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発端参

4/20修正

再度修正予定

「おーい、聖也ー! 高瀬さんー!」

 大きな声で呼びかけながら探していると少し離れた先の建物で何かを叩きつけたような物音が聞こえた。

「あっちか! 走るぞ!」

「はい!」

 二人で音のした方まで急いで向かうと佳奈が倒れているのが目に映った。その姿に不安が胸をよぎる。

「高瀬さんっ!? 高瀬さん大丈夫!」

 朔玖が近寄って佳奈を抱きかかえ声を掛けるとぴくりと身体が動いた。

「…………ん、さっ……くん? いやぁぁぁ人殺しぃぃ!」

 佳奈が目を覚まし顔を上げると朔玖の顔が視界に入る。そして、近藤の方に視線が移ると再び悲鳴をあげた。

「落ち着いて高瀬さん! この人は危ない人じゃないから!」

「でも、さっきこの人の仲間が刀で人の首を……」

「それは誤解だったみたいなんだ……だから大丈夫だよ」

「ご……か、い?」

「彼の言っている通りだ。君達に危害を加えるつもりは一切無いから安心してくれ」

 近藤は安心させようとぎこちない微笑みを浮かべるがその顔を見るとむしろ不安が増しそうな気がしてくる。佳奈は怪訝な顔で近藤を見るが朔玖の言葉を信じて警戒をやめた。

「それより高瀬さん、聖也はどうしたの?」

「そうだ、聖也くんがっ! 聖也君が()()()()()()()()()()()!」

「何があったの……?」

「聖也くんがさっくんと連絡を取ろうとして電話を掛けたら急に眼が虚ろになって私を突き飛ばして……」

 佳奈がそこまで口を開くと朔玖と近藤は顔を見合わせた。携帯を使ったという事は終人変わってしまったのか……いや、そんなはずはないと朔玖が迷いを振り切ろうとするも近藤が口を開き絶望の言葉が告げられる。

「そうか……捜索はこれで終わりだな。彼女を連れて元の場所に戻ろう」

「そんな!? まだ聖也は見つかってないんですよッ!」

「見つかるも何も彼はもう終人になってしまっているだろう。彼女が襲われなかったのが不幸中の幸いだ」

「見てもいないのにそんなことわからないじゃないですか! 大体携帯電話で化け物になるなんて信じられない!」

 聖也を諦めたような発言に朔玖は怒り近藤を睨みつける。

「わかった……そんなに言うなら探してやる。但し、彼が終人になっていたらその時は容赦なく処理するからな?」

「……わかりま……した」

「ねぇ……さっくん一体何の話なの……? 終人って何……? 処理するって、さっきの人達みたいに聖也くんは殺されちゃうの……?」

 佳奈は先程の恐怖も合わせてか声が震えていてびくびくしながら朔玖の裾を掴む。

「……キミも携帯は使用しないように……彼の二の舞になっては困るからな」

「高瀬さん、聖也は()()()……()()()()()()()

 佳奈の頭を撫で自らを落ち着かせるように言葉にすると顔を上げた。

「聖也が心配です……行きましょう」

「あぁ、そうだな……」

 聖也を見つけるために二人が再び歩き出し、その後ろをおっかなびっくり佳奈がついていく。

 



 佳奈が倒れていた付近から虱潰しに探していると地面に一枚の写真を見つける。落ちていたのは水着を着た女性のグラビアだ。辺りを見回すとそれが一定の範囲で落ちているのが確認できる。

(これは聖也の好きなグラビアアイドルの……やっぱり聖也はまだ終人になっていないんだ!)

 朔玖は誰にも聴こえないくらいの小声でそう呟き何かを考え込む。

「……あの建物の陰に終人が!」

 唐突に朔玖が声をあげて写真と()()の方向を指差した。

「やはりまだいたか! 危険だから離れないように後ろからついてきなさい」

 朔玖は近藤が建物へ向かうのを確認すると疲れたように足を止めた。 

「さっくん……ついていかないの?」

 それを見ていた佳奈が疑問に思ったのか声を掛ける。

「ちょっと歩きすぎて足が疲れちゃった。すぐに追いつくから高瀬さんは先に行ってて……おじさんが言ってたように離れすぎたら危ないからね」

「……うん、わかった。心細いから早く来てね……?」

 佳奈は名残惜しそうにこちらを何度も見ながら建物の方へ向かった。

「ごめんね、高瀬さん……」

 佳奈と近藤の姿が見えなくなるのを確認してから朔玖は写真のあった方へと急ぐ。万が一に聖也が終人になっていた場合を考え聖也の元へ一人で行く事を選んだのだ。

「……おーい、聖也ここにいるんだろ?」

 暗闇の中一人で佇み写真が途切れた場所で呼びかける。すると、後ろから葉が擦れる音が聞こえた。

「朔玖、こっちだ……」

 聖也の声に振り向くと当然のようにいつもの聖也の姿が……ありはしなかった。

「せいっ……や? どうしたんだよそれ……」

 そこにいたのは聖也の面影を残した歪な姿の化け物だった。頭には小さな角があり、左目は血の様に赤く身体も大きく感じる。その様子に朔玖は警戒の色を強くし思わず後ずさった。

「あぁ、これか……さっき硝子に映った時に気付いたけど驚いたわ。でも、何かかっこよくね?」

 自分の身体が変わり果てているのにも関わらずいつものように能天気な台詞を吐く聖也に朔玖は頭を抱えると同時に安堵し息を吐いた。

「はぁ……あのなそんな身体じゃ家に帰れないだろ!」

「それもそうだな。どうしよっかな……あっ、そういえば佳奈ちゃん見かけなかったか? さっきまで一緒にいたんだけど変な気分になって突き飛ばして気付いたらここにいたんだ」

「あぁ、高瀬さんは……」

「そいつから離れなさい!」

「さっくん!」

 朔玖が口を開こうとすると遠くから怒鳴り声が聞こえ振り向く。そこには近藤と佳奈が走ってこっちに向かっている。

「ちっ……佳奈ちゃんまで捕まったのか! とりあえず逃げるぞ!」

 聖也に手を取られ引きずられように走り出そうとするが数歩先で影が二つ揺らめいた。

「うーむ、人間の部分を残しているのか? そんな個体を見るのはあいつ以来か」

「……例のやつですか? 僕は初めて見ましたよ」

 二人は横から突然現れた風野と佐々木に眼を見開き固まってしまう。

「佐々木、風野さん! 良い所に!」

 近藤の声ですぐに我に戻ると固まったままの聖也の腕を振りほどき庇う様に前に出た。

「待ってください! 聖也は人間なんです! 人だって襲わないし」

「……彼は変異をしているからいつ理性を失ってもおかしくない……それに襲っていないのも演技かもしれないよ?」

 不穏な空気を携えながら佐々木がそう言いながらこちらに向かってくる。緊縛した空気の中で心臓が一際大きな音を立てて脈打ち迫り来る恐怖に思わず身構える。

「佐々木待てッ! こいつは本社で()()()()。坊主もそれならいいだろ……?」

 何かの考えに至ったのか風野が声を張り佐々木を呼び止める。

「治療……? でも、信じられません! それならみんな武器を仕舞ってください!」

「仕方ない……おまえら武器を仕舞え!」

 風野の武器が音もなく消滅し、佐々木もそれに倣って武器を仕舞った仕草をしたが近藤は武器を持ったままの状態でそうする気配は微塵も無い。

「でも、風野さんアイツは終人ですよッ!」

「いいから仕舞え!」

「……ッ! わかりました……」

 近藤が風野に従い、空気に溶ける様に大きな戦棍が消えていく。朔玖はそれを見てほっと胸を撫で下ろした。

「とりあえずこの場に留まっているのは危険だしみんなを家に送るから車を取ってくるよ。せい……やくんで合ってるかな? キミは帰れないけど……」

「……聖也ごめん」

「よくわかんないけど朔玖が考えてくれた事なら信じるしかねぇよ? それが友達ってもんだろ?」

 話が済むと朔玖の下へ涙を流しながら佳奈が駆け寄ってくる。しかし、その視線は異形へと変貌した聖也に向かう。

「さっくん無事でよかった……! えっと、聖也くんなんだよね……? その身体大丈夫なの……?」

「あぁ、気付いたらこうなっててさ。それより突き飛ばしちまってごめんな……変な感じで身体が言う事を利かなくて……本当にごめん」

「ううん……怪我はないし気にしないでいいよ? 聖也くんも無事でよかった!」

 佳奈は零れ落ちる涙を拭い微笑えむ。その佳奈の姿に胸を打たれたのか聖也は口を開けたまま見惚れている。

「天使って本当にいるんだな」

「何を馬鹿な事言ってんだよ。あっ、そういえば卓郎は……?」

「あぁ、あの太った坊主なら車で未発表の最新型スマートフォンを熱心に弄ってたな」

「……あのブタは……心配して損した」

「まっ、卓郎ならいつもの事だろ?」

「卓郎くんは集中するといつもそうだもんね」

 話している内に見覚えのある車がやってきた。窓からは身を乗り出すように手を振っている卓郎の姿がある。窓に挟まれる形で押しのけられている溢れんばかりの贅肉は一部のものには堪らないだろう。

「おーい! 心配したよぉぉ!」

 そう言う卓郎の左手には最新型のスマートフォンらしきものが握られていて、心配したという言葉にも疑念が残るが、瞳から零れ落ちそうになっている涙を見るからには本心だとわかる。

「おまたせ! みんな車に乗ってね」

 佐々木に促されるまま全員が車に乗り込んだ。卓郎が聖也の姿に気付き確かめるようにその角に触れる。

「何これくっついてる……? めっちゃかっこいい! 聖也どうしたのこれ!? 漫画の主人公みたい!」

 卓郎の空気を読まない発言に場は一瞬静まり返る。

「実は…………逃げている内に俺の隠された能力が目覚めてな。突然頭の中で力が欲しいかって声が響いてきてよ」

「え? そうなの! 聖也だけずるい!」

 聖也が空気を変えようとそう切り出すと卓郎は話を真に受けたようで真剣な表情で聞いている。それを横目に朔玖が前に座ってる佐々木に耳打ちした。

「聖也は治るんですか……?」

()()()()()()()。うちの会社は医療にも力を入れていてね。世界でも最高峰だよ?」

「でも、他の化け物は……信じていいんですよ……ね?」

「彼は意識がはっきりしているし、治らないものを治療するなんていわないだろ? ……っと、ここだね」

「じゃ、また明日学校でね。 ……聖也くんは早く帰ってくるの祈って待ってるね!」

「朔玖、聖也またね! 帰ってきたらまた話聞かせてよ?」

 そう言って佳奈と卓郎が車から降りる。しかし、卓郎が降りる瞬間に卓郎のカメラは近藤の手によって没収された。

「くぁwせdrftgyふじこlp!?」

 言葉にならない悲鳴をあげる卓郎を見捨てたように車は再度走り出した。

 ただ時間だけが過ぎて聖也に何の言葉を掛けていいかわからずにいる内に朔玖の家の前に着いた。

「ほら、着いたよ」

「ありがとうございます……聖也、待ってるから絶対治して帰ってこいよ!」

「あぁ、当たり前だろ?」

 車が走り出すのを見送ってから朔玖は玄関の扉を開けた。

Data

風野成勝

Age 37

Blood O

Weapon 無明

Capa 1200

Speed 670


冬川聖也 終人

Age 16

Blood BO

Weapon Unknown

Capa 230

Speed 180





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