第四章 それぞれの思い
カスガが亡くなってからレキはいつもよりも、自分を追い込んでいる様に見える。
「レキ様・・少し休んだ方が・・」
っと、仲間達が気を使うほどの状態・・。
「ほらほらあんたの出番でしょ?」
心配そうにレキの表情を見ていたシンは、いつの間にか後ろに来ていたメグに突き飛ばされ思いっきり顔からダイビング・・。
「シン、大丈夫か?」
「痛ッあ・・だっ大丈・・」
「ううん、すっごく痛いって!レキ医務室に早く連れて行ってあげないと!」
大丈夫だと言おうとしたシンの口をメグは無理矢理ふさぎ、メグは大げさに言ってレキの背中を押す。
「・・・・ごめん」
医務室でレキに派手にぶつけた額と鼻を手当てしてもらいながら呟く。
「何故だ?」
「だって、邪魔しちゃってさ・・」
申し訳なさそうに小さな声で謝ると、レキは少しだけ表情を緩める。
「いや・・俺の方こそ周りに心配かけていたようだからな・・・」
レキと二人っきりなるなるのは久しぶりで、妙に緊張する・・。
窓辺に掛けられたカーテンが冷たい風でふわりと動く・・前より長くなったレキの前髪が一緒になびく。
出逢ってから1年も経ってないのに、すごく長いことレキと一緒にいる感じするとシンは思う。
・・前から思うけど・・レキと会う前・・ずっと前に俺はレキと会ったことがある様な気がするんだけどな・・。
初めて会った時から、レキに対して感じる何かはずっと前から感じてて、けど俺はレキに会ったって記憶は無い。
「・・なぁレキ・・俺はあの時、レキに初めて会ったんだよな?」
あの時とは、俺が人を殺していた時のこと。
「・・あぁ、あの時が初めてだろ?」
「そっか・・そうだよね」
・・期待はしてなかったけど・・何でだろう・・。
「そう言えば最近こうやって、一緒にいるのって少くなったよな」
「・・そうだな」
こうしてる今も戦火の火は広がり、誰かが死んでる・・・このままココに居たいっと言う言葉はシン自身、レキも誰しもが思ってる言葉・・・でもそれは決して言えない・・。誰かが止めなきゃならない。そしてそれはレキ達にしかできないこと・・・。
「レキってさ、風景とか見るの好きなの?」
「ん?」
「だって、よく窓の外見てるじゃん~それに外で1人空を見上げてたり」
「あぁ、昔ライメイが言ってたんだ・・俺達は籠の中の鳥だって」
「籠の鳥?」
「いつも籠の中で飼われてるってこと。けど俺は思うんだ、籠の中の鳥かもしれないがその籠の扉が開いていたとしても俺達は飛ばないんだよ・・何故だと思う?」
「え?・・・うーん」
「翼があっても空の大きさを感じるとすくんで飛べないから」
シンが考えていると、レキは苦笑混じりで答える。
「・・・その翼は本物の翼じゃなくて、蝋で作られた偽物だから・・それでも飛び立つ者もいるんだろうけど、俺はいつかその翼が溶けて落ちるのが怖いんだ・・さてそろそろ戻るか」
「・・・レキもいつか・・・」
「いや、太陽に近づきすぎる者は太陽に身を焼かれて死ぬ・・まぁ俺はそっちを望んでるのかもしれないけどな」
そう言ってレキはシンを見ずにテントの方へ帰って行った。
「レキ・・・・・」
・・空を・・太陽を欲したがばかりに・・太陽にその身を焼かれた・・・・・。そんなこと・・。
「コウキ、ココ~?」
「あぁ、あそこにレキがいる」
緑色でフワフワの髪と大きな瞳を持ったまだ幼い少年が聞くと、長身で無表情なコウキと呼ばれた青年が答える。
「やっと強い人に会えるんだ~」
「リンジェ、今回は遊びではなくシュセイ様の命令だ」
「わかってるよ!邪魔なレキ達を倒しに来たんだもん」
頬を膨らませて言うリンジェの頭を軽く撫でると、テントの方へ視線を向け車に装備してあった大砲を一発町に向かって発射する。的確に町へ砲弾することができたが、巨大な爆発音でも人が出てくる気配がない。
「どういう事だ?」
そう言った瞬間に、かすかに音がしてコウキが音に気づき後ろを振り返ると。
「レキ・・」
コウキとリンジェの後ろにはレキとシンが立っていた。
「うわぁ~何だよ」
リンジェは頬を膨らませながら、コウキの後ろに立つ。
「何だよはこっちの台詞だろ!?」
シンがリンジェに向かって言い返す。
「コウキ!あいつむかつく~」
「なっ何だと!お前の方が!」
「シン」
レキに名前を呼ばれ、シンは我に帰り口を閉じる。その間もリンジェはコウキの後ろでシンに向かい、あっかんべーをしていた。
「貴方がレキですね?・・なるほど、シュセイ様が貴方を仲間にしたいと言うのが、解る気がしますね・・リンジェ、帰りましょう」
「え!何で!?シュセイ様の命令無視するの~!?」
リンジェは驚き、声を上げる。
「リンジェ、この人は我々には倒せませんよ」
コウキはレキの瞳を見ながらリンジェに言う。
「一つ貴方に聞きたいことがある・・貴方はシュセイ様の考えを・・なさろうとしている事を知っていると思います、少なくとも今の時代よりシュセイ様の考える世界の方が、良いとは思わないんですか?」
コウキは冷たい瞳でレキに問う。
「・・・・・」
「・・・死の無い、永遠の闇・・それから我々機械人形達を救ってくれるのはあの方だけです」
答えないレキを見て、コウキはそう言った。
「リンジェ、行きましょう」
「え~でも、コウキ・・・」
リンジェは命令を無視すると言うより、帰る事に怯えているように声を出すが、怯えるリンジェの肩を抱いて歩き出す。
「ちょっほんとに行っちゃうのか!?レキどうなって?」
シンは2人の歩いていくのを見て、慌ててレキに言うがやはりレキは答えず。変わりに歩いていくコウキが小さな声で呟いた。
「シュセイ様と貴方のどちらが世界に受け入れられるか・・・興味があります・・けれど、どちらにしても・・・」
レキ達から姿が見えなくなると、コウキ達の前に1人の人物が現れる。
「誰です?」
そうコウキが言い終わる前に、視界が無くなり核となるチップを壊され、その人物の前に崩れ倒れる。
「コウキ!?」
リンジェは怯え逃げ出そうとしたが、相手の速度が速くダメだと思った時、リンジェの前に立ちふさがったのは・・。
「・・・・・レキ」
レキと目の前の人物が静かに睨みあう。黒髪で瞳には光が無く・・足元に広がる砂漠に水の跡が残っていた。
「どういう事だ?・・・空」
空と呼ばれた人物は答えず、その場からすっと消えるようにいなくなった。
「レキ!!こっこれって!!・・・・・さっきの・・」
砂漠の砂に埋もれるように、バラバラになったコウキ。そしてカタカタと震えるリンジェの姿。そして近くには水など湧き出てないのに、一か所だけ水たまりができていた。
「レキ・・水って・・・」
シンにも思い当たる人物がいる・・・・。
「でも、空が何の理由で・・・・・」
「シュセイ・・コウキの電波が消えたわ」
セラがそう言うと、足をくんで椅子に座り、机の上で手を組んでいるシュセイが顔を上げる。
「リンジェとも連絡が取れない。微弱だけど電波はあるようだけれど・・・」
シュセイは少しの間黙り、机の上にあったボタンを押すとしばらくして1人の人物が入ってきた。
「何か用か?」
「ライメイ、もう一度レキの周辺を探ってきてください」
「レキの?」
ライメイはレキの名に少しばかりの表情を変える。
「えぇ、コウキとリンジェの電波の受信が消滅しました」
「わかった、これから行って来る」
「ライメイ、今回は戦いではありません・・・そこの所を・・」
「わーってるって、それじゃな」
セラが言うと、ライメイはだるそうに答えて部屋から出て行った。
「セラ、準備は?」
「後、数日で準備は整います」
「そう・・・・世界の創造まであと少しか」
シュセイは楽しそうに言うが、その表情は泣いている様だとセラは思った。
「それでは、準備がありますので、私はこれで」
「あぁ」
セラはシュセイがいる部屋を出て、人の気配がしない廊下を歩いていると。
「セラ様」
声を掛けられ振り向くと、真新しい機械の体を持つ機械人形がいた。一言二言の話をすると、恭しく頭を下げて歩いていった。セラはその後姿をしばらく見てから、再び歩き始める。滅多に表情を買えない彼女は、何故か悲しそうに廊下に小さく作られた窓の外を見つめる。
「もうすぐ夜明けね・・」
セラはシュセイに会う前は、戦乱時で他の機械人形と同じように戦いの日々だった。
「何やってんだ!?機械の癖にサボるんじゃない!!」
人間の軍人が負傷を負った機械人形を足蹴にする。
「やめて下さい!修理をすれば・・・・」
仲間の機械人形達が必死に修理をしてくれるよう懇願するが・・。
「ふざけるな!お前らの様な古いタイプをして何の得になる!!」
「そうそう、多くの敵を倒してさっさと壊れてしまえばいいんだ!そのパーツで新しい兵器が作れるしな!」
高笑いをしながら、軍人達は去っていく。
「古いタイプか・・・」
すでに動かなくなった仲間に土を掛けながら、皆気を落とす。戦争に借り出された機械人形の半数は、それまで娯楽用に人間達と共に生きてきたもので・・戦うすべなど知らない・・・。それなのに人間達は戦わし・・そして・・。どんどん戦火は拡大し、多くの仲間が壊れていった。
「どうして、人は私達に感情を作ったの・・・」
セラは戦いは好きではない・・他の壊れた機械達も皆、好きで戦っていた訳じゃない。誰もが人間のために・・けれど人間はそれを当たり前だと考え、非道な事を押し付けてくる。
「戦うだけなら、こんな感情入らない・・ただの・・」
「ただの兵器で良かった?」
聞きなれない声にセラが顔を向けると、そこにはまだ幼い人間そっくりの少年が立っていた。
「まったく人間ってバカだよね~こんな生ぬるい戦いなんて無意味だよ」
「あなた誰?」
「僕はシュセイって名前、君は?」
「私はセラ・・・あなた見かけない人ね」
シュセイは楽しそうに、少し離れた場所から黙々と立ち上る煙を見つめる。
「あんなバカな人間達に使われるなんてゴメンだからね・・・・ねぇ、一緒に来ない?僕と」
正直言うと、セラはシュセイが怖かった・・人間でも無い、そして自分達機械人形とは何処か違うシュセイを・・。
「何をするの?」
シュセイはまた面白そうに笑い、セラに向かって手を伸ばす。少しの躊躇いの後、セラはシュセイの手を取ってしまう。
「僕は新しい世界を造りに行くんだよ・・・・」
今でもシュセイのあの時の表情は頭に残っている・・・。
「セラ様、すぐにこちらに来てください」
いつの間にか、近くにいた機械人形が言われ窓の外から視線を外す。
それからシュセイと共に生きてきて、ようやく夢が現実になろうとしている・・。シュセイの真意は誰にも解らない、けれど私は・・・シュセイの歩く道が私の道・・・・。
「それが私の覚悟・・・」
「え?何か言いましたか?」
「いえ、何でも・・・」
それが光のない世界でも・・・私は進まなければならない。そうシュセイの手を取った時に決めたのだから。
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