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第十二話・突っ込みが命!

自転車は楽しいですよね。

でも暴走して事故らないでね!

義明が宝野公園に訪れた日の後日、放課後。


●宝野公園●


健吾『よし、揃ったな。』

市雄『何か、気になる事とかあったら言ってくれ。』

翔太『三駐って、結構狭いですよね?

   あのスペースで2チーム同時練習って、難しくないですか?』

市雄『確かに、十何人も狭いジムカーナのコースを共有し合うのは難しい。』

健吾『だが、オレ達はジムカーナだけを練習するんじゃない。

   あくまでもバトルの為にジムカーナを練習するんだ。

   オレ達、カミカゼが出走する時は…二人同時だ。』

孝『二人同時!?』

淳平『ジムカーナを二人同時だなんて…聞いた事無いよな…。』

健吾『オレ達が今、必要としている技術(もの)は…突っ込みだ。

   ヘアピンみたいな急なコーナーに入る時、ラグができている。

   だがインペリアルズの義明は、巧みなブレーキング技術により

   コーナーでの突っ込みにおけるラグがほとんど無い。』

市雄『義明に勝つ為には、絶対にブレーキング技術が必要なんだ。

   オレが…あの時の交流戦で敗れたのはブレーキング技術の差だ。』

健吾『二人の内、コーナーのイン側の奴は

   パイロンすれすれを掠める様なコーナリングを…

   アウト側の奴は恐れ知らずの突っ込みでインの奴を防ぎこむ走りを…

   義明に確実に勝つ為には、全員がカミカゼ走法を習得しなきゃならない。』

翔太『ボク達も…カミカゼ走法を…!』

孝『遂に、やらなきゃいけない時が来たみたいだな。』

健吾『意外かも知れないが、このチームの中で

   カミカゼ走法をそれなりにできている奴は三人いる。

   一人目はオレ、二人目は市雄…そして三人目は…』


健吾は少し間を置いて、三人目の名前を言った。


健吾『剛だ。』

剛『えっ、オレ!?』

孝『何いぃ!』

翔太『まさか!』

淳平『嘘だろ!?』


チーム全体がざわめいた。


市雄『落ち着け、静かに。』

健吾『ま、剛はまだ正式なメンバーじゃないけどな。

   オレの見込みでは…肉体(エンジン)さえ鍛えれば

   十分カミカゼでもやっていける程の実力だ。』

孝『た、確かに…剛のチャリドリはめちゃくちゃ凄い!』

翔太『で、でもタイムは…ボク達よりだいぶ遅いよ。』

健吾『冷静に考えてみろ。剛は自転車初めて一か月経ってるかそこらだぜ。

   普通の走りは兎も角、チャリドリに関しては天才、あるいはそれ以上だ。』

市雄『チャリドリ嫌いの健吾を

   ここまで言わせる程のチャリドリだ。

   剛、君は中々のライダーだよ。』

剛『て、照れるな…。』

健吾『剛。ここで浮かれてたら駄目だ。

   はっきり言うが、お前からチャリドリを抜いたら平凡以下だ。

   今の内は、その自覚を忘れるんじゃないぞ。』

剛『は、はい。』

健吾『さて、そろそろ出発する。もう質問は無いな?』

剛『あ、質問!』

健吾『何だ?』

剛『あの子、練習を見たがってるんだけど、連れてってもいいですか?』

健吾『邪魔にならなければ、別にいいけど。』


典子は微笑んで言った。


典子『宜しくお願いしまーっす!』

淳平『珍しいな、自転車に興味がある女の子なんて。』

典子『どっちかって言うと、ぐーたらの剛が

   どこまでやれるかを見たいって感じかな。』

剛『ぐーたらは余計だぞ。』

孝『確かに、自転車やる前の剛はぐーたらだったな!』


そう言って、孝は笑った。


剛『笑うなよ…。』


数十分後…


●第三駐車場跡前●


剛『ここが三駐かー。』

孝『へー、言ってた割には広いんだなー。』


第三駐車場跡…三駐と呼ばれている駐車場跡。

土地の所有者が行方不明になり

荒れ果てていたところを、三駐サラブレッズが整備し、練習場にした。


?『おう健吾、連絡通りだな。』

健吾『宜しく頼むぜ、賢介。』


清水賢介(しみずけんすけ)

チーム・三駐サラブレッズのリーダー。

ミニベロ特有のハンドルの切れ込みを逆に利用した、猛烈な突っ込みと

軽量、小径を活かした加速力での脅威的な立ち上がりを得意とする。

明るい性格で、人が良い。


賢介『紹介するよ、副リーダーの達也だ。』

達也『達也っす。』


宮野達也(みやのたつや)

チーム・三駐サラブレッズの副リーダー。

だらしないが、自転車ジムカーナではかなりの実力者。


賢介が剛を見て言った。


賢介『へー、君が噂の…。』

健吾『まだ正式なチームメンバーじゃないが、別府剛だ。

   噂の通り、チャリドリの技術は常識の範囲外だぞ。』

剛『ど、どうも!』

賢介『剛っていうのか。お前の走りを楽しみにしてるぞ。』

達也『練習してきていいっすかぁ?』

賢介『あぁ、いいぜ。』


達也は気怠そうに練習をしに行った。


賢介『あいつ、ああ見えてもめちゃくちゃ速くてな。

   人は見かけによらないって感じだぞ。』

淳平『へー。』

市雄『そうだ、メールで送った通り、コースマップを頼む。』

賢介『これだな。』


市雄はコースマップを受け取った。


市雄『どれどれ…スタート直後に三回スラローム。

   そしてヘアピンからのタイトコーナーで…

   その先は、一回転するのか…!』

賢介『一々覚えなくても、ラインカーで

   線を引いてるから、それを辿って走ればいいよ。』

市雄『分かった、助かるぜ!』


健吾がコースマップを見た。


健吾『なるほど…複雑だが、いくつか余裕のあるセクションがあるな。

   サラブレッズも、二人同時に練習しているのか?』

賢介『よく分かったな。』

健吾『丁度オレ達もやろうと思ってたとこなんだ。』

賢介『一人で走る事を想定されているコースを二人で走るのは無謀だ。

   コーナーがハードな上に狭いから、かなりの確立で接触するよ。』

健吾『まぁ、宝野よりはハードなコーナリングの練習ができそうだぜ。』

賢介『さて、オレはミーティングしてくるから、お前達も準備してなよ。』

健吾『おう、10分後に会おうぜ!』

翔太『ここからじゃ、サラブレッズの人達がどう走ってるかよく見えないね。』

孝『花壇の木が、案外邪魔なんだよな。』

健吾『さて、お前等。準備体操なり、セッティングなりしとけよ。』


キュルキュルキュルキュル…

カチカチ…(達也の走行音)


賢介『まぁまぁってとこかな。』


キキッ…


達也は自転車を降りた。


達也『だり…あんなに人数来たら狭くなるじゃねーかよ。』

賢介『まぁそう言うなって。あいつ等の走りも勉強になるぞ。』

達也『あいつ等は九人、オレ達は五人で十四人か…』

賢介『面白い合同練習になりそうだな!』

達也『面白くなりゃいいけどな…興味無いけど。』

賢介『達也ってホントにバトルに冷めてるんだな。』

達也『一人でコースを攻める方が気楽でいいぜ。』


剛『あの達也って人、曲がる時にかなり傾けてるな…』

翔太『逆ハンドルっていう現象を、最大限に使ってるね。』

剛『逆ハンドル?』

翔太『二輪車ってのは、まっすぐ走ろうとする特性がある。

   だから、曲がる為には車体をその方向に傾けなきゃいけない。

   逆ハンドルってのは、その特性を捻じ曲げる為に

   曲がりたい方向と逆に、少しだけハンドルを切るんだ。』

剛『どういう事だ?そんな事したら、コケるか逆に曲がっちゃうぞ。』

翔太『ほんの少しを一瞬だけだから問題無いんだ。

   曲がる方向のハンドル…例えば、右コーナーを曲がる時は

   ハンドルの右側を押せば、車体は右側に傾く。

   …実はこれ、自転車やバイク乗っているなら

   誰であろうと気付かない内にやってる技術なんだ。

   車体が傾けば旋回性能は飛躍的に向上するけど

   スリップアウトするリスクも高くなる。

   あそこまで傾けるには、相当の度胸が必要だよ。』

剛『パイロンすれすれのコーナリング…まさにあの走りの事だな。』

翔太『あの走りを、自分の物にしないとな…。

   よし、ちょっとテストランしてくるよ。』


翔太はコースへ行った。


賢介『お、翔太がコースに入った。』

達也『ロードバイクなら、オンロードじゃ有利ってとこかな。』


翔太(前にこっそり走った時とはだいぶコースが変わってるな。

   タイトなスラロームの量が圧倒的に増えてる。

   それに…一回転するセクションがある。)


翔太はBlueMagnumに跨った。


翔太(でも、この程度なら苦戦する程じゃ無いかな。)


翔太が走り始めた。


翔太(スラロームが三回、右、左、右。)


最小限の走行距離でスラロームでクリアしていく。


翔太(そこからは僅かな直線からの左からの二連ヘアピン。

   ヘアピン前が僅かに右曲がりだから、重心移動が肝だ…!)


鋭くヘアピンに突っ込んだ。

タイヤと路面が擦れる、小さな音がする。

一つ目のヘアピンをクリアした。


健吾『ほー、やってるな。』

市雄『突っ込みとハンドルのブレの無さは流石だな。』

健吾『ロードはタイヤがかなり細いから、グリップが不安だ。

   ヘアピンとはいえ、グリップをギリギリ近く使ってたしな。』

市雄『あの軽さじゃなきゃ、難しいコーナリングだな。』


もう一つのヘアピンも同じ様にクリアして、その後の直線で加速。

そして、このコースの最大の見せ場、リットルコーナー。

一回転するコーナーで、草書体のLの形状から名付けられた。


孝『さっき教えてもらったんだけど、あの一回転するコーナーは

  リットルコーナーって呼ばれてるらしい。』

剛『リットルコーナー…あそこはチャリドリできるかな…。』

孝『いくら何でも、あれは無理だろ。』


健吾『リットルコーナー…オレもほとんど見た事無いからな。

   翔太は、どうやってここを抜けるか…。』

市雄『あのセクションはリットルコーナーっていうのか。』

淳平『ラインがクロスするのか…複数バトルだと怖いな…。』


翔太がリットルコーナーに突入した。


翔太(案外イケるじゃん!…あれ…?)


翔太が減速し始めた。


翔太(しまった!コーナリングの最中はペダルを漕げない!

   しかも、タイトコーナーだと

   タイヤの摩擦で推進力が奪われる…!)


達也『突っ込みが甘すぎるぜ…。』

賢介『リットルコーナーは、車体を傾ける時間が長いからな。

   中途半端な速度じゃ、脱出時の速度がガタ落ちになる。』

達也『突っ込みだけが全てなんだよな、このセクションは。』


市雄(なるほど、今ので走り方が分かった気がする!)


市雄もコースに向かい、スタート地点から走り始めた。


市雄(ここは急なコーナーが多くて、ペダルを漕げる時間が少ない。

   だから、僅かな直線を利用して突っ込み速度を上げるんだ!)


淳平『野原先輩も走り出した!』

孝『翔太の時とは、まるで速度が違う!』

健吾『市雄なら、今のでいい学習になってる筈だ。

   翔太より実力の勝るあいつが、マージンを

   削って走ればああなるのは、まあ当然だな。』


市雄はあっと言う間に三連スラロームをクリアした。


その頃、翔太はリットルコーナーをクリアし

そこから二つのコーナーを抜けていた。


翔太(少しコーナーが緩くなって、高速で攻めやすくなってきた!)


剛『野原先輩が二連ヘアピンを抜けたぞ!』

孝『リットルコーナーに突っ込む!』

淳平『す、すげえフル加速だ…!』

健吾『短い直線でしっかり速度を

   稼ごうとなると、パワーがいるからな。』

淳平『ジムカーナは瞬発力も必須って訳か…』

剛『あんな速度で…曲がれるのか!?』


市雄がリットルコーナーに突っ込んだ。

☆マシン図鑑☆

JANGGOK・(チャンゴク・)ELFA(エルファ)

 細身でシンプルなデザインのフラットバーロード。

 フレーム剛性や回転系のフリクション等の基本性能は

 価格の割にはハイクオリティ。だが、その理由は

 コンポーネントのグレードを最低クラスまで落として

 フロントディレイラーを廃し、6段変速としたからである。

 新車価格は79500円。

搭乗者・形見義明(かたみよしあき)

カラー・ペッパーレッドソリッド

義明仕様…6段しかないギヤは一枚一枚計算されている。

     キモであるブレーキキャリパーおよびシューは

     このクラスのマシンに付けるには惜しい程の物。

※自転車、およびメーカーは全て架空の物です。

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