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ドール  作者: りょく
第一部
22/38

第十八章 動きだす影

「レキ様、これを見てください」

仲間が持ってきた衛星テレビには新政府の役人が最近の一連について話しているニュースが映っている。

『近日各地でテロと思われる反抗が行われ、多大な被害を・・・新政府ではこのことに・・』

「駄目だな・・・新政府には奴らを止める力は持っていない・・」

「それに政府の方に力を貸している者もいるだろうね・・」

レキとカスガの言葉に皆言葉が無くなる。

「別にそれでどうなったわけじゃないじゃん、俺達は自分たちができることをするだけじゃん!」

シンが大きな声で言うと、一瞬その場はシーンと静まったが・・皆口々に言い出す。

「そうだよな・・・俺達は勝つために戦う」

「新政府のやつらはまだ7年だ・・これからだ」

「ほら、レキ準備準備」


それから数日、数週間と経ち・・政府からの情報も日増しに厳しくなってきていた。

「ここもか・・・」

悪化する毎日の中、レキ達はガーディアルの元へ出発した。

「レキ・・アキトの事、俺少し聞いていたんだ」

ギルは少し言いにくそうに言葉を繋ぐ。

「アキトの母親は貧しい村出身だけど父親・・アキトの父親は・・」

「理事・・・」

「知っていたのか!?」

「知っていたわけじゃない・・ただ何となくそんな感じがした・・」

アキトが毎日勉学に励み、そしてそれでも尚・・・誰かに認めてもらおうとしていたのを感じた。その視線の先にいた人物も・・・。

「そっか・・・俺達はここに残って、カスガさんの手助けをするよ・・・気を付けてな」

ギルとミツキは涙が出そうになるのを堪えた顔で言い、そして一歩後ろにカスガが立っていた。

「カスガ、皆で帰ってくるからね!」

レキはカスガの顔は見たが、何も言わなかった・・その変わりかシンは元気に言って別れた。


出発後も情報は険しくなるばかり・・。

「西側はほとんど落とされた・・・政府の奴らは何してんだよ!!」

イライラとした口調があっちこっちから聞こえる。

「・・・レキ食事持って来たよ・・・あれ?」

簡単なテントの布を捲り中を覗くと、レキの姿は無くて・・。

「シンさんどうしたんですか?」

シンがウロウロしているのを見て仲間達が声を掛ける。

「レキ見なかった?」

「いえ、見て無いですが・・どうしたんですか?」

「ううん、何でも無いよ」


『破壊兵器・・・・・例え心を持とうがお前の性ですべては・・・』


レキの脳裏にはまたあの声が聞こえる・・聞き覚えが無いのに・・どこかで聞いた事があるような・・・。

昼間は灼熱の砂漠・・夜は極寒と思えるほどの砂漠・・・。レキは砂漠に寝そべり満点の星空を見つめた・・・。

「レキ!!やっと見つけた~」

声がしたがレキが何も反応しないのでシンが文句を言いながら足音が近付いてくる。

「レ~キ、寝てるの?」

満点の星空から一瞬にしてシンの顔で視界はいっぱいになる。

「シン」

「何だ起きてるんなら返事しろよ~探したんだよ」

「何で?」

「へ?」

「何で俺を探してた?」

「いや、ご飯って思って・・どうしたんだよ?」

「・・・・じゃぁどうしてここにいるって思った?」

珍しいレキの質問に、いつもと違う雰囲気にシンは戸惑いながら返事をする。

「え・・レキって結構こういう風景とか好きだろ?あんまり人ごみとかは・・・好きじゃないみたいだし」

「逃げたとは思わなかった?」

「はぁ?レキはそんな事しないだろ?」

「・・・」

「俺はレキのこと、知らないことが多いけど・・・少なくとも俺はレキはそんなことはしないって思ってる・・一般的に言ったら・・性格とか功績とか、人間性とか・・・そういう風に言うのかもしれないけど!」

最後の方はなんか恥ずかしくてぶっきらぼうな言い方になったけど、レキは何も言わずにシンの言葉を聞いている。

「でもさ・・・それも確かにあると思うけど俺は違うと思うんだ」

「違う?」

「うん・・・何て言ったらわかんないけど・・えっと・・強いと思う・・・・けど、最強とかそう言うんじゃなくて・・あぁ~」

「ははは」

急に笑い出したレキに驚いてシンは視線を向ける。

「ありがとなシン・・それじゃそろそろ帰るか?」

「う・・うん、レキ」

今度はシンがレキの手を握ったのでレキが驚いて視線を向ける。

「あのさ、もうちょっと星見ていかねぇ?ここすごい静かだし!」

「寒くないか?」

「う~ん、あっ!引っ付いてたら暖かい・・・って・・」

レキは驚いた顔でしばらくシンの顔を見ていたが、少しだけ顔を緩め砂漠の地にもう一度腰を下ろす。

「そうだな」

そう言えばレキが声を出して笑ったのってさっきのが始めてだよな・・。


あれからしばらくレキとくだらない話をして、テントの方へ帰って眠りに付く間際。

「明日は皆帰って来れる・・・レキも俺も・・一緒に」

そう祈りながらシンは眠りに付いた。次の日、ガーディアルに向かって再び車を走らす。


「シト?」

「はい、ギルさん達が調べていたのですがさっき情報が入りまして・・ガーディアルの方でシトらしき人物を見たと・・シトと言う人物は一体?」

「シトはガーディアルの理事達の気に入りだ・・・各地で理事に言われ何かをしていた様だが・・この様子だと」

「この様子だととは?」

「・・・いや何でもない、次の指揮を伝えに行ってくれ」

仲間は少し怪しげな顔をしたが、レキが言った通りに連絡を伝えに言った。

「レキ、何でもないわけないのに・・何で言わなかったんだ?」

「今は目の前にある問題はガーディアルだ・・不確かな情報に振り回される状況じゃないだろ」

「でも・・シトって奴が何か罠を仕組んでいたら・・理事とかと組んでたりしたら・・・」

「それは無いだろう・・シトは俺がガーディアルに居た頃からガーディアルの忠誠心など無い輩だ・・もし罠を仕組んでいたとしても」

「行くって?・・・・レキ・・でも」

シンが言いかけた言葉をレキは強引に終わらし、仲間の元へ行ってしまう。

確かに今の状況が緊迫したものだって解ってるけど・・何か引っかかるんだよな・・・・。

「あ~駄目だ!俺がしっかりしなくっちゃ!!明日にはガーディアルに着く・・・レキと一緒に帰るんだ!」


シリウスからガーディアルまで来るまでに、政府の幹部が次々に狙われていた・・理事は政府との繋がりも深いだろうから、反対勢力を狙ったとしてもこう次々と幹部を狙うなどおかしい・・。

大きな爆発音が響き、少し離れているがもくもくと何本も立ち上る煙は、目的地のガーディアルからだ・・。

ガーディアルの周辺も敵がいると思ったがなく、すんなりガーディアルまで来れたのだが・・・。

「レキ!!」

レキとシンは、ガーディアルに乗り込もうとして近くまで来ていたが、誰かに・・先を越されていたのか・・。

「レキ・・これ・・どうなってるんだ?」

戦争が終わったと聞いても、この光景を見る限りでは・・今だ戦争が続いている様にしか見えない。次々に打ち込まれる大砲や銃弾、どこから来たのか大勢の機械人形・・。

「それに・・この音、何だろ?」

何の音かはわからないが、キィーンと微かに聞こえる音。嫌な音・・・。

「これが機械人形を操っているんだ・・低周波だよ」

「この音で?」

「あぁ、プログラムが簡単なほどその影響は強くでる・・逆に強い者もなんらかの影響は出るがな・・」

「レキも?」

レキはガーディアルの方をから、シンの方へ顔を向け。

「俺は普通じゃないからな・・お前こそ大丈夫か?」

「うーん、俺も平気みたい」

レキはシンに少し柔らかい表情を向けたと思うと、再びガーディアルの方へ顔を向ける。

「シン、お前はここにいろ」

「え?レキ行くんだろ?俺ももちろん行くよ!!」

銃弾が飛び交う中を、切り抜けながらなんとかガーディアルの傍まで来れた。外は仲間達が援護をしてくれている手はずだ・・けど、俺達には効かなくても・・この低周波の影響が無いとも言えないだろう。

「シン、着いてくるなら・・・ここからは敵陣だ気をつけろ」

「う・・うん」

ガーディアルの中はシーンと静まりかえり、以前来た時とはまったく別の場所の様だった・・・。人一人居ない異様な空気がガーディアルに満ちている。

「・・・誰もいない・・・敵も・・、そう言えば、生徒達はどうなったんだ?

「あぁ、それは大丈夫だ」

レキが短く言うと、どこからか足音が聞こえる。

「待ちくたびれたぞ?」

現れたのは全身頭から靴まで白ずくめのシト、ガーディアル内でも何度か見たことがありどこか得体の知れない男だ。

「シト・・」

「まったく、俺が直々にお前を倒しに来たんだよ、かのお方のためにな!!」

そう言うと同時にレキに襲い掛かってくる。両手に持たれた刃、そして何よりも人並みはずれた動き。

「気付いたか?どうだ、いいだろう?」

自慢そうに自らの改造された肉体を俺達に見せる。盛り上がった筋肉は不気味な形をし、膨れた血管、そして体のあちこちにパイプが伸びている。

「どっ、どこがいいんだよ・・・」

ぼやきに睨まれて思わず、シンはレキの後ろに隠れる。

「新しく生まれ変わったのさ、あるお方の力によってな!間抜けな人間どもとは違う、新たな世界へ導いてくれるのさ」

・・何だよコイツ・・頭おかしいんじゃ・・ってか、絶対おかしい!!

「お前はこのガーディアルの手先ではないのか?」

「はぁ?ガーディアル?冗談じゃない、言っただろ?俺は間抜けな人間どもにはうんざりなんだよ・・だから邪魔なお前らをここで倒させてもらうぜ!!」

素早い動きで攻撃してきたシトだが、レキは刃を受け止めて膝で素早く折る。

「貴様・・・・・」

飛んだ刃の先がシトの頬をカスルと流れ出たのは緑色の液体。衝撃で数個のパイプに傷が入ったそこから異臭が漏れ出した。

「出来そこないのお前は俺には敵わないさ」

シトを残し俺達は静まり返ったガーディアル内の頂上へ向かって移動し、一つの扉の前にまで来た。

「行くぞ」

「うん」



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