出会いの日 4-A
ユキが髪を乾かしている間に、冷蔵庫…… もとい、フードボックスを開ける。流石にこの代物は僕が作ったものじゃない。転生したときに、“声”が家と一緒につけてくれたアイテムの内の一つだ。毎日いろいろな料理が勝手に供給されて、取り出さなければまた消える。動力は必要としない。世界の理の埒外にある便利アイテムだ。ちなみに、料理はどれも美味しくて、しかも栄養バランスも完璧らしい。
僕はちょっと驚いた。今までは数種類の料理が1品ずつ並んでいるのが常だったのに、今はそれぞれの料理が2皿ずつ…… ユキが来たからか。大したもんだなあなどと考えつつ…… 僕はチキンの丸焼き…… 正確に言うと、地球のローストチキン半羽にかなり似た料理のプレートを2つとる。パンと付け合わせの野菜とスープ付き! このボックスの定番メニューだ。見た目も味もインパクト大、僕はこれがあったら高確率で取ってしまう。
本当はユキの分は自分で選んでもらいたいところだけど…… 流石にこのチートアイテムそのものを見せるのは、まだちょっとね。万が一こんなものの存在が世に知れ渡ったら、僕もタダでは済まないだろう。
食卓へ料理を運び待っていると、ほどなくして髪を乾かし終えたユキが戻ってきた。
「ああユキ、食べよう」
「まさかとは思うが…… わ、私が、これを?」
「あ、ご、ごめん! これ嫌だった?」
「いや、嫌ではない! そうではなくて…… 奴隷が主人と同卓で同じものを…… しかもこんな高級な……」
ちょっとだけ予想してたけど、ユキは目を丸くして驚いている。確かにふつう奴隷って、主人と同じものは食べさせてもらえないし、そもそも主人と同じテーブルにつくなんてありえない。食べるときも床か、マシな奴隷なら狭い部屋で食べさせられるらしいけど…… かと言ってそんなに驚かなくても……
「やはり、使用人がいるではないか」
「え、いないよ……? ああ、それは僕が作ったんだよ」
「お前が!? 嘘をつくな、そんな時間は無かったぞ」
「いやほら、魔術でさ、凍らせて保存してあるんだよ、一度に作り置きして…… それを温めて……」
「…………」
さ、さすがに厳しいか……?
「まあまあいいから、遠慮しないでほら、冷めないうちに!」
僕がほらほらと促すと、ユキは納得のいかない顔で座ってくれた。テーブルに向い合せ。明らかに怪しまれているが、これ以上もっともらしい嘘も思いつかないしもう仕方ない。
「じゃあ食べよう! いただきます」
僕はチキンを鷲掴みにし、思い切りかぶりつく! いつものことながら美味しい。手を油でベッタベタにしながら貪り食べるのが最高なのだ! 空いた方の手でパンを…… と、そこでユキが全く手を付けようとしないことに気付く。
「ユキ…… お腹空いてなかった?」
「いや、そういうことではないのだが……」
うーん、疑って食べないのか、それとも本当は食べたくないけど断り辛いとか…… いや、ユキがそんな遠慮するかな?
「ほんとに大丈夫だから…… あ、じゃあ僕が一口食べようか!?」
それでユキの皿にだけおかしなものが盛られたりはしていないと証明できるだろう。
けれどユキは「いや、大丈夫だ」と言って、ついにチキンにかじりついた!
「ど、どうかな……?」
ユキはごっくんと口の中のチキンを嚥下し、「美味い……」「良かった!」
そこからはもう、2人とも一心不乱に食事を堪能した。チキンにかぶりつき、パンを頬張り、スープを水のように飲み干し、付け合わせで小休憩…… 以下繰り返し。
食べ終わったときには2人とも手が大変なことになっていた。僕とユキは顔を見合わせて笑った…… 「ふふっ」ユキが笑った!
僕はその微笑みに目眩を感じるほどハートを射抜かれてしまった。ユキの笑顔をずっと見ていたいと思った。だって彼女は、最高に綺麗で…… やばい、好きになっちゃうよ!
僕は誤魔化すように立ち上がって、「手洗おう、手!」
僕たちは手を洗い、僕はついでにこっそり食器も片付けておく。ボックスの側面にはお皿を滑り込ませるスライダーがあって、そこに入れたお皿は虚空で消滅する。お皿5枚ごとになんだかよくわからない音楽が流れて、たまに当たりが出ると料理を模したフィギュアが…… “声”いわく遊び心を忘れてはいけないとかなんとか。正直言って全くいらない。
その後はユキに家を案内して回った。




