12-A ☆
その日の夜。僕は眠る支度を始めていた。
「アルト、もう寝るのか」
「あ、ユキ。うん」
「…………」
僕が答えるとユキは何を言うでもなく、その場で立っている。
「ユキは別に起きてていいよ?」
「いや、そうではなくて……」
僕は何となくユキが何を考えているのか分かる。
「私は、構わないぞ…… その……」
「それは……」
「す、すまない、出過ぎた発言だったかな…… やはりあんなことをした女を抱くなんて、嫌、か……?」
「そんなことないよ!」
僕は力強く否定する。
「嫌なんかじゃない…… むしろ本当は、その、そういうこと、し、したいよ、ユキと……」
「そ、そうか…… それは、良かった…… では遠慮することはないさ……」
「でも昨日…… あんなこと……」
「私はもう気にしていないから…… それに私は君の奴隷だというのに何もしていない。このくらいは恩返しさせてくれ。私で構わなければ……」
「う~……」
僕が自分の欲望と良心の狭間で悩んでいると、ユキが僕の手を握る。
「ユキ……」
彼女の柔らかい手のひらに、どくんと僕の心臓が跳ね上がる。
「本当に嫌だったら、言ってくれ。すぐ止めるから」
僕はここまで言われて拒否できるほど聖人じゃなかった。
ユキは僕の手を引いて、階段を上がっていく。
「アルトの部屋と私の部屋、どちらがいい?」
廊下で聞かれる。僕はもう緊張してしまって…… 少しでも慣れ親しんだ自分の部屋の方がいいと思った。
「ぼ、僕の部屋……」
ユキは優しい顔で頷く。2人で僕の部屋に入り、ベッドに腰掛けた。つ、遂に僕も、するんだな、エッチを…… 夢にまで見た……
けれど僕は緊張状態で、とてもではないけれど興奮するどころではなくなっていた。
「やり方は分かるか……?」
ユキが聞いてくる。僕は首を横に振る。
「初めてなのだな…… では、私がするから…… 優しくするから、安心してくれ」
僕はユキの手をぎゅっと握る。
「不安か……?」
本音を言えば不安だった。本当にひどいと自覚しているけれど、寝ている人間を自分の欲望のままに扱うのとは訳が違う。今のユキは意思ある他者だ。僕の思い通りにすることは出来ない。
「アルト……」
「あ……」
僕はユキに抱きしめられた。
「大丈夫…… おかしなことはしないよ…… 今日最後までしなくてもいいから…… ゆっくりしてやるからな……」
ユキは僕の頭をゆっくり撫でる。優しい手遣い…… 同じリズムで撫でられていると、少しずつ僕の緊張がほぐれてくる。
どれくらいそうしていただろう。ユキはいつの間にか僕の気持ちいいところを重点的に撫で始める。獣耳とその付け根…… じんわりと心地よさと安心が広がっていく。ユキはゆっくりと僕の背中も…… 全身を包まれて、僕は不安とは違うドキドキを感じ始める。ユキの匂い…… 女の人の甘い香りで、僕の思考はふわふわしてきた。
「ユキ……」
ユキは一度体を離すと、僕の顔をじっと見つめる。手の甲で僕の頬を撫でてくれる。
「アルト、キスしてもいいかい」
僕が頷くと、ユキは微笑む。
「目を閉じて……」
僕は言われるがまま目を瞑った。
「ん……♡」
すぐに僕の唇に、柔らかい感触。ユキの唇ってこんなに柔らかいの……? ああ、僕、ユキとキスしてるんだ…… 僕の頭の中は一瞬にして幸せで満たされた。しばらくすると、彼女の唇が離れていく。名残惜しくて思わず切ない吐息が漏れてしまう。
「ん、は……♡」
「ん…… これも、初めてだったか……?」
僕が頷くとユキは少し嬉しそう。
「10才の子供に私は…… ふふ、私はとんでもない悪女だな」
「そ、そんなことないよ! も、もっとしてほしいっ……!」
「悪いことを教えている気分だ……♡」
ユキの顔が近づいてきて、また僕たちは口付けを交わす。ユキの唇、柔らかくて、気持ちいい……っ♡ 僕は我慢できずに自分から顔を押し付けるようにユキにしなだれかかる。
「んふ……♡ ん、ちゅぅ……」
ユキは僕の体を優しく抱きとめてくれる。彼女に軽く唇を吸われると、頭の中がびりびりと甘く痺れ、幸福感はそのままにえっちな興奮が湧き上がってくる。
更にユキは、彼女の舌でちょん、ちょんと僕の唇をつついてきた。まるで中に入れてくれとでも言うかのようだ。僕が少し口を開くと、ゆっくりとユキの舌が侵入してくる。
「ん…… れる……」
僕の中に入ってくるそれ。暖かく、なめした皮のようにつるつるとざらざらが入り混じった感触に、唾液が絡んでぬるぬると、まるで独立した生き物のように僕の口内で動き始める。
「んは、ちゅう……♡ んぅ……♡!」
ユキの舌は優しく僕の舌を刺激してくれる。僕は迎え入れた彼女の舌に夢中で自分の舌を絡ませていた。
「んっ、は……」
「っぷあ……! はあ…… はあ……」
僕は息が続かなくなり顔を離す。
「ふふ…… 積極的じゃないかアルト…… 気に入ってしまったのかい……?」
ユキは僕を抱きとめたままで、少し悪戯気な笑みだ。
「はあ、はあ、キス気持ちいいっ……! もっと、もっとしたいよ……!」
「いいぞ……♡ 君が満足するまで…… ほら……♡」
ユキは僕を受け入れるように小さく口を開ける。僕は彼女の肩にぎゅっとしがみついて、思い切り自分の舌を彼女の口内へ差し込んだ。
「んっ、れる♡ はっ、れろぉ……♡ ちゅ、ちゅぱっ♡」
僕の舌でユキの口内の感触を隅々まで味わう。追随してくる彼女の舌に弄ばれながら……
僕は頭が真っ白になるほど興奮していた。もうユキの事しか考えられない。幸せと興奮で頭がいっぱいで、どうしていいか分からなくなる。
「んはぁっ、ゆき、ゆきぃ……!」
助けを求めるようにユキに抱き着いて、胸に顔をうずめる。柔らかい……
「アルト……♡ なあ、やはり今日最後までしてしまおうか…… 私もなんだか……」
さ、最後まで…… それってつまり、その、ユキの中に、僕の……
僕はユキの胸の中で頷く。ユキはくすりと笑って…… 僕はユキに抱き抱えられたまま、ベッドに優しく押し倒される。
次回は今週末!
これでも2人はまだ完全に打ち解けたわけじゃないです。




