番外編 第一話 物語の1ページ目
世界各地で戦乱が広がっていた・・。
戦乱は180年もの間続き、すでに何が正義で何が悪なのか解らなくなっている・・。
暗室の中、青白く光る液晶の画面に映し出される大量のデータ。周りには白い白衣を着た人間が数人、中に置かれているものに視線を集中させている。
「プログラム・・反応、脳波、起動全てオールクリアです!」
その言葉に数人の人間達の歓声があがる。
「成功だ!!」
「まさか成功するとは!これで我々の勝利間違い無しですよ!!」
歓声の中央にいるのは、白衣姿の淡いカールしたピンク色の髪を二つに結んだまだ若い女性。
「カスガさん!さぁ祝杯を!」
その人の名は、若い科学者のカスガ・ミヤと言った。
彼らが研究していたのは、人型兵器で従来のロボット兵士よりも、多くの情報と全ての能力を高めたものであり、この長い戦争の終結の為に研究し造られたものだった。
「これで我々の勝利と共に、戦争が終わる」
正直、その時私自身も戦争が終わると信じていた・・。
生まれた時から、ずっと灰に覆われた空、枯れた植物達の寝床の大地、水はヘドロを含み毒を吐く・・。
幼い自分に、祖母は空は青く、大地には花や木が咲き乱れたと・・ほとんど想像できない物語の様だった。
けれどその時思った・・そんな世界を見てみたいと・・。
その思いが、私の中でいつしか戦争を終わらせば・・また昔の様な世界になると・・。
だからこそ、この戦争どちらが勝っても負けても良かった・・ただ強い兵器を片方に作れば必ず戦争は終わると。
「カスガ・・何故こんなことを・・」
「姉さん・・・やっとあれが完成したの!これできっと戦争は終わるわ」
カスガの腕を掴み、険しい顔で見つめる自分とよく似た女性は、カスガの唯一の血縁者のハルヒ。
「本当にそう思っているの?」
「えぇ、終わらせる為に私は今まで研究してきたのよ?」
姉を喜ばそうと知らせたのに、姉は驚愕の顔でカスガを見つめる。
「・・力で戦争を終わらせるなんて・・力で力を押さえつけても、一時のものでしかないのよ!?」
「そんな事無いよ、敵を全て滅ぼしてしまえばいいんだから」
「・・カスガ・・大きな力は災いを呼ぶだけ・・どうしてそれが解らないの」
「じゃぁ今のままでいいの!?このまま戦争がずっと続いても!?」
姉はそれ以上は何も言わず、ただ疲れた様子で自室へ入ってしまった。
・・・姉さんは何も解っていない・・このままだと世界が先に壊れるのに・・。
姉さんへの反発なのか、私はますます研究に没頭する様になった。手元には、完成した人型兵器の功績が毎日の様に飛び込んでいた。
姉と言い合ってから、顔をあわせても話す事は無く。それから数ヶ月が経ったある日・・・。
「カスガさん!!」
血相を変えて研究室に飛び込んで来た、研究員の1人が自分の名を叫ぶ。
「お姉さんが!!」
その言葉に急いで研究室から、姉さんの住む場所まで行くと・・昨日までそこにあった小さな村が・・炭になっていた・・・。
「カスガさんこっちです!!」
小さい頃から、姉と二人で暮らしてきた粗末な家は半壊しており、おそるおそる中に入ると・・。
「!!・・・・姉さん!!」
家の瓦礫にもたれかかる姉、その胸には剣が一本刺さり・・そのままの姿でこときれていた・・・。
「どうして・・こんなことに・・・」
「我らが作った人型兵器が・・制御を失いこの村を・・・村人は全員・・・」
「制御を失い・・?」
その事実にただ呆然とするだけだった。
「・・はい、力を増すほど兵器の制御は難しく・・敵の妨害磁気を受けると特に・・」
抱き起こした姉の亡骸に刺さるのは、確かに自分が作り出した人型兵器の装備・・・。
しばらくの間休暇を取り、灰になった村で1人土で造っただけの素朴な墓を作り続けていたカスガの元に・・。
「カスガさん!大変です!!敵の磁気により我らの人型兵器は・・ほとんどが・・破壊されましたとのことです」
数ヶ月の間に、状況は変わり相手も同じような人型兵器を投入してきていた。研究室に戻ったカスガは毎日毎日新しい兵器の政策に打ち込んだ。軍の指揮をとっている者達から日々催促の連絡が入る・・・。
「カスガさん、少し休まれた方が」
「・・・大丈夫」
忙しく何かをしていれば、姉の死を考える事も無い・・。
けれど私はそれ以上に・・・逃げたかったのかもしれない・・。
自らが生み出した兵器によっての、姉の死から・・。
それから2年の月日を経て、新しい人形兵器が完成した・・まだ試作段階ではあるが・・。
「これらは前のタイプとは違い、攻撃・防御・記憶など人工頭脳を使用していますので大幅に性能が上がっています」
「もちろん全ての性能も制御できますし、攻撃においても強力になっています」
「なるほど・・ではすぐにでもこの兵器を使用したい」
軍の指揮官達はすぐに新しい人形兵器の使用を認めたが・・。
「待ってください!!これはまだ試作段階です!もう少し様子を見てから・・」
「そんな事を言っている暇が無いのは君も解ってるハズだが?カスガ」
「ですが!もしまた2年前の様な事が起こったら・・」
「2年前か・・君はあの事故でお姉さんを亡くしたそうだが、それは過去の事だろう・・今は戦場において一刻を争うのだ」
「それは解っています・・ですが!!」
「ではすぐに実戦に使用する、早く用意したまえ!!」
軍の指揮官達が研究室を出て行くと、1人の研究員が落ち込むカスガの元へ来る、まだ若い研究員だ。
「カスガさん、どうしてあんな事を?」
この研究はカスガを中心にし、やっとの事で新しいものが出来たっと言うのに、反対するなんておかしい。
「・・いや・・早く準備に取り掛かってくれ」
「は・・はい」
心配そうに声を掛けた研究員はカスガの元から離れて行く。
・・そう、これは私が研究し作り上げた・・戦争を終わらす・・・もの。
けれど、やはりカスガの予想は当たり・・機能が良くなったがいざと言う時の対処が難しく・・暴走した人形兵器が暴発し、多くの仲間が負傷した。
「この責任を取って貰う!!」
「そんな!試作段階だったものを使用すると決めたのは貴方達です!!」
軍の上部と研究員達は責任争いで、醜い姿をさらしていた・・。
「私が責任を取ります」
「カスガさん!!!」
「そうか、しかし君の功績を無視して殺す訳にはいかぬ・・そうだな謹慎処分としよう、もちろん研究は続けてもらう」
「ありがとうございます、ですが私はもう研究はしません」
「カスガさん!!?」
「研究をしない?なら、君は情報を多く知りすぎている・・死んでもらう事となるが?それでもいいのか?」
「覚悟はしています」
軍の者達は渋い顔をして、後の報告を待つように言うと帰っていった。
「カスガさん!どうしてあんな事を・・・」
以前もカスガの事を心配していた若い研究員が慌てて近寄ってくる。
「あいつらは私を殺す事は出来ないだろう」
「そんな・・解らないじゃないですか!?もし本当だったら」
「それなら私はそこまでだったと言う事だ・・けれど、人は欲深い・・何処までも尽きることなく」
「・・では、これからどうするおつもりですか?」
「ヤシロ、私はこの命が続く限りこの道から離れることは出来ないと思う・・・私が作った兵器によって死んでいった者達の怨念から逃げることが出来ないようにな」
「カスガさん・・」
「ヤシロ、あなたもここを離れる気はない?」
研究員も欲深い人間の内、この研究室も皆自分の欲に目が無い。だが若い研究員の中のこの青年ヤシロだけは違った、誰よりも優しい人間。
「道連れと言うわけではないけれど、きっとこれから更に戦況は悪化する、そうすればまた多く血が流れる・・あなたにはきっと辛いと思う」
しばらくヤシロは黙っていたが、神妙な面持ちで口を開く。
「すみません、やっぱり僕は残ります」
「そう」
「カスガさん、気を使ってくれてありがとうございます」
「いや、それじゃ元気で」
「・・・はい、カスガさんも」
それから一週間後、軍の報告ではやはりカスガの読み通り、戦火から離れた街へ幽閉となった。
その街は軍の本部から多少離れていると皆平和な暮らしをしている所だった・・・。
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