想いの外側
いつものように朔玖が律との手合わせを終えて居間に行くと何処からか視線を感じる。しかし、周囲に人影は見られない。そこへ村上がやってきて朔玖を見つけると近づいてきた。
「朔玖くんいい所にいたね。ちょっと話があるんだけど」
「うん?」
「それが……」
村上と朔玖が何やら話しながら去っていくのを影が二つ見守っている。一人は勝気そうな見た目の少年でもう一人は中性的な見た目をしていて性別の判断が難しい。
「はっ、期待の新人が来たって聞いてみれば……ただの餓鬼じゃねえか! あんなのひょろいの莉央でも勝てるだろ」
「餓鬼って……歳はあまり変わらないと思うけど? 僕はそもそも戦闘向きじゃないから勝てるわけないし」
勝気そうな少年がそう言うがすぐに莉央に否定されると人差し指を振りながら人を食った態度をとる。
「チッチッチ! あめえな……あいつはなりたてだろ? 化け物としては俺のが大人なんだよ」
「ふーん? でも、湊の実力は彼より大分下だよね」
「てめぇはつべこべうっせぇんだよ! 大体実力が下かどうかわからねぇだろ!」
莉央に口撃されると湊の態度はすぐに崩れ短気な性格が顔を現した。
「実力なんてこの表見たら一目瞭然だよ? ほら、湊の評価は全部一段階下だからまるで下位モデルみたい」
「そんなに言うなら俺があいつを倒す所を姿を拝ませてやるよ!」
湊は闘争心を剥き出しにして吠える。
「あーぁ、湊の悪い癖がまた始まったよ……でも、彼がどのくらい強いかは少し興味があるなぁ」
こうして二人の思惑が交錯し作戦が練られていく。
「そういう事で僕はしばらく任務で忙しいからよろしく頼むよ」
「あぁ、わかったよ」
「じゃ行ってくるね!」
村上の話が終わり朔玖が部屋に戻ると誰かが尋ねてきたようで扉に紙が張ってあった。なんだろうと思いながらそれを朔玖が剥がし読むと同じなりたてとして手合わせして欲しいとかかれている。たまには律以外とやるのもいいかと考えた朔玖はそれに書かれている待ち合わせ場所へと向かった。
「この辺だよな? おーい、どこにいるんだー!」
「ここだぜ! 俺の名前は塩原湊……お前を倒す男だ」
人の姿が見当たらず朔玖が大声で呼ぶと湊が空を舞って回転しながら地面に着地する。そして、極めつけに格好をつけたポーズを取り朔玖を指差した。
「手合わせなんだよね……?」
朔玖が戸惑いながら聞くが湊は拳でもってそれに答えた。
「いきなり何を……!?」
殴りかかってくる湊を避けるがそこから息を吐かせぬ連打が朔玖に襲い掛かる。朔玖はそれを軽々と避けながら内に入り湊を背負い投げて距離を取る。
「避けるのだけは上手いじゃねぇか! でもな、避けるだけじゃ戦いには勝てねぇんだよ!」
速さで翻弄しようとしているのか湊がフェイントを掛けながら襲い掛かっているが朔玖の戦ってきた相手と比べるとそれは非常に遅く感じられる。朔玖は最小限の動きで攻撃を回避をしながら相手の足を踏みつけ腹に拳を捻じ込む。
「ぐはっ……! こんなもん利かねぇよ……」
「えっと、大丈夫?」
足がふらついている姿を見て心配そうに朔玖が声を掛けるが湊の眼からまだ闘志は消えていない。
「うるせぇ、ここからが本番なんだよ!」
急に周囲の地面が凍りつき身震いほどの寒さが朔玖の身体を襲う。
「地面が……?」
「気付くのが遅すぎたな、もう手遅れだぜ?」
湊が氷の刀を生み出し朔玖に向かってくる咄嗟に腕で刀の直撃を防ぎ傷口は浅い。しかし、湊が近づいたせいか、より寒さは増して朔玖の足が凍りつき始める。そのまま身動きが取れない朔玖に刀を振るったように見えたが何も起こらない。
「くっ……! あれ?」
「俺の刀が溶けてるだと!?」
氷が溶けた事を朔玖は不審に思ったが、動揺している隙に顔に回し蹴りをかます。寸での所で氷を形成して湊が防ぐが追撃とばかりに朔玖が強引に殴りつける。氷が砕かれ強烈な一撃を喰らった湊は吹き飛ばされ地面を転がり意識を手放した。
「はぁはぁ……危なかった……」
「やっぱり湊が負けちゃったね」
「!?」
声が聞こえた方に朔玖が目を向けると木の上から人が降ってきた。
「よっと、初めまして天野朔玖くん! 僕はそこで倒れてる湊の友達で柏木莉央っていうの……よろしくねー」
「こちらこそよろしく?」
出てくるや否や笑顔で自己紹介を始める莉央に朔玖は困惑しつつも差し出された手を受け入れた。
「さてと湊をここで寝かせててもなんだから一旦隠れ家に戻ろっか!」
莉央が台車を木の裏から持ってきて湊を乗せようとする。しかし、朔玖がずっと湊を見つめているのに気付き不思議そうに首をかしげた。
「あれ、どうしたの朔玖くん?」
「いや、こいつは何で僕を倒したがってたのかと思って……」
「あー、そんなことか! それは朔玖くんがみんなに評価されてるからだよ……つまり嫉妬ってやつ」
「そんな……いや、そろそろご飯時だし早く帰ろうか」
思わずそんな理由でと言い掛けるが自分も対して変わらない事に気付くと口を噤み隠れ家へ向けて足を進める。
隠れ家に着く手前で湊の身体がぴくりと動き反応を示す。
「ん……はっ! 俺は何でこんな所に!? おい、勝負はまだついてねぇぞ!」
「はいはい、うるさいからもう一回寝てようね?」
湊は目を覚ますと突然飛び上がり朔玖に喧嘩を売るが莉央に背後から脳天に向けて横殴りに大きな金槌が振るわれて再度眠りについた。
「これって死んだんじゃ……?」
「大袈裟だなぁ……このくらい大丈夫だって」
笑いながら莉央がそう言ってるがぱっと見た感じでは殺人現場にしか思えない光景でとても大丈夫には思えない。
居間につくと莉央が血を流してる湊をソファに寝かしつけ顔に白い布を掛ける。朔玖は唖然としながらただそれを見ているだけしかできなかった。
「来世では活躍できますように……」
「え? 死んでないよね? 生きてるんだよね?」
手を合わせながら不吉な言葉を口にする莉央に不安が増した。
「勝手に殺すんじゃねぇ! おい、それはもういらねぇよ……? あいつとの勝負には素直に負けを認めるし謝るからそれを仕舞ってくれよ」
いつの間にか意識を取り戻していた湊が上半身を起こして莉央の頭を叩くと莉央は笑顔のまま無言で大きな金槌を構える。それに怯えながら湊が後ずさり土下座をしてようやく朔玖との戦いの負けを認めた。
「ふぅ、死ぬかと思った……それにしてもお前って弱いかと思ってたら結構強いんだな?」
「いや、僕なんて全然……」
朔玖は今までの戦いを思い起こし、つい湊の言葉を否定する。すると不愉快だったのか莉央がむっとした顔で朔玖を睨んだ。
「ダメダメ、そんな態度負けた相手に失礼だよ! 朔玖くんは充分強いからね、僕からのお墨付き!」
「いや、そんなお墨付きいらねぇだろ……朔玖もいらねぇよな?」
馴れ馴れしい二人が朔玖にとって何だか嬉しく感じられた。
Data
塩原湊 終人
Age 16
Blood BO
Weapon アイシクルゾーン
Capa 230
Speed 340
柏木莉央 終人
Age 17
Blood AB
Weapon Unknown
Capa 120
Speed 900




