幽霊と少女 その一
予定通り電車に乗り一人で実家に来た。今は駅で
来てくれるはずの両親を五分ほど待っている。
両親と弟は、寝坊した俺を置いていった。
本当にひでー奴ら!
「おはよ、兄貴。もう駅着いた?」
「おや?」
妹からだ。もしや、歩いてこいとかじゃなよな…
「何だよ?迎えに来てくれるのか?」
「うん。ばーちゃんがそっちいくって。」
OK!と書かれたクマのスタンプを送る。
「今 出発した。あと、そのスタンプ可愛い♡」
駐車場にある駐輪場の影に入りながら暑さをしのごうとしているが…早く来てくれ。
暑くて溶けてしまいそうだ。
「あの雲…クマに似てる」
自分の何倍あるのだろう入道雲がそんな風に見える俺は、何を考えているのだろうか。
くだらないことを考えているうちに 見覚えのある
車が自分の近くを通り過ぎていった。
「久々だなー。この家も、人も、景色も!」
去年の夏以来来ていないからか 何となく懐かしく
思える。
道に植えてある街路樹も、庭に生えている向日葵もかわっていないのに。
「ショウ~はやく~!おいで~!」
母さんの呼ぶ声が聞こえたので、急いで向かう。
荷物を二階の伯父さんの部屋に置いてリビングへ急いで向かう。
「も〜遅いよ~ショウ。」
テーブルの上には既に八分の一カットされたスイカ
あと、塩。大玉のを切ったらしく早く食べろと言わんばかりの量が皿に盛り付けてられていた。
「あれ、あいつらは?」
スイカに塩をひとつまみ振りかける。
「ん~、じいちゃんと一緒に山までカブトムシ採りのためのトラップ設置に行ったよ。二人共ノリノリで」
皿に塩が落ちる。その塩はスイカの果汁で赤く、染まっていった。何故かその様子を見ていた。
「ふーん…そっか。にしても、カブトムシ採りに乗り気なJKって 何かなあ。あんまいねーぞ。」
赤くなったかと思った塩は何事も無かったのように
スイカの表面で透明のようになっていた。
(気のせいだったんかな?)
「ショウも少数だよ。やっぱ双子って似るのかな?」
「それさ、どーいう意味。」
フォークを使い種を取り出す。俺はこの作業が以外に好きだ。
母さんは、答えずに飲み物を取りに行った。
「あ!つーかさ、起こしてくれた?」
「起こしたよ?フライパンとお玉を持って、叩きながら階段上ってさ。」
古っ!? そんな家未だにあるか?ふつー。
「でも、二段上ったところでお父さんに止められ
ちゃたの。」
「だから、止めたと?起こす事を。」
「ううん。普通に起こしに来たけど、起きなかっ たよ?」
コップをひとつ持ってきて、ジュースを注ぐ。
氷はさっき出したばかりなはずなのに、もう溶け始めた挙句コップの周りには水が溜まっていた。
「へー…俺が悪いな。」
「お父さん、怒ってるよ。今は用事でいないけど
帰ってきたら…。」
「お…おれ散歩!散歩行ってくる〜ははは」
「いってらっしゃーい。早めにねー?」
そんな呑気でいられないんだが。
仕方ない、逃げたのではないからな。
「…うーい。」
「 絶対怒られたくねー。怒るとこえーし。」
暇つぶしと逃走を兼ねて、外に出る。
今いるのは母さんの実家。まぁ、両親は幼なじみで父さんの実家は目の前。
母さんの家の方が広いという理由で来ているが、
正直 父さんの実家方が漫画が多いからそっちの方が好き。
「全く、嫌になるわ!」
怒られるのだけは避けたい。絶対に。
その時全く動こうとしなかったはずの頭に一つの考えが浮かんだ。
「いや…!理由が思いついたぜ!」
そーいや、ハリーとの約束があったな…。
いや、忘れていたわけじゃなくて 今までの事で脳内の片隅の隅の方まで追いやられていただけ。
そしてこれは、言い訳などではない。
「ふぅ。さて、行くか。」




