第二章 月
シュセイの目前に広がっているのはもくもくと立ち上る煙と真っ赤な炎、そして人間の悲鳴と亡骸。
「あ~あ、新政府の軍隊もこんな弱いんじゃつまんなーい」
リンジェは口を尖らせて文句を言うと、横に立っている長身の男が目線でたしなめる。
「だって~人間なんて弱いんだもん」
「リンジェ、計画のためです」
各地の大半はシュセイ達の手に落ちた、新政府軍も逆らう事は出来ず最近はコンタクトをとろうとしてくるものが多い。
「そろそろかな」
シュセイの言葉に3人は表情を変える。
「やった~!やっと遊べる~~♪」
目覚めたレキにはどこにも異常が無かったので、仲間達とこれからを話し合い、シリウスの街からは離れ、シュセイの手の者に落とされた廃墟の街に拠点を置く事にした。
「ほんとにもう大丈夫なのかい?」
シリウスを離れる時、珍しくカスガはレキに聞いた・・。
「あぁ心配かけた」
「レキ、お前はもう一人前だ・・仲間の荷を背負う時は誰にでもある・・だが自分の生きる道も大切な事をきちんと知っておくようにな」
「わかってる、それじゃ」
・・レキとカスガさんってやっぱりお互いを解ってるんだろうなぁ。シンは少し羨ましく感じた、自分が何者か何処から来たのか・・詳しい事は何一つ覚えていない。
「シン、どうした?」
「え?ううん何でもない」
話をまったく聞いていない上の空のシンを見て、レキは疲れているのかと思ったようで休むように進めるので取りあえず部屋の方へ移動はするけど・・。
「最近では各地に前の戦乱で功績を上げた者達が、シュセイの元にぞくぞくと集まっている様です」
レキの元には、シュセイを止めようと集まった者、自分の道を彷徨う者の少数が集まっているだけだった。
最初は多くいた仲間も、シュセイ達が行っている周波数は世界中に拡大し、ほとんどの機械人形はその影響でシュセイの元に行くか、戦意喪失した者が多い。
「西の町一件と南の町三件が、すでに連絡が途絶えました」
「クソッ、あいつら皆殺しにするつもりなのか!!」
日に日に悪化する現状に皆苛立ちが見える。
「レキ様どうするんですか!?」
皆の視線が集まり、レキが口を開こうとした時、大きな物音・・足音に気づき見ると。
「あ!」
「ゼェゼェ・・・あのクソヤロー!!」
急に入ってきて、扉を破壊、入ったと同時に暴言・・・。
「メっメグさん・・・」
シンは慌ててメグの後を追って作戦会議をしていたレキ達のいる部屋に入ると、シーンとする部屋の中、シンが何とか声を掛けるとメグの名前に周りは少しざわつく。
「メグ?どうしたんだ?」
「どうしたもこうしたもねぇーよ!あのヤロー・・・あ゛~ムカつく!!」
「レッレキ・・」
「メグが切れるとこうなるんだよ」
平然と言うレキだが、メグはその間バタバタと暴れ叫んでいた。
・・切れるとこうなるって・・この間は確か酒乱とかっても聞いたけど・・。
「おいメグ」
レキがしばらくしてそう言うと、メグは正気に戻ったように咳払いを一つして近くにあった席に座る。
「あっレキ・・・ちょっとイラついてて・・」
急に態度が急変して俺も驚いたけど、やっぱりレキはしれっとしていた・・・慣れてるんだなぁ・・。
「メグお前、ライメイの所にいたのか?」
「・・・・えぇ」
ライメイの名に驚く周囲だが、それ以上にメグの名に驚いていた。
「あの・・あなたってメグ・・」
「そうよ、お察しの通りだと思ってもらって構わないわ・・・それよりレキ、アイツ本気よ」
さっきの表情とは変わり、メグもレキの様な顔になる・・・それはドールの顔・・。
「どうする?他のやつらも数人集まってるし、形成的には・・・」
「行かないわけにはいかない、俺達は平和の世を作ってきた・・・もう二度と表には出ないと思っていたが、やるべき時にやらなかったら後悔が残る」
レキは自分だけと言わず、俺達と言った。
「確かに相手は同じ機械人形同士、今まで人間に虐げられ差別されてきたのは事実・・・だが、個々の意識と平和を願いここに集まった・・・俺達はシュセイを止める」
レキの言葉に集まった者達の意思が固まる。
「「おーーーーーーー!!」」
「・・・それじゃ皆の意思も固まったようだし、本格的な準備をしなくちゃね」
生き生きとし出したメグの表情に少しばかりの冷や汗が出たが、有名な指揮官なだけあってシンの目からみてもさすがだと思う。
「シン」
シン自身もメグの命令・・・もといい、メグの指揮で作業をしていた。
「レキ、どうしたんだ?」
レキの所へ行くのはいつもシンからで、レキが自分の所に来ることはほとんど無いためシンは少し驚く。
「いや、ちょっとな・・・仕事中なら悪い」
去っていこうとするレキに、今から休憩するところだと言う。
「今日はすごい満月だね」
「あぁ・・・・」
夜空には太陽の様に大きく淡い光を放っている。
「レ・・・はっハックション!」
静寂を一瞬にしてシンの大きなクシャミが響く。
「あっごめん!」
「これでも着てろ」
「あっうん・・ありがとう」
一瞬シンの脳裏に浮かぶ光景・・。ボロボロのマントがなびく・・・その人物は・・・・。
「シン?」
「え?あっごめん、ぼぉーっとしてた」
・・今の何だったんだろう・・・見たことのない光景なのに、何か懐かしい感じが・・・。
「大丈夫か?疲れてるんだったら、もう休め」
「ううん、平気だって!コレくらい倒れる俺じゃねぇって」
「・・・ならいいが」
レキの横顔がいつもより影が差しているように思えて、シンはレキの頭を抱きしめる。
「・・・シ・・ン?」
「前にカスガさんに聞いたんだ、レキが小さい頃何かあるとお母さんにこうやって抱きしめられてたって」
「母さんか・・・・シン・・お前には話しとこうと思って」
「何を?」
「俺がドールになった本当の理由」
「でも、それは前に・・・」
シンが言いかけたのを軽く制止、レキは星空を見上げながら話し始めた。
「・・・・・・・俺は怖かったんだよ、戦乱で父親を亡くし、母さんと戦火を逃げる毎日・・」
赤い炎が天高く燃え、死臭とすべてが燃えた臭いが漂い・・・。
生きる希望を無くしつつある人間達は狂乱する・・・。
「シリウスの町もよそ者はあまり受け入れてもらえない状態・・・何とか町外れに住んで、そんな時ここも戦火に巻き込まれた」
レキは何かの本を読み聞かせているように淡々と話していく・・。
「家にも兵が乗り込んできて、母さんを殺したんだ・・・俺はただ怖くてそれを見るだけで・・」
シンはレキの肩に触れると、微かな震えを感じた。
「そのまま母さんを置いて・・・逃げたんだ・・・俺が町に辿り着いた時は町も戦火に巻き込まれ、周りに見慣れた人間の躯が転がっている・・・憎しみと恐怖が俺自身を支配し、何者にも負けない力を欲した」
レキは大きく一息ついて。
「その願いの通り、強い力を手に入れた・・けれど結局俺は壊しただけ・・・・この手で手に入れたものなんて何も無い・・・」
泣きそうだとシンは思った。
レキが本当は憎しみや恐怖でドールとなったのは何となくわかった・・・機械人形達も人間に虐げられたりとしてきた事がつもり、今のこの戦いを生んでいる・・・・。
「・・・・俺はレキの苦しみを全部解ってあげることとはできないかもしれない・・・けど、レキは立派に色々なものを手に入れてきたよ・・ほら!」
シン達が立っている丘の上から見下ろすと、仲間達の灯火が見える。
「メグや皆や、カスガ・・そして俺だっているし!レキの元に集まったのは皆違うかもしれないけど、これはレキの歩いてきた道が間違いじゃなかったって思うと思わない?」
「・・・・・そうだな」
「それに、今のレキだから俺はきっと・・・好きだし、一緒に歩いて行こうと思うんだ」
俺がレキにあれこれ言ってるうちにだんだん解らなくなってアワアワしてるとレキの表情が和らぐ。頭をポンポンと軽く小突かれ、俺達はまた寝転がって大きな月を眺めた。
その柔らかな光が俺達の行く末を照らしてくれてるように思えて・・。
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