幽霊と少女 その六
「くそっ!またこんな事になんのか!」
「ショウ…怖い…や…」
ハリーは俺の服を引っ張る。だんだん強くなっていく。駄々をこねる子供みたいだ。
「大丈夫だから…落ち着いてくれ」
幽霊は、近づいてくる。不気味な容姿と地下室の雰囲気はマッチしていて恐怖を、引き立てているのだ。
そのせいか、先程から震えが止まらない。地下室はたしかに寒いが幽霊が現れてから、さらに寒くなった気がする。
「あぁあぁぁぁぁあ」
容姿にあった呻き声をあげる。
突き出した左腕からは、血が滴り落ちている。
ぴちょぴちょと真っ暗な世界の床に、落ちる。
「ひぃっ。」
「落ち着け、静かにするんだ…」
こんな台詞を言っているけど、解決策も対策も何にも考えついてない。
「あああああ?!」
気持ち悪い…止めてくれ。
「いやあああ…」
ハリーは 頭を抱え、その場にしゃがみこんでしまった。長い髪が、床に触れてしまっている。
その時、一瞬の、強い頭痛が襲う。
あの時、あの空間で起きた、あの頭痛が また。
何が、どうして、どうやって、奮い立たせたかは知らない。けど 逃げようって思えた。
「ハリー…逃げよう、今はそれが最善の策だ…」
相手の事を全く知らないあたりで挑むのは 自ら、死を選んでいるようなもんだ。
「…うん!」
もう一度、懐中電灯を強く握りしめ 出口に向かって走り出す。
そこまで大きい部屋じゃないはずなのに、全く終わりが見えない。暗いからだろうか?いいや、違う。
「何でっ…! 馬鹿にしてるのっ…私のこと!!」
「多分、両方 を…だ。」
幽霊はゆっくりながらも、こちらに近づいてくる。
依然、扉は見つからない。こんなに壁に向かって光を当ててるのに。
何で、何で…何で!?ああ、こんがらがってきた。
「あ……ショウ。消して、それ!」
「分かった、消そう。」
外に逃げるのではなくて、中で逃げようってか。
多分あいつは光に反応している。
こんな暗闇じゃ、幽霊でも無理なのだろうか。
肝試しとかも、光出しながら歩くからな。そのせいで幽霊に会うんじゃなかろうか。見えなくても近づいているかもしれないし。
俺も猫みたいに暗闇でも良く見えればなぁ…なんて
近くの棚の影に隠れる。棚には珈琲豆の袋があった。
その他にも置いてあるが、よく見えなかった。
「よし、じゃあ何とか巻こうか。どうする?」
静かに話しかける。
今の体勢は、ほふく前進をする時みたいに、床に這いつくばっている。
「取り敢えずあいつが諦めるのを待とう」
「ああ。」
先程から、あの幽霊は何か…俺たちを探しているのか?声の大きさが先程から違うため俺たちから遠ざかったり、近づいたりを繰り返しているかのように思える。
それにハリーも気づいたのか、先程から強く俺の服の袖を引っ張るようになってきた。
「怖い…怖いよぅ…パパ…ママ…」
「ハリー…」
その時、すぐ後ろから 一生耳についてはなれないような、あの呻き声が、聞こえた。




