第十七章 死に場所
旧軍事施設から爆発音が連続で鳴ると、もくもくと煙が立ち昇る。
「ライメイ!こんなに盛大に爆破していいの?」
「ん?あぁ、まっこれくらいやらないと目立たないだろ?」
そう言うとライメイ笑いながら仲間達の所へ行ってしまう。
旧軍事施設とは言っても、戦乱が終わって7年・・未だ政府の手は届いてないようで、武器や金品などが多く残っている。
「こんな状態じゃ、いつまで経っても整備の行き届いた治安なんて遠いわね・・・それに・・」
ライメイの後姿を見ながらメグは嫌な感じを受ける。何かが始まろうとしてる・・それとも終りが近づいているのか・・・得体のしれない不穏なものを・・。メグはそんなことを思いながら空を見上げ背伸びをする。
「ライメイ!次は何処行くの?」
さてどうなるかわかんないけど・・とにかく私はレキの味方なんだから!!
話し合いの結果、一先ずガーディアルの動きを見張ることと同時に政府の方も調べる情報集めに重点をおくことにした。
そう決めてから人の出入りが激しくなり毎日とっかえひっかえの情報で俺たちは目の回るような忙しさだった。その間に少し休憩をとっていたレキの耳にシンの声が聞こえるので言ってみると・・。
「レキ!早く早く!」
騒がしいと思っていた玄関の敷地には入りきれないほどの人・・正確には機械人形達が集まってきていた。
「レキ・D・キサラ様とお見受けいたしますが・・?」
その中の1人がレキの姿を見て話しかけた・・。
「・・・・そうだが・・」
レキが答えると同時に、皆の口から感激の悲鳴が上がる。それにシンはビックリしながらレキの傍に来ると、レキを見上げる。
「我々はあなた様と共に戦うためにやってきました!」
「私達は皆、自らの意志でこちらへ・・どうか共に戦うことを許してください」
口々に戦いに連れて行ってくれという機械人形達、頼もしいはずだがレキの表情は暗かった・・。
「・・・レキ?」
「おや・・すごい人数だね、とにかくこっちへおいでそのままそこにおられちゃあ目立つからさ」
カスガは機械人形達にテキパキと指示をする、1人がカスガの名を呼ぶと再び歓声の声が上がった。レキもカスガも機械人形の中では有名なんだろうなぁっとシンは思った。
機械人形達がとりあえずの自分たちの場所を決めて辺りが少し静かになるとシンはレキと共にカスガの屋敷に戻り、情報収集の作業を続けたが・・。
「・・やっぱりレキは嫌なのかなぁ・・一緒に戦うの・・」
「シン」
「なっ何!?」
ぽつりと言った自分の言葉がレキに聞こえたのかと驚いたが、それには触れずレキは壁にかけてあった上着を羽織る。
「あと任せる・・」
「ちょっ・・レキどこ行くんだ?」
「少し風に当たってくる・・・」
そう言うとレキは部屋から出て行ってしまう。町の方は、戦火が近くにまで及んでいることもあり町の人達の半数以上はこの町から一時避難して行ったため、ここんところは寂しかったが、今日はあっちこっちで機械人形達の声が聞こえて賑やかだ。
「おや?・・・レキはまたどっかに行ったのかい?」
「・・・・なんかレキの様子おかしかった気がする・・」
カスガは大量の資料をさっきまでレキがいた机に置き、賑やかな窓の下を眺める。
「・・・あの子のことだ、自分でなんとかするさ」
「でも・・・だから、不安なんです・・・・レキは1人で抱え込み・・すぎるから」
そして事件が起こったのは次の日の夜明け前。
「どうしてです!!?」
大きな声が聞こえシンは目を覚ます。
「カスガさん!何があったんだ!?」
シンが近くに居たカスガに何があったか聞こうと近寄ると、かなり険悪な不陰気・・・。
「答えて下さい、レキ様!!」
「そうです!どうして私達が戦う事を許してくれないのですか!!」
レキはしばらく黙った後、ゆっくりと口を開く。
「・・・・・あんた達には生きようという姿が見えないんだよ」
シンは何を言ってるんだと思ったが、あからさまに機械人形達の表情が変わった。
「何を言ってるんです?我々は・・」
「・・・・死に場所を探している者に手を貸されても困ると言ってるんだ」
「なっ!!あなたは私達を侮辱するのですか!?」
「侮辱?ならば聞こう、何故ここにいる?」
「あなた様と共に戦うためです」
「では、何故戦う?」
「それは、もちろん機械と人間の共存のため・・・」
「・・・・・この戦いで生きて還ってこようと誓ってきた者は?」
機械人形達は皆口を閉ざしてしまう。重たい沈黙を肩腕の無い古い型の機械人形がぽつりと喋る。
「私達には・・・もう戦うすべしかないのです・・プログラムの性で自ら命を絶つこともできない・・・」
「だから俺にお前達を殺せと?」
「・・・・・・・・・・・・・」
「何とか言ったらどうだ?」
「レキ・・もういいよ」
カスガはレキの方に手を置き、そう言うとレキはその場に背を向けて歩いていった。
「すまないね、あの子は不器用な生き方しかできない子なんだよ・・」
「やはりレキ様も・・・我々を救うことはできないのですね・・・」
機械人形達は口々にレキの悪口を言い出した・・・。
「何言ってんだよ!!何もわかってないのはあんた達の方だろ!!レキは今まで苦しんで、今も苦しんでる・・人と機械の狭間で・・あんた達こそ何もわかってないんだ・・・・」
「シン・・・」
「レキに戦争で奪ってきた命・・・それに苦しんできたレキに・・どうして自分達を殺してくれなんていうんだよ!!・・・・そんな酷い事ってないだろ!!」
シンはそう言うとレキを追いかけた。
シンがいなくなるとシーンと静まり返った広場に、1人が話はじめた。
「私は間違っていました・・・いつもどこかでドールであるレキ様には私にはない力を持って、いつか清浄なる道へ導いて下さると・・・」
「俺もだ・・・レキ様はいつも我々のことを思ってくださっていた・・」
「そうだ・・レキ様こそいつも自分達のこと心配し・・あの戦乱の中を導いて・・・」
パンパンパンと大きな手を叩くカスガは注目を呼び掛ける。
「ほらもうくよくよ悩まずに、答えが決まったんなら早く準備にかかりな!!」
「・・・・準備・・・?」
「戦いに行くんだろ?・・・・もちろん生きるための戦いにさ」
カスガの一言に、吹っ切れたように皆準備を始めた。
「レキ・・・」
レキを探していたシンは見つからないため、部屋へ一旦戻るとレキがいた。
「シン、お前はココに残れ」
深い呼吸をしてレキはシンの顔を見ずに言った。
「・・・・・俺はお前を守ることができないかもしれない」
少しの双方の沈黙のあとシンはレキの頭を殴った。遠慮なしに、本気で。
「俺は別にお前に守ってもらおうなんて思ってない!!・・・そりゃ俺はガキだし、弱いけど・・・俺はレキと一緒に戦いたいんだよ!!気持ちだけじゃ俺がレキの方を守るって思ってるくらいだ!!!」
シンの声が響く。レキは頭を押さえたまま言葉を発しないので・・シンは少し声を小さくして言った。
「・・・俺が言いたいのはそれだけだから・・・レキの足手まといになることは判ってる、だからレキが残れって言うんだったら・・俺は・・」
シンは言葉を言い終わる前に途切れた、それはレキがシンを抱きしめていたからだ。
「ほんとお前には敵わないな」
呆れと苦笑交じりにレキはシンを抱きしめる。シンはムッとした感情を向けると、レキはシンから顔をあげる。
「なっ!?どうせ俺が言った所でダメだと思うけどな、シン、お前の道が俺の道にあるなら・・俺の道を開くのは案外お前かもしれないな」
「え?」
「行くぞ」
呆然とするシンに、レキは扉を開け手を出す。
「行くんだろ?」
「当たり前だ!!」
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