幽霊と少女 その五
地下室のドア横には懐中電灯があった。前々から準備されていたのだろう。付けてから中へ入る。
一年間放置され続けた地下室は、随分と埃が溜まっていてより一層、不気味に見えた。
「ここらへんで、幽霊を見たの。」
ハリーが指を指したところには、当然ながら誰もいない。ワインだとか、ジャガイモの袋だとかが、山積みにされていた。それくらいだ。
「あれ、ここ何かあったんだな。ここだけ埃が溜まってないし。」
「本当だ…何置いておいたんだっけ?」
一年前に動かしたと言うならある程度の、埃は溜まっているだろう。しかし、そこにはつい先程動かして、さらに掃除もおわしておきました。って感じの綺麗さ。
「ねぇ、こんな状況で聞くのもなんだけどクロエ嬢と付き合ってるの?」
「ほんと、なんでこの状況に聞くんだよ。」
「さあ、わかんないけど。聞いておきたいの。皆言ってたよ、前に二人で歩いてたのを見たって」
あれは…探し物だし、別に二人きり歩いていたからって、付き合っている証拠にはならないだろ。
「いやいや、見間違えだろ?俺はクロエ嬢と仲良くねーよ。(多分)」
「ふーん…ならいいんだよ。クロエ嬢狙っている男子が可哀想そうだもんねー?」
「どーゆう意味だ、それ。」
「そのまんまだよ。クロエ嬢狙っている男子は大勢いるし。さらにショウが選ばれたなんてなれば、皆、おこだよ。」
すいませんでしたね。俺が阿呆で、馬鹿で。
「まあ、余計顔もいいからイラつくんだろうねー。」
本当申し訳ない。俺は顔は父親似だ。
「んじゃあ、ハリーはもし俺がクロエ嬢と付き合ったら、怒る?怒らない?」
どんな質問しているんだろう俺。でも、全然とか言われるに決まって…
「うん、怒るよ。激おこだよ。」
懐中電灯だけじゃ、表情までは読みとれない。
「刑罰で言えば、極刑。拷問で言えば…ファラリスの雄牛かアイアンメイデン…かな?」
重すぎる!殺す勢いだ!!前者はわかりやすく言えば死刑だし、後者は焼け死ぬし、体に穴開くわ!
つまり、死ねと。
「はは…なーんてのは嘘。私は祝福するよ。ねー。」
「あはは、そっかそっか、それならいいんだよ。
別に。まだ死にたくないし。」
いやいや、本気の声色だったぞ。
ただ、そんな事ないだろ何があっても。
「まあまあ、ほら、他に何かないのか?」
「んーとね、あれ以降近づいてないからなー。」
強いて言うなら、怒りっぽくなった。らしい。
「気持ちの変化か。じゃあいいか、別に。」
「いいと思うよ?別に。」
あまり、重くない事態なのか?幽霊と会って気絶したのも、停電も、偶然なのか?
そういやブレーカーも見に行っていない気がするからなー。可能性も捨てきれないな。
「じゃあ、戻ろうか。別に何でもないし、ハリーは、今なんかあるか?」
霊感に頼っているわけじゃなく、本人の意思を尊重しているんだ。
「今は何も無いよ。付き合わせちゃってごめんね。色々と。」
「いいよ、こちらも色々としてもらったし。」
ただし、風呂のことは含めない。
「さて、戻ろうか。ハリー、気をつけて。」
「…」
「ハリー?どこ見てんだよ、変なものでも見えてんのかー?」
…!
ハリーの目線の先、古ぼけた棚の前。
俺が懐中電灯で照らしているのは、棚の下…そいつの足元だけ。
「何だ…こいつ。」
明らかに、明らかに…おかしい。
全体の輪郭が、ぼやけているし 良くある、顔が
ぼやけているやつ。そして、
そして、そいつの腕は左腕だけなかった。




