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違和感

加筆修正予定あり

 朝を迎えて朔玖は身体を起こして気掛かりだった律の所へ向かう。

「まだ動いちゃダメだよ!」

 部屋の前まで行くと戒人の声が聞こえる。どうしたんだろうと思いながら朔玖が扉を開くと起き上がってストレッチをしている律と困り顔でそれを見つめている。

「やぁ、おはよう朔玖くん。もう起きたんだね」

「朔玖も起きてたか! ちょうどいい所に来たな……ちょっと付き合え!」

 部屋に入ってきた朔玖に気が付き戒人と律が声を掛ける。

「おはようございます。付き合えってどこにですか?」

「だからダメだって言ってるでしょ! 朔玖くんも律の言う事なんて聞かなくていいからね」

「寝てばかりだと身体が訛っちまうだろうが」

「あぁ、全くもう! 朔玖くんも何とか言ってよ!」

「心配ですからもう少し休んでいてくれませんか?」

 そう言って朔玖は具合を確かめるために律に近づいていく。

「朔玖までそんな事をいうのか? おい、近いぞ……」

「ほら、顔も赤いし熱もあるじゃないですか?」

 頬を赤く染めている律の額に朔玖が手を当てると湯気が立ちそうなほど熱を感じた。

「やめろ……素直に休むからそれ以上近づくな……」

「へぇー……律ってそういう趣味してるんだ?」

 これは面白い事を知ったと戒人はにやけている。

「何の話ですか?」

「いや、こっちの話だよ。それじゃ僕は村上さんとこに行ってくるから律は熱もあるようだし看病を頼んだよ」

「待て戒人ッ!」

 戒人は振り返らずに部屋を出て行く。二人きりになり気まずい雰囲気が漂う。中々思うように言葉が出てこず泡のように浮かんでは消えていく。

「えっと、まだ怪我は痛みますか?」

「こんなもん痛いうちに入らねぇよ」

 なんとかひねり出した言葉も素っ気無く返されまた沈黙が続く。

「朔玖は私が倒れてから危ない目にあったりしなかったのか?」

「すぐに村上が援護に来てくれて僕と真浦さんは律さんを抱えて逃げたので何もありません」

「でも、私がもっと強かったら危険な状況を作らずに済んだのにな」

 律は気を落とし項垂れる。

「そんな事無いですよ! 僕が何にも出来ずに足を引っ張ったのがそもそもの原因です」

「いや、なりたてじゃ仕方ねぇよ。むしろあの場で死ななかっただけでもなりたてにしては上出来だよ」

「足を引っ張った事のは事実ですよ」

「こんな話やめだやめ! 考えてたら疲れちまったよ……私は少し寝とくから朔玖も戻っていいぞ」

 律は無理矢理話を切るとベッドの中に潜り込んだ。

「それじゃ僕は部屋に戻りますね」

 部屋に戻った朔玖は紙に何かを書き込んでいく。

「鍛えるならこのくらいはやらないとな」

 一人呟くとおもむろに腕立て伏せを始める。五百を越えると腕が疲れてきたのか身体を押し上げる力が弱まる。

「ごひゃくきゅうじゅう、きゅう……ろっ……ぴゃ、くっ! はぁはぁ……次は腹筋だ――――はははっ、もう身体が動かないや」

 一通りのメニューを終わらせると大の字に床へ寝転がる。しばらく肩で息をしていると部屋の中にノックの音が転がった。

「ハヤクコイメシデキテル!」

 どうやらマシューがご飯が出来たのを知らせにきてくれたらしい。朔玖がふと時計に目をやるともうお昼手前になっていた。軽く部屋付けのシャワーを浴びてから居間へと向かう。

「オマエオソイ! ナニシテタ!」

 怒りながらもマシューの目は食べ物に釘付けだ。テーブルの上には味噌汁とご飯に異様な量の唐揚げが置かれている。

「ごめんね、ちょっとシャワーで汗を流してた」

「汗……だと!? くっ、何故その場に俺様はいなかったんだ!」

 食卓についてる真浦が汗の言葉に食いつき残念そうにテーブルを叩いた。朔玖は改めて真浦がこういう人物だと認識すると身を震わせた。

「真浦そういうことは言わないようにね……ドン引きするよ?」

「何故だ? 一緒に汗を流し合うのは男の嗜みだろう?」

「始めて聞いたよ……律はまだ寝てるだろうからとりあえず食べようか」

 村上が言葉を言い終える前に一つの影が動いた。マシューは誰よりも早く唐揚げの皿に手を伸ばしその内のいくつかを口に頬張る。

「いつもの事だけどマシュー行儀が悪いよ?」

「村上の料理が美味いから仕方ないんじゃないか? お前はいい夫になりそうだ」

「真浦にそう言われると鳥肌が立つからやめてくれないかい……?」

 朔玖は会話に参加せず黙々と食事を進めそれが終わると席を立った。

「あっ、朔玖くん昨日は疑って悪かったね。キミも化け物になったばかりだし知らない事もあるだろうしごめんね」

「気にしてないから」

 村上が呼び止め朔玖に謝罪するが、朔玖は素っ気無く返すと自分の部屋に帰っていく。

 自分の部屋の近くまで来ると扉の前で右往左往している律がいた。

「律さん……? そんな所で何してるんですか?」

「きゃっ! なんだ朔玖か驚かすなよ! 一緒に模擬戦でもやろうと思ってな……朔玖が良ければだけどな」

 普段とは違い女の子らしい反応をする律に不意をつかれ返答を返せず朔玖は固まってしまう。

「嫌だったか……? まぁ昨日の今日だから仕方ねぇな……」

 寂しそうな顔で律が歩き去ろうとする。

「別に大丈夫ですけど無理はさせませんからね?」

「ホントか! じゃ早速行くぞ」

 やっと起動し始めた朔玖が答えると嬉しそうな顔で律が朔玖の手を引っ張って外へ向かう。外では雪が降り少し肌寒さを感じさせる。軽くストレッチをして身体をほぐすと律が朔玖を見つめた。

「今日は程々に流すくらいだな。もう準備はいいか?」

「ええ、問題ないです」

「それじゃ行くぞ!」

 開始の合図と共に律が朔玖目掛けて一直線に駆け込んでくる。朔玖は真っ向から律を相手取り足を掛けながら後ろへ引き払う。それに対して自ら回転を加え見事に着地し崩拳を放つと直撃した朔玖が地面に崩れる。

「クハッ……」

「どうした? もう少し本気でやってくれていいんだぞ?」

「十分に全力でやってますよ」

 朔玖は起き上がると同時に砂を投げながら突っ込み体当たりをかまし抵抗する律を何とか組み伏せる。

「大分力が強くなってる気がするな」

 そう言いながらも律は足を回して朔玖に三角絞めを掛けた。朔玖は異常なまでに激しく暴れ周りすぐにそれから抜け出す。頚動脈が絞められていた影響からか朔玖の顔は赤い。

「ちょっと一旦休憩していいですか?」

「私も本調子じゃないし休憩とは言わずに今日はこの辺で終わりにするか……じゃ、先に戻ってるな!」

 律が満足そうな顔で隠れ家の中へ入っていく。朔玖も立ち上がってそれに続こうとするが、誰かに見られた気がして後ろを振り返る。

「気のせいか……?」

 疲れのせいかと一人納得して朔玖も帰っていく。その地面に残された歪な黒い羽根に気付く事は無いまま。

Data

天野朔玖 終人

Age 16

Blood O

Weapon Unknown

Capa 290

Speed 440

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