偽神
徐々に光を取り戻すとそこには一人の男が立っていた。それに気付いたその場にいたもの全ての視線が男に集まる。その男、村上は律の傍で膝をつき安否を確認するとほっと息を吐き仲間である朔玖と真浦に視線を流した。
「さて、これはどういう事かな? 律ちゃんは倒れているし、みんな傷だらけだけど……誰か事情を説明してくれる?」
「村上来たのか……!」
「大分遅いから心配でね、それで何なのこいつら? 敵なの?」
村上の表情は変わらずもその言葉の節々には怒りがこめられているように重い。
「爺さんの方は敵じゃないが、そこの女共は敵だ」
「そっか、じゃボクが蹴散らしてくるから朔玖くんと真浦は律ちゃんを連れて先に帰っていいよ」
軽く散歩でもするような気軽さでそう言った。
「少年の仲間かそんなやわな相手ではないぞ? もちろん援護はするが……」
アルツグリットは内心ではそう吐きつつも村上から感じる力に息を呑む。
「お年寄りに心配されるほど弱いつもりは無いんだけどね。まぁ援護するなら邪魔だけはしないように頼むよ?」
「村上、死ぬなよ……? 行くぞ朔玖」
「でも、あんなの相手じゃ……」
「大丈夫大丈夫、お家で安心して待ってて」
後ろ髪を引かれつつも村上の言葉を聞き真浦と共にその場を離れていく。村上は去っていく朔玖達から視線を外し二振りのナイフを取り出してアウルに向けた。
「少し待たせちゃったかな? でも、襲い掛かってきても良かったんだよ」
「隙の一つも見せないくせに飛んだ狸ね?それにこの気配……貴方は一体何者なの?」
苛立ちながら杖で地面を叩きつけアウルは問いかける。
「そんなこと教えるとでも思うの? 頭がハッピーすぎやしないかい?」
村上が笑いながら煽り素振りすら見せずに片方のナイフをアウルに放った。
「こんなものッ!」
アウルがナイフを杖で弾く。その間に村上は凄まじい速度で急接近し弾かれたナイフを掴みながら、その懐に入り双刃で切りつける。すぐにアウルが後ろに退くも避けきれずに腹が切り裂かれ血が零れる。
「アウル様ッ! 貴様ァァァァアア」
怒り狂ったエマが村上に切り掛かるもアルツグリットが鎌で防ぎ蹴り飛ばす。
「愚か者がやらせるわけがなかろう!」
「くっ、邪魔をするなクソジジイッ!」
「エマ落ち着きなさい……このくらいすぐ治るわ。先手は譲ってあげたんだから今度はこちらから行かせてもらうわよ?」
アウルの周りに剣が現れ始める。しかし、村上の姿もそれに合わせた様に増えていく。
「これは幻影……? だけど本体さえ仕留めれば……!」
「残念だけどそんなもの譲ってもらった覚えは無いし、キミの番は永遠に来ないよ?」
剣の群れがあちらこちらに存在する村上を貫こうと殺到するがどれに向かっていっても全て弾かれる。
「そんなバカな!?」
「あれ? 幻影なんていった覚えはないよ?」
村上の声が数を重ね広がりアウルを取り囲む。アウルは成す術も無く切り刻まれ蹂躙されていく。
「このままじゃアウル様が! クソジジイ早くそこをどけぇぇえ!」
「敵の言う事を聞くわけがないだろう……」
アルツグリットは怒り任せのエマの攻撃を丁寧にいなすが、その圧に押されていき一撃を貰う。その隙を突いてエマが横をすり抜けていく。しまったと思いながらもアルツグリットがその背中を切りつけるが傷は浅い。
「貴方中々やるじゃない……もし良かったら仲間にしてあげてもいいわよ?」
「やられかけててそんなセリフ吐くなんてキミってふてぶてしいね。そんな性格じゃ友達いないでしょ? それじゃ来世で頑張ってね」
村上は実体を伴う幻影を消して瀕死のアウルに近づくとその首を切り離した。そこに飛び出してきたエマは大事そうにアウルの首を抱え距離を取ると村上を睨んだ。
「そんな恨みがましい眼を向けなくてもキミにも後を追わせてあげるから安心してね?」
そう言いながら離された距離を詰めるとアウルの首が徐々にエマの身体に取り込まれている事に気付く。何かまずい事が起きると思い村上は咄嗟にナイフを投げ込む。しかし、それが届く前に変貌を遂げる。
「遊びはもう終わりよ? あと少しだったのに残念だったわね」
投げ込まれたナイフは身体に届く前に消滅していく。
「ははは……これは冗談じゃないね。もしかして第三形態まであったりする?」
渇いた笑いを上げながらナイフを握る手は緩めずに村上はその女に立ち向かう。
「愚か者よ……平伏しなさい」
女が吐き捨てると村上の身体が潰れ、肉片が飛散する。その肉片をもう一人の村上が指で摘まんで確かめている。
「うわぁ、悲惨だなぁ~これって平伏せというか潰れてんじゃん? ボクじゃなかったら死んでるよ?」
「貴方ってゴキブリの同類なのかしら……気持ち悪いわねッ」
村上の身体に巨大な槍が突き刺さる。その村上が血を吐いて息を引き取るとまた新たな村上が出てくる。
「あれは痛そうだなぁ……攻め込む隙が見つからないね」
「ならば私がその隙を作ろう……任せたぞ」
アルツグリットが意を決して女に飛び込み鎌を振り下ろす。女がそれを手で掴み宙に作り出した斧で反撃する。斧の一撃を鎌で何とか防ぐがアルツグリットは吹き飛ばされてしまう。
「お年寄りには優しくって教わらなかった?」
村上がその隙に女の腹にナイフを入れ捩じ込むが、叩き折られる。
「生憎だけどそんなもの教わった記憶はないの。今度こそ本物だといいんだけどどうかしら?」
村上の背中に夥しい数のナイフが突き刺さり、そのまま倒れ込む。
「本物だったのかしら……?これで後はアルツグリットだけね」
「今度こそ本物だったようだね。よし、残るはアルツグリットだけだね!」
女が倒れている村上を怪しみながらもアルツグリットを見ようとすると隣から男の声が聞こえて肩に手を置かれた。女は手を払い咄嗟に飛び退き警戒の色を一段と強くした。
「どこまでも舐めているようね。もういいわ……みんな纏めて消えてなくなりなさいッ!」
女の言葉と共に空に数万を超える剣が現れ地面に降り注ぐ。
「あっ、こんなの無理だね。虎の尾を踏んじゃったかな?お爺さんはアレ避けれる?」
村上は空を眺めながら他人事のように言った。
「一点突破で攻撃を集中すればあるいは何とか出来るかもしれん」
「そうするしかないか」
村上がアルツグリットの傍に寄ってナイフを生成しながら真上に向かって投げ続ける。それで防げなかった剣はアルツグリットが鎌で弾き続けるが手が追いつかずに剣が身体を掠めていく。
「キリがないね。これじゃ腱鞘炎になっちゃうよ」
「無駄口を叩いている暇はないぞ」
いくら防いでも浮いている剣の数が減っているようには感じられず体力は奪われ精神が摩耗していく。
「抵抗をせずにさっさと死んでしまいなさいッ!」
剣は勢いを増し更に速度を上げ突き刺さっていく。それによってようやく剣が減っているのを実感出来るようになってきたが、最早防ぐ事もかなわない。
「完全にお手上げだね」
「こうなったら止むを得まい……」
アルツグリットが自らの身体を切りつけると鎌が血を吸い脈動する。それによって血の気は失せて死人のように肌は青白くなり息も絶え絶えだ。アルツグリットは強引に身体を動かし天に向けて鎌を振るう。すると殆どの剣が見る影もなく消滅していくが、アルツグリットは膝をついて苦しそうに呻いている。
「ひゅーひゅー、やるねぇ!お年寄りが頑張ってるんだからボクも頑張らないとね」
村上はナイフを捨てて手を合わせる。ゆっくりと手を離していくとそこから刀が生み出される。その刀を手に取り一足で女の前に立ち右腕を切り落とすが、村上も女の突きを受けて腹を抉られてしまう。
「くっ、ちょっと脇が甘かったかな……でも、これで少しは有利になったはず」
女は右腕の切断面を軽く撫でてから村上を睨む。そして、アウルの遺体が持つ杖を左手で奪い取り地面を突いて歌い始めた。
「何をしてるんだい……?」
「あら、歌を歌うこともダメなのかしら?」
女は不敵に微笑み杖を構えた。村上は怪しみながらも倒すのが先決だと考え、女に対して斬りかかる。それを女が片腕で防ぎ距離を取る。距離を詰めて刀を斬り払おうとするがまたしても防がれ杖で思い切り腹を突かれる。その間にまた距離を取られ追撃の手はこない。
アウル
Age Unknown
Blood Unknown
Weapon イミテーション
Capa Unknown
Speed Unknown
村上孝助 終人 刃核
Age 32
Blood O
Weapon 無銘&袖切
Capa 2600
Speed 1080




