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ドール  作者: りょく
番外編
32/38

第二話 機械と人の子

この街、シリウスに来てから10年の月日が過ぎた・・。

いつも軍からの監視付きの生活だったが、それなりに平穏な日々。


「うるさい!!母さんの事を悪く言うな!!」

「何だと!余所者のクセに!!」

騒がしい声が聞こえ、窓から覗くと子供同士が取っ組み合いの喧嘩をしている。

「・・またお前達かい!?」

「うわぁ!カスガだ逃げろ!!」

子供達は私の姿を見ると、蜘蛛の子様に走り去る。

「また、喧嘩?」

体のあっちこっちに擦り傷や打撲の後がある少年、だがその眼光は鋭く強い。


「スミマセン!!」

屋敷で手当てをしていると慌てて入ってきたのは、少年の母親のマーサ。この街の住人とは違う褐色の肌に、真っ黒なウエーブした髪の容姿だった。

「そんなに謝らなくてもいいさ、またあいつらが先にレキに手を出したんだろうしね」

「そーだよ!あいつらが悪いんだ!」

「レキ!まったくこの子ったら・・」

「べぇーだ!」

レキはカスガの屋敷を走って出て行く。それを見たマーサが小さくため息をつく。

マーサとレキは数ヶ月前にこのシリウスに辿り着いた親子。戦火に村を焼かれ世界を転々としていた所だったらしい。


マーサはまだ若くそして優しく賢い女性で、レキは感情を表すのが下手だが根は母を思う良い子だ。

「ここは良い街ですね」

「それは私がいるからだよ・・でもいつ戦場になるかはわからないがね・・」

「いつまでもこのような時間が続けばいいのですが・・」

窓ガラスの向こうは曇り、今にも雨が降りそうな空模様だった。マーサは軽く挨拶をすると、カスガの屋敷から帰って行った・・。

「カスガ様」

「フェイ、どうして人は戦うのだろうな・・まぁ私もその一人だろうが・・平和を祈る思いをいつか間違ってしまって


いたのかもしれない」

カスガの問いに機械人形でメイドであるフェイは何も答えず、ただカスガの表情を見つめるだけだった。

「いや、なんでもない・・フェイ、今日の夕食はなんだろうね?」


「なぁ、それ何?フェイに似てるけど」

レキは他の子供達と違って機械に興味を強く持っていた。それは戦場に出た父親を機械に殺されたからくるものかもしれないが・・。

「そうだね、フェイの兄弟かな」

「ふーん、ねぇカスガは何で機械を作るの?」

「さぁどうしてかな、強いて言うなら私が天才だから」

「はぁ!??自分で言うことじゃねーだろ!!・・・でもさ・・俺も機械作れる?」

「造りたいのか?」

「・・母さんはダメだって言うけど、強い力があれば母さん守れるし」

レキの考えは昔の自分と同じだと思った。力があれば何でも守れると思っていたあの頃・・。

「レキ、今は機械は兵器に使われる、だが本来機械はこのフェイの様に人と共にあるべきなんだ」

「??」

「機械にも心がある」

「心?そんなのあるわけねーじゃん!!あいつらは簡単に人間殺すんだぞ!!俺の親父だって・・・」

そう言うとレキは走り去ってしまう。

「レキには少し難しかったかな、まぁ私も人の事は言えない、まだ諦めきれず機械を造り続けているんだから・・」


「カスガさん!!」

「どうした??」

街の入口が騒がしく人が集まり、街人が次々にカスガを呼びにくる。

「怪我をした人が倒れているんです!カスガさんの名を呼んでいるので知り合いかと・・」


嫌な予感がした。


急いでその場に行くと一瞬誰だか解らなかった。よく見ると白衣を着た見覚えのある顔。けれど2年の月日で人はこんなに変わるものなのかと驚くほど、その人物の表情は老け、髪は白髪に近い姿になっていた。

「ヤシロか!?どうして」

「・・カスガさ・・ん」

腹部や足から大量の血が溢れ、顔色は真っ青、急いで屋敷に運ぶが出血がひどく傷口も深い。これでは・・・。

「僕らはあれからも・・兵器を造・・でも、僕らは間違って・・戦争を終わらすもんじゃなくて・・ただの人殺しの兵器」

「ヤシロ、もう喋るな!!」

「カスガさんこれを・・どうか戦争を止め・・皆、狂ってる・・」

荒い呼吸の中でヤシロはやせ細った腕で私の腕を握りしめた。

胸元から血で汚れた書類を数枚取り出し、震える手でカスガに手渡すと涙を流しながらヤシロから力が抜けた。

「すみま・・・せん・・あなたと・・・一緒に・・・」

最後に昔と同じように笑ったような気がしたが、ヤシロの亡骸は苦労の影が濃く残ってた。

「・・・ヤシロ」

心優しいヤシロがこんなになってまで運んできた書類には、新しい軍の考える兵器のデータだった。

「こんなものが・・・ただの兵器じゃないか!!」

人間の脳にチップを埋め込み、人体を改造した命令通りに動く人型機械・・さらに筋肉強化剤などの投与。あらゆる裏の研究についての記載してあった。

「ヤシロ、やはりあの時無理矢理にでも共に連れて来れば良かった・・」

それから5年の間、カスガはほとんど休む事も無く何かの研究に打ち込んでいた。


「カスガ様ソレハ?」

カスガが部屋に閉じこもってからずっと鳴っていた音が消え、フェイはそっと扉を開けると、憔悴したカスガの側に2人の者が横たわっていた。

「ヤシロの研究書類を元に造ったんだ」

「デハ、ソレハ機械デスカ?」

「いや、正確に言えば人間と機械の狭間のものだよ」

「機械ト人間ノ狭間デスカ?」

フェイは人型をしているとはいえ、やはり言葉やしぐさなど機械と解るが横たわっている3人の見た目はどこから見ても人間に見える。

「デスガ、カスガ様ハモウ造ラナイト」

「あぁ確かに言った、だが人は一度その手を汚してしまえば何も感じ無くなる・・この戦争も同じだ・・このままだとずるずると互いを殺し合い、それをなんとも思わなくなる」

「・・・」

「この子達はそんな時代を終わらしてくれると・・」

横たわる人型の閉じられた瞳にカスガが軽く触れると、瞳が開き2人が目覚める。1人はまだ眠ったままの状態だった。

「お前達の名前は、メグとライメイだ・・・ソラはまだ無理か・・」

最初に造られたのが浅黒い肌に黒い髪に瞳のメグ。男のライメイ、そして空と呼ばれる髪の長い女。

「どうだ調子は?」

「大丈夫です」

メグはカスガの問いかけにそう答えたが、ライメイはだるそうに体のあっちこっちを動かしている。

「2人ともしばらくの間はテストを受けてもらう」

「はい」

「マジかよ・・・」

ライメイは文句はいうものの、カスガの指示には従う。

2人は亡骸を元に作ったもの。体と脳は亡骸から使える部分を使い、足りない部分は人工的に作り出した。体の強化や自然治癒力の強さを高めるために体の内部は人工的につくられた組織など色々と作られている。

見た目からも人間と間違うほどだが・・それでも彼らが機械であることは事実で・・これから生きていくために多くの事を知らなくてならなかった。


「カスガ!あいつら何?」

あれから5年が経ち、レキの容姿もずいぶん大人になっていた。レキは外で子供達や家事などをする新しい住人を見つめる。

「機械と人間の子かな」

「機械と人間の子?何それ・・・ねぇあいつらも戦争行くの?」

「あぁ・・多分ね」

「じゃぁあいつらもやっぱり兵器なんだ」

「レキ、あの子達は違うんだよ、あの子達は」

「じゃあ何だって言うんだよ!俺には機械の造り方教えてくれねーのに、自分は兵器作ってんじゃんか!!あいつら戦争に行けば、人間殺すんだろ!俺の親父のように!!」

「レキ!!」

叫んで部屋を飛び出すレキを追いかける事は出来なかった・・。

「カスガ、あの子」

「聞こえていたのかい?あの子の言葉はいつもココ(胸)に痛いよ」

椅子にもたれかかりながらカスガは呟く、メグは自分を睨んで走っていってしまった幼さの残る少年の後姿を見つめていた。

「メグ、ライメイを呼んできてくれ・・話がある」


2人揃うとカスガは険しい顔で話始める。

「明日からお前達には戦場に行ってもらう、嫌なら無理にとは言わない・・それをお前達なら自分で判断出来るはずだ」

密かに研究室にいた頃の連絡線を使い、メグ達の事を話していたのが今日電報が届き、軍に加わってほしいという事になったのだ。

「行きます」

ライメイは無言で腕を組んで話を聞いていたが、ため息をついて同意のように頭を振る。

「・・そうか、向こうにはお前達の事は話してある、だが良い待遇を受けるとは思うな・・今、人は皆病んでいる、それをお前達に止めてほしい」

「解ってます、一刻も早い戦争の終結・・・それがあなたの望みなのでしょう?」

カスガは腕を広げ2人を抱き締める。

「お前達は私の子だ・・戦場に送りだしながら言っても意味無いが、私はお前達の幸せを願っている・・お前達が私を憎むようになっても」

「カスガ、そんな事言わないで下さい・・大丈夫ですから」

メグがそう言ってカスガを抱き締め返す、ライメイは何も言わずカスガを見ていた。

「それじゃ行って来ます」

「・・あぁ何かあればすぐに知らせ」

軍の使いが来て2人は車に乗り砂埃舞い上がる砂漠へと消えた。

「カスガ様ヨカッタノデスカ?」

「・・・」



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