発端弐
加筆修正する可能性あり
三人が遊園地の門の前に着くと卓郎がふてくされた顔で佇んでいた。
「うぅ……この感触を俺は生涯忘れないぞ……あれ? 本当に門開いてるじゃん」
聖也が門が開いている事に今気付いたように言うと卓郎が不満気な表情を浮かべサイリウムを回した。
「それはさっき言ったじゃん……三人とも遅いよ! さっさと入ろうよ」
「うーん、門が開いてるって事は警備員が中で見回りしているかもしれない……注意して行った方がいいんじゃないかな?」
普段は開いてない門を警戒して注意するが卓郎はどこ吹く風という感じで手を仰いでいる。
「見つかったら走って逃げればいいだけじゃん。そんなの気にせずいこうよ」
卓郎がそう言うと三人の冷たい視線が突き刺さる。この考えなしのブタが逃げ切れるとは誰も思わなかったのだろう。
「まっ、朔玖の言う通り警戒しながら行くか。捕まって学校にバレたらまずいしな……卓郎もそれでいいよな?」
聖也が卓郎の肩を強く叩きながらそう言うと彼は渋々といった顔をしながらも頷いた。
朔玖達が辺りを警戒しながら先に進んでいくと所々の壁に傷や落書きが見られ、煙草の吸殻なども落ちている事から不良の溜まり場として使われていたのだろう。
「結構荒らされてるね」
「ここも閉鎖されてから十年くらい経つからな」
そう朔玖と聖也が話している先で、卓郎は他人事かのようにいそいそとカメラを構えている。心霊写真が撮れる事を願うかのような必死な様子だ。
「うん? あそこに何か落ちてる……」
「おぉ? アレってなんだろうな?」
脇道に逸れた所に楕円形でぬいぐるみほどの大きさの黒く輝くモノが転がるように落ちている。それが無性に気になった朔玖は不用意に近づき、あろうことか拾ってしまう。
「おい、そんなの拾って呪われても知らねぇぞ? いかにもって雰囲気がするし……」
聖也が変なものを拾うのを見て慌てた様子で朔玖に駆け寄る。
「いや、何か拾わないといけない気がして……」
「え? マジで呪われてんじゃね……こんなの捨てておこうぜ……って、意外と軽いな……? ほら、向こうでさっくんの愛しの佳奈ちゃんが待ってるぞ?」
「なッ……そんなんじゃない!」
聖也がそれを掠め取ると地面に置いて、からかいながら佳奈と卓郎のいる所へ向かう。朔玖は顔を林檎のように真っ赤にして聖也を追いかけた。
「……みつ……た」
二人が走り去った後に消え入るほどの小さな声が誰もいなくなったその場で静かに響いた。
「あっ……さっくん、聖也くん! 二人でどこ行ってたの? 急にいなくなるから怖かった……」
「ごめんね、ちょっとそこまで行ってただけだよ」
佳奈が抱きつくと朔玖は赤くなった顔を誤魔化すように頬を掻いた。
「ぶぉぉおおお!? みんな車来てるくるまぁ!」
卓郎が指で差しながら声を張ると全員が振り向く。確かに遠くから車がこちらに向かってきているようだ。警備員の見回りにしては車で乗り込むのは不可解に感じられる。
「警備員か……いや、警備員だったら車でそのまま入場なんてしねぇよな?」
「……とりあえずみんな隠れよう」
三人が朔玖の提案に頷き影を縫うように近くにあったティーカップの中に隠れた。そこでしばらく様子を見ていると車は朔玖達の付近に停車して男が三人降りてくる。
「はぁぁぁ……伊坂さん達の後始末なんてマジかよ……」
そう言って体格の良い男が暗い顔をしながら溜息をついている。
「近藤は心配しすぎだぞ? 大体伊坂さんを襲ったやつは去った後らしいから大丈夫だろ?」
顔に不安の色を浮かべる近藤を痩せぎすの男が近藤の肩を叩きながら宥めた。
「佐々木は足が速いからいいけどよ。万が一戻ってきたら……俺なんかじゃ一瞬で死んじまうよ」
「いや、風野さんだっているんだぞ? 最悪でも逃げ出せるだろ」
近藤と佐々木が後ろに視線を向けると不機嫌そうな顔をして最後の一人の男が唸った。
「佐々木も近藤も何弱気な事を言ってるんだ! どんなやつが出て来たって捻り潰してやるからしゃきっとせい!」
朔玖達がよくわからない話をしている男達を警戒しているとその場にいる全員の携帯が不吉を告げるように鳴り響いた。
「なんだよこれ……おい、みんな早く電話きれ。見つかるぞ!」
聖也が素早く自分の携帯の電源を切りそう促す。しかし、その頭上には既に何者かの影が差していた。
「おまえら運がいいな」
その声にハッとし朔玖達が上を向くと風野がティーカップの上から覗き込んでいた。その口元は不気味に歪んでおり見るものに恐怖を抱かせるのには十分すぎる程だ。
「風野さ~ん! 早すぎますよ」
風野に少し遅れて近藤が息を切らせて走ってくる。
「ん? お前が遅すぎるんだろ?」
風野が近藤に話しかける為に後ろを向いた一瞬の隙をついて朔玖達は逃げだそうとしたが……不可能だった。そう佐々木が退路を絶っていたのだ。
「はいはい、君達逃げないようにね? 僕達は会社の仕事で来ているだけで決して怪しいものじゃないから安心して……ECTって言えばわかるかな?」
佐々木が社員証を差し出しながら優しげな声で言った。
「ECT? あの最大手の……?」
朔玖は疑いの眼差しで社員証を見つめるが不審な点は見当たらない。ECTといえば日本帝国通信電話株式会社、日本で最大のシェアを持ち信頼性もあり海外の評価も高く最近では海外企業との共同開発中の新機種が世界の注目を集めている大企業のはずだが、こんな寂れた場所に何のようがあるのだろうか。
「そうそう、携帯会社のECTだよ」
「でも、携帯会社がこんな所で一体何をしているんですか?」
「それは守秘義務で教えられないんだ。ごめんね」
佳奈が不思議そうな顔で問いかけるがどうやら答えは聞けないようだ。
「佐々木! そんな事してる暇はないぞ……どうやらやつらがやってきたみたいだ……っ!」
近藤が注意を促し、どこからか現れた時代遅れな服装をした不良達を見据える。その眼は薬物でおかしくなったかのように彼方を見つめていてとても正気とは思えない。
「うた……うたが……うたがががが」
彼らは壊れたスピーカーのように意味のわからない言葉を発しながらこちらに近寄ってくる。
「……危ないから君達は後ろに下がっていてね」
「二人ともなりたてだからといって抜かるなよ……? 例のやつもいつ出てくるかわからん」
「それは重々承知しています! 出てこい刃核!」
声と共に近藤の手には巨大な鉄の鈍器の様なものが形作られていく。戦棍あるいはメイスと呼ばれる類のものだろう。武器を出した男達に朔玖達は困惑しながら見守るがどうみても殺すための道具にしか見えない。
「この人数だと全員で攻め込むのは厳しいか……子ども達は近藤に任せるよ。僕には向いてないからね」
「あぁ、わかった」
「先に行ってるぞ佐々木!」
風野はそう叫ぶと人間離れした速度で不良達に近づき、いつの間にか握られている刀で一人の首を切り飛ばす。
「きゃぁぁぁぁぁぁ!」
目の前で人が切られるのを見た途端に佳奈が悲鳴をあげて逃げ出す。
「人を切り殺すなんてッ! やっぱりこいつらやべえよ! みんな逃げるぞ!」
続いて聖也が声を張り上げると朔玖達は一斉に蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。
「待ちなさい君達! 今離れたら危ない!」
「待ったら殺すんだろ。誰が待つか! この写真をモヤモヤ動画で流してやる!」
そう言って写真を撮りながら誰よりも遅く逃げていく。この豊満な肉体の持ち主は……卓郎である。
近藤は園児並みの速度で逃げる卓郎を見て先程の焦りすら消え失せ憂いを帯びた顔で卓郎を確保した。
「君達も早くこっちにきなさい! 何もしないから!」
「助けてー! まだ死にたくないよー!」
「……あのバカッ! 捕まるにしても早すぎんだろ!」
「聖也……高瀬さんをお願い! 僕は卓郎を助けてくる!」
「お、い……っ! ちっ、勝手なことしやがって……そっちは任せたぞ!」
聖也に佳奈を一方的に任せて朔玖は泣き叫ぶ卓郎を救いに駆け出した。
「近藤! そっちに一匹いったぞ!」
風野の怒声が響き渡ると影がちらつき朔玖の目の前に何かが降り立つ……異様に肥大化した腕と大きく裂けた口をした終人だ。変わり果てた姿には見る影も無いが着ている服からして先程のイカレた不良の内の一人だろう。
「なっ……バケモノ……ッ!?」
終人が朔玖に狙いを定め腕を大きく振り下ろそうとした矢先、終人の頭が鈍器で叩かれたようにひしゃげた。
「ふぅ……ぎりぎり間に合ったか。だから離れるなって言っただろ!」
寸での所で近藤が終人の脳天に一撃を叩き込んだようだ。そのまま近藤は片腕で背負った卓郎をゆっくりと降ろしながら息を吐くが降ろされた卓郎の顔色は青を通り越して白くなっている。
「この化け物って一体……!?」
「こいつらは終人……哀れな人間の成れの果てだ。さっき一斉に携帯が鳴っただろう? 出ていたらキミも化け物に姿を変えていただろう……何故かは知らんがこいつらは携帯を使って仲間を増やしていくんだ」
「なッ……!?」
「まぁ言っても信じられないかもしれんがな……とりあえず逃げた子達を探しに行くのが先か」
「そうだ、聖也と高瀬さんを早く探しに行かないとっ!」
「こっちの子はついてはこれなそうだな……交戦中で悪いが一人任せたぞ佐々木!」
近藤はグロッキー状態で項垂れる卓郎を見て連れて行くのは不可能だと判断し佐々木に呼び掛ける。
「りょーかい! まぁ一人くらいなら何とかなるかな」
手を振りながら快諾する佐々木に卓郎を任せ二人は佳奈達の捜索を開始した。
Data
近藤忠雄
Age 25
Blood O
Weapon 権兵衛
Capa 530
Speed 180
佐々木直之
Age 26
Blood AA
Weapon カーネス
Capa 340
Speed 420
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