出会いの日 3-A
ユキの着替えを僕の服から選ぶのにはかなり難儀した。とりあえず上は、一番大きいサイズの服で…… あれ、その、下着っているのかな、いるよね…… 後で買いに行かなきゃ。とりあえず僕のを…… と思ったけど、僕のパンツなんか履きたくないよな、でもノーパンもそれはそれで嫌か……? とりあえずいろいろ置いといて選んでもらうしかないな……!
お風呂から出てきたユキは…… その、すごかった。僕は思わず目を逸らしてしまう。ユキは僕の一番大きいTシャツを着ていたけど、ユキが着るとちびTみたいに、お腹もちょっと見えてるし、なにより胸元が……
Tシャツの襟首から見えるユキの豊かな双丘とその谷間は、絶景というより他にない。僕は胸元を見たくなる衝動を必死に抑えた。お店の中はある種異常な空間だったから、際どい布切れの女の子たちも何だか冷静に見れたけど、家で2人きりだと急に意識してしまう。
下はまあ何とか…… 袖が広がっている、だぼだぼのズボンだ。僕が履いたら一見ロングスカートに見えるくらいのやつだから、ユキにはちょうどいい。
初めて見た時の、汚れと憎しみの炎に塗れた顔でさえ見惚れる顔立ちだったけど、お風呂できれいになったユキは本当に…… 美しかった。涼しげな目元、高く筋の通った鼻、一文字に結ばれた唇……
まだ険しい顔だけど、その冷たく切れ味のある顔に、僕は心臓の鼓動が速くなってしまう。そしてまだ乾かされてはいない髪、汚れと脂が落とされると、とても綺麗な髪だと分かる。
「こんなに服はいらない」ユキが着なかった服を渡してくる。
「あ、ああ、選んでもらおうと思ってさ」
僕は受け取って、下着の枚数を密かに数えてしまった。ユキ、履いてないな……!
「ユキの服…… あとその他にも必要なもの買いに行かなきゃね。お腹はすいてる? ついでに外で…… あ、でも疲れてるか、そしたら今日は家で……」
「お前は……」ユキが口を開く。「この家に他に人はいないのか」
「うん、いないよ」
「家族はどこに? 他の使用人や奴隷は?」
「家族も奴隷もいないよ、ユキ以外には」
僕はわざとはっきり言わなかったが、ユキはこんな時に限って続けて訊いてきた。
「両親とも、死んだということか」
「まあ、死んだというか…… もう会えないのは確かだね」
「そう、なのか……」
嘘はついていない。ユキは黙り込んでしまった。あーあ……
そうなのだ。僕は家族の事について聞かれるた時にどう答えたらいいのかいまだに分からない。本当のことを言うわけにはいかないけど、全部嘘で塗り固めると、些細なところに齟齬が出てきやすいし……
「で、でもさ、僕は別に自分の事不幸とか思ってないから! 僕は普通に、毎日楽しく暮らしてるよ」
「だが親戚に引き取られたりは……? なぜこの家で一人で……」
あーもう、何で僕が話しかけてもずっと黙ってたくせに、訊いてほしくないことは容赦なく訊いてくるんだよお…… 死んだのは両親じゃなくて僕で、そもそも僕はこの世界で生まれたわけじゃないから親戚なんていなくて…… なんて説明したって信じないだろ!?
「うーんそれはさ…… 別に楽しい話でもないから……」
「そ、そうか、すまない……! 無神経な質問だったな、こんな立ち入った話を……」
「い、いや、全然良いんだよ。それよりも急にユキが喋りだしたから、ちょっとびっくりしたよ……」
僕はハハハと笑ってみせるが、ユキは険しい顔だ。
「とりあえず髪、乾かそう…… それでさ、ご飯でも食べよう」
ユキに脱衣所で僕のお手製、魔精石ドライヤーの使い方を教えてあげる。ユキはしげしげとドライヤーを眺めていたが、どう使うべきかはすぐに理解したようだった。
昨日は宣言より投稿遅れてしまってすみません。
今回も短いですので、また本日の夜に次回投稿しようかと。




