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ドール  作者: りょく
第一部
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第四章 道化師

第四章 道化師


レキは通りすがりの旅商人から教わった砂漠の道を歩いていたが、いつになっても人里に着く気配は無い。

「あの商人俺に嘘をついたのか?」

ブツブツとぼやいていると、派手に転けて打った顔をさすりながら足下をみると、足下には親子のミイラ化した骸が砂漠の砂に埋もれていた。親子の骸を見つめていると、親子の骸は再び砂の中へと消えていった。

―リーンリーン

っと音がする方へ目を向ける、遠くの砂漠の向こうに建物が見えた。近づくとやはり人工的な建物だが、多くが崩れ落ち現在は廃墟のようで、人が住んではいないようだ。

―リーンリーン

さっきの音が再び聞こえ、音に誘われるように、壊れた建物の中に入っていく。大きな城の様な建物の奥に子供が1人たたずんでいる。

「こんな所で何をしているんだ?」

問いかけに、子供が振り向くと顔には道化師の仮面を付けていた。さっき音が鳴っていたのは首に付けている首飾りからのようだが。

「ここにはお前の他に誰もいないのか?」

子供は何も言わず、じっとこちらをみつめているだけ、顔に付けた道化師の仮面は泣き笑いといった表情。お互い黙ったままでいると・・。


「ようこそおいでくださいました、僕は道化師、何を披露しましょうか?」


道化師はそう言うと深く頭を下げると、懐から出したハープを弾き始めた。その音色はとても美しいかったが、どこか何かが欠けているような・・・。

「あんた人間じゃないな?」

一瞬音が止まったがすぐに弾き始め、最後まで弾き終えるとこちらに顔を向ける。

「お客さんお目が高いですね~僕はこの通りの道化しか能の無い機械人形ですよ」

仮面をはずした顔は確かに人では無く、古い人形の姿だ。

「こんな所で何をしているんだ?」

もう一度質問をしてみるとゆっくりと瞬きをしたあと道化師は答える。

「ココは墓場ですよ、多くの命有るものと、無いものとの」

「もとは立派な城みたいだけど・・?ココは、どうして誰もいないんだ?お前しかいないのか?」

荒れ果ててはいるが、建物自体はかなり高貴なもののみたい。

「ええ、今は僕しかいません」

「どうしてだ?」

「お客さんはお話が好きですね、ではお話ししましょう・・ココは何百年も続いた伝統ある城、人々はココで毎日宴を楽しんでいました、しかしあの戦争でこの場所は破壊され人々は去って行ったと言うことです」

戦争とはドールの戦争のことを指しているのだろう・・。

「それまでは僕の様な機械人形達も多く働いていました、あの頃のココは笑いがあふれ音楽や踊りが毎日続く夢のような時間で・・」

嬉しそうな表情で、あの頃を思い出しながら次には悲しそうな表情である場所へレキを連れて行く。そこには1つの墓があり新しい花がそなえてある、墓にはジュリアっと書いてある。

「この人は?」

「ここで1番人気があった歌手さ、彼女の歌は本当に美しくて皆酔いしれていた」

道化師の首飾りから彼女の姿と、まだ楽しかった城の情景を壊れた壁に映し出す。

「お前はどうしてココにいる?機械人形はすべてあの戦いに参加し、帰ってきたものはいなかったハズだが?」

静かな口調で道化師に問いかけるが、道化師ははじめからわかっているような口調。

「この場所から東西の方角に動いている機械人形がいたらしいと旅の商人が教えてくれました、探し人が見つかるかもしれない行ってみてはどうですか?」

「あぁ」

「あなたの思う通り僕は戦争には行きませんでした、何故人間達はこの感情を造ったのでしょう?それがなければ僕は・・」

「同じ事だろ?お前には少なくとも守りたい者があった、けれど、それでもプログラムのせいだと言っている時点でお前は古いモノなんだよ」

その言葉を聞いて道化師は少し考え込んだようだった。

「人間とか機械それだけの事だろうが」

「・・・それだけの事・・・ははは、僕はすでにいないものなのかもしれません・・すでにこの僕につけてくれた名を呼ぶ人はいないのですから・・」

「お前を縛る鎖はもう無いんだ・・・自由にどこへでも行くことができるだろ?」

そう言ってレキは、東西の方へと歩いていく。それを見送りながら道化師は墓に向き直す。



フワフワの緑の長い髪を持った美しい人間の少女、ジュリア・・・。

『う~ん、トワ!あなたの名前はトワね!』

『トワ?』

『だって名前が無いとふべんでしょ?機械だから永遠に生き続けることができるから!ぴったりよ!いいなぁ~ずっと皆に曲で幸せにしてあげることができるんだから』

『永遠に?』

『うん!とっても素敵な事でしょ?あっそうそう私の名前はジュリアよろしくね!トワ』

ジュリアは自分の知らないモノを沢山教えてくれた、けれど楽しい時間はすぐに過ぎ去り。機械人形達に攻め入られ、逃げ惑う人々をかき分けやっとの思いで見つけだしたジュリアは危険なのをわかって、トワが作った、たった1つの楽譜をしっかりと抱きしめて冷たくなっていた。

『今度皆の前で演奏したらいいよ!この曲素敵だもの』

『でも・・』

『じゃ私も一緒に歌うから、ね?』

『うん』

『約束だよ』

・・・大切だった、プログラム以外で僕がしたこと、彼女を守りたかったことだけど僕は何もできなかった、いやしなかったんだ・・。

「ごめんジュリア・・僕は逃げてしまってた、でも今度こそ君との約束を守るよ・・ずっと弾き続ける、きっとこんな僕でも君は横で笑って一緒に歌ってくれるよね?・・・今日は久しぶりに沢山話したい事があるんだ・・」


―リーンリーン


レキは振り返ると、砂漠が永遠と続いているだけだった。前に向き直し再び歩き始める。

「さ~て今日こそ人里に着けばいいけどなぁ・・」


砂漠に朽ち果てた墓の前に一体の機械人形が墓を守るように、側で膝をついた姿で動かなくなっていた。


―リーンリーン・・・・



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