八時。それに服に着替えてないことに気づいたので、急いで着る。やばいやばい。
「へーでさ、今何時?」
「今の話聞いてた?ねえねえ。」
「へーでさ、今日の下着何色?できれば黒のボクサーがいいなあ」
肩が震える。気持ち悪いぞ、さすがに。
「警察、よんでいい?」
「だめだ。もし…もし、そんな事したら…」
逆に脅された。最悪だ。
でも、憎めないから許しちゃう。
「前振りからがとても長いんだよ、レーゲ姐さん?」
「それは、ショウとずっと話していたいからなんだよ?何で、気づいてくれないの…?」
ドキッとするだろ。やめてくれ。
「その喋り方と声のトーン、そして言っている相手が合わさり…色々と、効く」
「へぇ…どこに、どんな風に、効くの?教えて…?」
う…!さすがに言えない言えない。
咳払いをし、話に戻る。
「と言うか!あれは本気じゃなくて嘘だろ、演技だろ!?」
「なんだなーんだ、分かってんじゃん。でも、本当に友達としては好きだよ。嘘じゃないからね」
「ありがとう、姐さん。俺も友達としては大好きさ」
「こちらこそ。んじゃあ、自転車で私の家の前に。see you」
「へーい。また後でなー。」
今日はどんなことが起きるのだろう…。
そんなことを考えると、後先不安が残るが…まあ。




