幽霊と少女 その四
午後八時二十五分を回る。まだまだ止みそうに無いどころか、酷くなってきている。
親には連絡を入れて、泊まるという事にした。
「やべーな…つーか、ごめんな。こんなに迷惑をかけて。」
少し眠たいのか、目を擦りながら返答をする。
「いいの、それに、私はこの方がいい、かな。」
「?」
「…忘れて。」
「分かったよ、なあ夏の夜だしさ。怖い話でもしないか?」
暇になってきた気を紛らわすための話題。
「ふっふー。いいよ、私霊感あるからさネタ豊富だからなー?」
「分かった分かった、じゃあ始めよっか。」
パチン。
その瞬間電気が消えた。大雨の影響での停電だろうか?にしても今日は、災難によく襲われている気がする。
「え、あ、あ…ショウ!ど、どこ?」
「…大丈夫さっきと同じ場所だ。ハリー、その場から離れるな。絶対だ。」
「うん…。」
どうしよう。ブレーカーの確認に行きたいが、場所がよく分からない。ハリーに聞いてとりあえず懐中電灯でも、置いておこうか?
「なあ、ハリー?」
返事がない。隣にいたはずの少々荒い吐息は、いつの間にか消えていた。
「おい、ハリー!!」
何か嫌な予感がする。窓から外を見る。
雨はいつの間にか止んでいたし、近くに見える家は、電気が付いている。
「何だ、これ、あの時みたいじゃないか!」
今年の春の忌まわしき…多分一生絡みついてくるであろう、自分の事。やめて欲しい。
「ショウ、ごめん。気を…失っていたみたい。」
聞き慣れた声が暗闇から聞こえる。どうやらパニックになっていたのは俺の方だったようだ。
「ハリー無事だったか…良かった。」
「ショウ、あのね、よく聞いて欲しいの。」
「ハリー?」
「あのさ、私が呼んだ理由はね、帰省しているからじゃないの。」
「じゃあ、何なんだよ?暇つぶしか?」
静寂が暗闇の中で流れる。ハリーは昔から抱え込みやすい…辛くても明るく振る舞うやつだった。
「私の家に幽霊がいるらしいの。ううん、いるの。地下室に。」
「ハリー、詳しく説明してくれ。何か力になれるかもしれないしな。」
霊感の強い…本当に強い少女が、ただの幽霊如きで俺に相談しないだろうから余程のやつなんだろうな。
「うんと、それに気づいたのは一年前。久々に地下室の掃除に取り掛かったの。」
何度か壁にぶつかりながら玄関のキーストッカーから、地下室の鍵を取る。
そして、今度は慎重に地下室へ向かう。
短い階段を降りて、地下室の鍵を開ける。
埃臭いなあ、なんて思いながら電気をつけようとした。
そしたら、目の前に人がいる。しかも女性のようだった。
何で、人がいるんだろうと思ったけど、別に見間違えかな?で済ませておいた。
けど、いつまでもその女性はいるし、近寄りたくない。駄目だって本能が刺激する。
だから、だから…私は、その時絶対に周辺を掃除することは無かった。
でもね、気づくのが遅かった。もう少し気にしていればよかった。
目の前にいる母でもない、親類でもない。
右腕だけで私の首を絞めて、言った。
「あなたを、呪い殺す。」
それを聞いて失神していたけど、目が覚めた。
覚めたらあの幽霊はいなかった。
「…それ以来、来ることは無かったの。ここに。」
「俺が来ると知ったから、来たというわけか。」
あの玄関先の花は約一年、放置され続けたのか。
だから、枯れていたのか。
「だから、さ、ショウ。一緒に、来て。」
少女は、暗闇の中 家具などはわかっているかのように避けてスムーズに地下室への階段に付いた。
「ここ、入っていくよ。いい?」
「ああ、勿論。」
「絶対?約束してね…信頼してるから。」
「お前の信頼に答えるよ。」
昔からの親友は絶対に助けると、誓おう。




