番外編 最終話 願いの光
「フェイ、お前はしばらく隠れておいで」
「カスガ様・・・」
心配そうな表情をするフェイに笑顔を向けて、フェイを送り出す。
フェイがいなくなり、静まり返る屋敷の中・・静寂だけがやけに耳に付く。
そして・・しばらくするとカーテンが動き、冷たい夜風と共にまだ幼さの残る姿の人物が1人現れた。
「こんばんは、我が母なる人・・あなたの事ですから僕がなんのために来たか、解っていますよね?」
カスガは深い溜息を付き、座っていた椅子から立ち上がる。
「・・それで私がどうするか、あんたにはわかってるんだろ?」
「えぇ、けれどレキさんはどう思いますかね?」
昔ならレキを置いて・・いや、自分の罪の重さでレキを置いていくことなんて考えられなかった・・。だが、今は違う・・・。
「・・・・あの子にはもう私は必要ないさ」
「そうは僕は思いませんけど・・・まぁ僕達の計画に醜い人間は必要ない・・けれどあなたは違う・・他の人間どもとは違い優秀な人間・・どうです?僕達と一緒に新世界を作ってみては?」
カスガはシュセイを見つめ、表情は笑顔だがきっぱりと「お断りだね」言う。
そのカスガの言葉を聞き、シュセイの顔から笑みが消える。
「あなたも醜い無能な人間の1人ということですか・・」
「そう言うことだ・・けれどお前達の思い通りにはならないさ」
少しの沈黙の後、シュセイが懐から出した鉄の剣が瞬きもしない内に、カスガの身体を貫く。
貫かれても今のカスガの体から人の様な血が出ることは無い・・。
腐りかけ少しばかり嫌な臭いのするオイル、そして人工的に作られた細胞が切られバチバチと音を立てる。
「何です?命乞いですか?」
「ふ・・ここまで生きてきて、今更命乞いなんかするもんかよ・・・」
痛覚など無く、ただ崩れていく体を感じながらカスガは言葉を紡ぐ。
「シュセイ、あんたがやろうとしている事は・・以前私自身やろうとしたことだ・・だがそんなことをしても結果は何も変わらない・・・」
「それは貴方だからでしょう?僕は違う」
その言葉に、カスガは怒りでも無く、悲しみでもなく・・ただ微笑むだけだった。
どれだけ悔やんでも、どれだけ憎んでも・・決して消せないもの。
どんなに変わらないと知っていても、変えようと思ってしまうこと。
「何を笑っているんです?これから死ぬと言うのに・・・」
「死ぬ?・・すでに機械となった肉体に死があるのか」
「・・・・」
「いや・・シュセイ、お前も人と同じ・・・」
「違う!僕は・・・・・まぁいいです、貴方の死が彼にとって意味があるのなら」
流れるはずの無い涙が瞳から零れ落ちる・・。
残酷な運命に生きるようにしむけた自分の罪・・。
その醜く可愛い子供達を置いて逝く自分の後悔・・・。
どうか願わくば・・彼ら光を・・・。
シュセイが去った後も少しのかすれた意識は続いていた・・。
「カスガ様・・・・」
しばらくしてカスガの傍らには隠れていたフェイが姿を現した。だがもうカスガにはそれを認識することも、喋る事もできなかった。
それからどれ位の時間が過ぎただろう・・。外が騒がしくなり、ドタドタと言う音と共に部屋へ入ってきたのは・・。もっとも深い運命を背負わせてしまった・・大切な子供・・。
「・・・・・カスガ!!」
それでもやはり私は醜い人間なんだろう・・。
それでも・・・お前が生きている事がこんなにも嬉しいのだ・・。
地獄に行く前に、マーサに謝らないとな・・・。
『・・・・・レキ
どうか・・・お前の未来に光があらんことを・・・。』
ドール >>>Fin
これでドールの物語は終わりです。
次回からは登場人物やあらすじのざっとした紹介を簡単に載せる予定です。
ご愛読ありがとうございました。




