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逃走

加筆修正可能性あり

 先を歩いていく有理がある一室で立ち止まる。

「ここに聖也くんがいるわ……念のために私も同行するけど何かあったらすぐ私の後ろに隠れてね」

 有理が無機質な壁についている装置にカードキーをスキャンさせると扉が横にスライドする。部屋の中には寛いでいる聖也の姿があった

「聖也!」

「ん……おぉ、朔玖! お見舞いに来てくれたんだな……ちょうど人恋しくなってたとこだったんだよ」

 そういって聖也が()()()()()()()。男に抱きつかれて少々吐き気を催し聖也を見ると真剣な眼差しで朔玖をみつめている。

「……待ってたぜ朔玖、脱走の準備はもう整ってる」

「……!」

 聖也の言葉で意識が切り替わった。

「相変わらず聖也くんは元気そうね」

「うぉ、有理さんも来てくれたんですか?」

 でれでれした顔で有理に抱きつこうと聖也が駆け寄ると最小限の動きでそれは回避された。

「ぐへっ……病人を無碍に扱うなんて……でも、そこがいい」

「全くこの聖也(バカ)がすみません……」

「毎度の事だから別に気にしてないよ」

 汚物でも見るかのような冷たい眼差しが聖也に突き刺さるがそれすら快感に感じていそうである。

「見た感じ元気そうですけど聖也の治療はいつ終わるんですか?」

「……進行は止まったから数日様子を見たら退院出来る思います」

 退院出来るという言葉を聞き聖也を連れ出そうとする朔玖の気持ちが揺らぐ。何の信用も無い人間と有名な大企業の社員の言葉のどっちを取るかは明白な事だ。

『はははっ、そんな嘘を吐いて何になるのかな……朔玖くん、キミに力の使い方を教えてあげよう……ほら、聞こえるだろう……彼らの声が』

 Mの言葉で急に思考がクリアになり遠くを映し出すかのような感覚に陥る。そこで聞こえてきたのはここにいないはずの人間の声だった。

《四十七号被験体の様子はどうだ?》

《脳波はまだ安定しているようです》

《今までの経験を踏まえて完全に変異を終えて理性を失うまで推定残り三十時間ね……それまでに何としてでも情報を聞き出しなさい……その後の処分は任せるわ》

朔玖の頭の中を駆け巡るように言葉が飛び交う。その中には聞き捨てなら無い言葉も含まれていた。

「そう……ですか。もしかしたら今日には一緒に帰れるかなって思ってたんですけど……ちょっとお手洗いに行ってきますね」

「残念だけどそれは無理ね……お手洗いは突き当たりを右に曲がった所にあるから迷子にならないようにね」

「僕はこれからどうすれば良い?」

『……これからボクが潜入して陽動する予定だからその間に聖也くんと下に向かって逃げるといいよ? なるべく合流できるようにはするけどね……じゃ、また後でね』

 Mがそう告げると突如警報が鳴り響く。

「天野くん! 敷地内で侵入者が確認されたみたい……危険だから私と一緒にエントランスまで行きましょう!」

 どうやら有理が警報を聞きこちらまで駆けつけてきたようだ。もちろん聖也を連れてきているわけではない。やはり終人は人間扱いではないのか。

「わかりました」

朔玖は素直に従う振りをし有理が後ろを向くと同時にその背中を爪で切り裂いた。

「……な、ぜ?」

 その言葉を最後に有理の意識は闇の中へ沈んでいく。

「ごめんなさい……貴方達は信じられません」

 急いで部屋まで向かうといつでも出られるように聖也が待機していた。

「聖也わかってるな?」

「あぁ、いくぞ!」

 聖也と二人で部屋を抜け出し物陰に隠れ退路を確認していると数人の男達が武器を持ち駆け回っている。Mが進入した事で厳重な警戒態勢が組まれたようだ。

「……人数が多いな」

「聖也こっちから行こう」

 男達を避けて別の道を通ろうとしたら部屋から出てきた男と目が合う。一瞬の間を挟み男は声を出そうと大きく口を開く。

「四十七号被験体が抜け出しているぞー! ……ぐはっ」

 すぐに聖也が眼前の男の腹を殴り意識を刈り取るが後ろから重装備の男達が追ってくる。

「見つかった……聖也逃げるよ!」

「……朔玖、前からも来てるみたいだぞ!」

 最早これまでかという時に前から来た男達の一人が突然横にいた仲間全てを刀で切り捨てた。そのまま男は優しそうな表情を浮かべて近づいてくる。

「なッ……!? 仲間を!?」

「遅くなって悪かったね。処理に手間取ってね。ここはボクに任せてキミらは先に逃げるといいよ」

 聞き覚えのある声に一人の人物が思い浮かんだ。

「あんたがMなのか?」

「そんなの言わなくてもわかるだろ? キミは脳味噌をどこかに落としてきたのかな? ほら、ここは任せてさっさと行きなよ」

「あぁ……助かった!」

 後ろから追いかけてくる男達を彼に任せて二人は先を急ぐが、しばらく走っていると目の前の空間が揺らめいて見えた。

「聖也止まれ!前方に何かある……」

「何かって何だよ……?」

 困惑しながら聖也が目を凝らしてみるとキラキラと光る糸のようなものがあるのがわかる。完全に足が止まり周囲を警戒すると通路の影から男が出てきた。

「……よくわかったね。残念だけど逃げるのはもうおしまいだよ? 悪いようにはしないから部屋に戻りなさい」

「そんな言葉が信じられると思いますか……? 変異を終えてしまったら聖也を処分するんでしょう?」

「……どうしてそれを? 上の人間が言っているだけだよ。聖也くんはちゃんと治療するから安心してね」

 朔玖の言葉に確信をつかれたのか佐々木は苦虫を潰したような顔をして言葉を吐きだした。

「冗談も大概にして欲しいですね……信用に値しません」

「そうか……どうしてもここを通るって言うなら二人を処理する事になるんだけどいいんだね?」

 佐々木は悲しげに二人にそう投げかける。

「あんたこそわかってないんじゃないか? こっちは二対一だぜ?」

「ただの人間となりたてが刃核者に敵うとでも本気で思ってるのかな?」

 強がる聖也に対して諦めたように佐々木が溜息を吐いた。

Data

Mr.M

Age 32

Blood O

Weapon 袖切

Capa Unknown

Speed Unknown

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