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11-A

 あの後店員さんプロデュース、ユキがモデルのエンドレスファッションショーが開かれそうになってしまい、店員さんのお勧めは見なくても全部買うからいいと言って何とか終わらせた。店員さんはすごい残念そうだったけど…… 雑貨店で、こまごまとしたユキの生活用品も買って、僕とユキは帰路についていた。

 今のユキは上はほとんど地球と同じロングコート、下は細いズボン…… いや、これはパンツと言うのかな……? 髪は変わらず大きなポニーテール。どれも怜悧な彼女に似合ってる。そう、恰好良いんだ、ユキは…… 僕はまたもユキに見とれてしまう。

「どうしたんだい?」

「あ、いや、なんでもないよ」

 僕は焦って誤魔化す。 ……いや、何で僕が照れてるんだ……?

 思えばユキの一着目の試着を見た時も、僕が思わずユキを褒めて、彼女はさらりと返し、僕の方が恥ずかしくなった。普通そういうのって褒められた女の子の方が照れるんじゃないのか!? 今のだって…… くそっ、こうなったら褒めまくって照れさせてやる……!

「いや、ほんとはユキが綺麗だなと思って見とれてたんだ……」

 僕は喉を詰まらせそうになりながら言う。

「おやおや…… それは嬉しいけれど、前を見てくれ。危ないからな」

 むむ~~っ。ユキは穏やかな顔だ。

「ユキ、ほんとに素敵なんだよ…… こんなに美しい人は初めて見たかも」

「一体どうしたんだいご主人様…… 私だってそんなに褒められたのは初めてだよ。ありがとう」

 むきーー! 僕は恥ずかしくて死にそうになりながら歯の浮くような台詞を吐いているのに、ユキは全然平静だ。お世辞だと思ってるのか!? 僕は自分の真剣さを示したくて、つい声が大きくなってしまった。

「ねえ、ほんとなんだから! 初めて会った時からっ、強くてきれいでっ……! ユキは世界で一番かっこいいよ……!」

 通りすがりの人たちが意味ありげな笑みで僕たちを見ているのに気付き、僕は我に返った。ちょ、やばい、恥ずかしすぎる……! 勢いに任せてとんでもないことを口走ってしまった! 道の反対側のおばさんが僕に向かってニヤリと笑い、親指を立てる。いいからそういうのっ!

「ア、アルト…… 分かったよ…… ふふっ…… 君が私をそこまで好ましく思ってくれること、光栄に思う。ありがとう」

 ユキはまだ少し余裕があるけど、さすがに真剣に答えてくれる。あ、ユキも少し頬が赤い! やったぞ! まあ僕は頬どころじゃなくて顔は全部真っ赤になってるけど……


「アルト、今更なんだが」

 家に帰ってきて、僕がリビングでごろごろしているとユキがやってきて言う。

「私は君を何と呼んだらいいだろうか」

「んん~?」

 僕はソファーに寝っ転がりながらユキを見る。リラックスしすぎて獣耳も出しっぱなしだ。ユキは床に正座して、僕と目線を合わせてくれる。

「私は奴隷で君が主人だ。名前を呼び捨てにするのは良くないだろうと思ってな。いや、そもそも敬語を使って話さなくてはな…… どう呼ぶ……お呼び……? したらいい……でしょうか……?」

「ふふっ!」

 僕はユキの突然の敬語に思わず笑ってしまう。

「別に敬語じゃなくていいよ」

「しかしそれでは外の者に示しが付か…… 付きません」

「んっふ……! そんなこと気にしないよ。それよりユキ、敬語似合わないから」

 ユキの全く板についていない喋り方に変な笑いが出てしまった。

「むう…… すまないな、アルト。これは練習しておくとする」

「別にいいのに~」

「それで呼び方だが…… ご主人様、か? それともマスター?」

 くう…… どちらも魅惑的な響き……! 今まで通り呼び捨てでいいと言いかけた僕を思いとどまらせる程に……

 僕は真剣に考え始めた。王道の“ご主人様”! 僕の矮小な支配欲が刺激されるのを感じる。僕が主人でユキは奴隷…… けれど強くて気高いユキには似合わないかな? いや逆にそういう人にこそご主人様と呼ばせるのが…… いやいや…… 様を外して“ご主人”なら丁度いいか? うーんなんかしっくりこない気もするな。

 “マスター”は、ご主人様呼びよりはユキに似合ってる。けど僕の方が相応しくない気がする…… マスターって言うともっと大人で、しっかり奴隷を管理できる人のようなイメージじゃない? 僕なんか奴隷に病院に連れていかれるくらいだから真逆だな。

 今まで通り“アルト”って名前呼び捨ては、うん、やっぱりこれは安定だな。アルト、アルト…… ユキの心地よい声を脳内再生していたらちょっとドキドキしてきた…… けれどユキは呼び捨てだとよくないと思うだろうからなあ。アルト様? ユキに絶望的に似合わない。アルトさん? それはおかしすぎるな。アルトくん…… こ、これはこれで良いけどやっぱり変…… アルトちゃん…… だ、ダメだ! そっちの方向に行くと返れなくなる!

 もういっそ…… まだよそよそしかった時のように“お前”呼ばわりされるのも嫌いじゃなかったりして…… ご主人様命令なら呼んでくれるかな? ていうか命令したらどんな呼び方でも…… 例えばほら…… 

「大丈夫か……?」

 僕がユキに恥ずかしい呼び方をさせる妄想に浸っていると、彼女から心配されてしまった。

「あ、ああ、うん。今まで通りで良いよ」

 結局この結論。

「うーむ……」

 ユキはやっぱり抵抗がある様子だ。

「まあなんでも良いんだよ。ユキが呼びたい呼び方で」

「そうか…… ではお言葉に甘えてとりあえずは今まで通りとさせてもらう」

「うん!」

すみません、更新頻度落とします。

次回は来週、12-Aです。ついに大人なシーンへ突入します……!

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