旅行の前に商会の斡旋をしてもらった日のこと
部屋に帰ってきたら早速今回のダンジョン籠りで採ってきていた薬草類を使って調薬をしていく。
しばらくすると夕飯の時間になったので区切りをつけて終わる。
1階で夕食をとったので寝ることにした。
次の日の朝、いつもの時間に起きる。
今日は朝市に行きたいので時間になるまで暇をつぶす。
時間になったので認識阻害を軽くかけて朝市に向かう。
朝市では新鮮な生のまま食べられる野菜を選んでかなりの数購入していく。
ぶらぶらと回りながら目的のものを買い終えたので、次は昨日買い忘れた常備薬の類を買いに行く。
大通りから少し路地に入ったところにある薬屋で、自分で調薬できるようになるまで通っていた店だ。
「いらっしゃい。」
ギルドカードの確認をすると。
「おや、まあ、久しぶりだねぇ。もう随分来てないから、どっかに移動したもんだと思っていたよ。」
「いや、自分で使う分のポーションは作れるようになったから、足が遠のいていたんだ。」
「そうかい、そうかい。ポーションだけでも調薬できる子が増えるのはいいことだねぇ。それで、何が必要になったんだい?」
「少し遠くに旅行でもしようかと思ってな。旅で必要になることが多いものを買いに来たんだ。」
「そうだねぇ、解熱鎮痛薬に整腸薬、胃腸薬に風邪薬はてっぱんだね。馬車なんかの乗り物には乗るのかい?」
「いや、走っていこうと思っているが念のため酔い止めもくれ。」
「そうかい。じゃあ、酔い止めとあとは目薬もいりそうだね。目が軽い充血をしたと思ったら差すんだよ。差し過ぎは良くないから気をつけてね。」
「ああ、目薬以外はそれなりの数をくれ。」
「数がいるとなると瓶ごと売った方がいいかね。ちょいとばかり高くなるよ?」
「ああ、構わない。」
「まあ、こんなものだね。じゃあお会計はこれね。」
「これで頼む。」
「はいよ。うん、ぴったりだね。じゃあこれ、お品物ね。」
「たすかる。」
そういってものを収納ににしまう。
「気をつけるんだよ。」
婆さんの声を背に店を出た。
まだ昼には早いが残りの時間は調薬をしたいので適当な屋台飯を買い、宿に戻る。
飼ってきた屋台飯を食べ調薬をし始める。
夕食の時間になったので1階に下りて飯を食い部屋に戻って寝た。
次の日、いつもの時間に起きて、ルーチンを済ませ、時間になったら1階に下りて飯を食う。
食べ終えたら皿を返し、部屋の鍵を主人へ返す。
そうしたら認識阻害を軽くかけて宿を出る。
いつもの鍛冶屋へ行きメンテナンスを頼んだものをとりに行く。
ギルドカードの確認を済ませ、預かり証を出し、ものを受け取ると収納にしまい、店を出る。
いつも行く検問所とは逆の方向にある検問所に向かっていく。
検問所でギルドカードの確認を済ませて町を出ていく。
今日からいよいよ少しばかりの旅に出る。
こんなに移動するのは初めてのことだ。
もともと育った孤児院のある町から少しばかり移動してきたのがいままで住んでいた町だった。
だから多少の距離は移動したことがあるがそれだけだ。
それ以降はずっとあの町とメインダンジョンを行き来するばかりだった。
初めての大移動に少しばかり緊張する。
まあ、いっても俺の身体強化などを使って移動する速度は、少し力を抜いた状態で時速50kmくらいあるようなので、多少遠回りの道であろうとも問題さえなければ500kmほどの距離なら10時間で着く。
むしろ馬車を使った方が遅いのである。
問題のほうも、俺一人で走っていくのでいくらでも回避できるし、最大の問題である魔素濃度のほうも買ったばかりの小型の魔素検知器があれば避けて通ることができる。
とはいえ、普通に普段から使われている街道を通ればそうそう魔素濃度が濃いなんてことはない。
ただし、魔素濃度は稀に分布が変わることがあるらしいのでそれに遭遇した時のためのものだ。
あくまでも念のための装備である。
こういう念のための備えをしていないときに限って異常事態というのは起こるものだと思っているが故の準備なのだ。
体力のほうも最低でも1日中走り回っても大丈夫なように昔から強化してきているので問題ない。
俺は認識阻害を強くかけ、スキルや魔法などを使用し、小型の魔素検知器と錬金術で作られた地図を手に取って軽く走り出した。
時折地図や検知器を確認しつつ、人や魔物などを避けて進むこと8時間、地図に載っている港町が見えてきたが行きは寄らずに、先に俺が住んでいる町とは反対方向の町に行くつもりだ。
さらに4時間後、暗くなってきた。
雨は降りそうにないので人が通らないような場所でダンジョンと同じように野営をとる。
その後何事もなく朝を迎えた。
いつもの時間に起きてルーチンをこなし、朝食をとってから敷物を片付ける。
そこからさらに走ること4時間、目的の町に到着した。
認識阻害をいつも通りに薄めてから近くの検問所に行く。
「ギルドカードを提示してください。」
ギルドカードを見せる。
「問題なし、通っていいですよ。」
「すまないが商業ギルドの場所を教えてくれないか。」
「それでしたらあの赤い屋根の大きな建物が商業ギルドです。」
「たすかった。ありがとう。」
「いえ、またどうぞ。」
教えてもらった建物へと向かう。
商業ギルドに入ると受付に行く。
「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか?」
「素材の買取をしている口の堅い商会を探している。」
「でしたらこの紙をもって5番窓口まで移動をお願いします。」
「わかった。」
5番窓口へ向かいギルドカードの確認と渡されていた紙を職員へ渡す。
「はい、カードはもうしまっていただいて構いません。ご用件は素材の買取をしている口の堅い商会の斡旋ですね?少々お待ちください。」
待つことしばらく。
「お待たせいたしました。こちらの3つの商会が適切かと思われます。」
「この3つの商会で違いはあるのか?」
「そうですね。こちらのベンジャミール商会は主に薬の材料になるものを買い取っています。こちらのマッドネス商会は主に錬金術の材料となるものを買い取っていて、最後のストルギー商会は主にダンジョンで取れたものを買い取っています。口の堅さには違いがないかと思われます。どこの商会も主に取引しているのがそれというだけでそれ以外は買い取らないということもないですし、主要な取引ではないからと買いたたくこともありませんのでお好きなところでいいと思います。」
「そうか、じゃあこのストルギー商会までの道を教えてくれ。」
「この街の拡大された地図はお持ちですか?」
「いや、もっていないが。ここで購入することは可能か?」
「はい可能です。ご購入されますか?」
「ああ、頼む。」
「はい、それでしたらお会計はこちらになります。」
「これで頼む。」
「はい、ちょうどですね。こちらが地図になります。地図に書き込んでしまってもよろしいですか?」
「ああ、構わない。」
「はい、ここがストルギー商会の買取所になります。一般からの買い付けも行っているので紹介状などは必要ありません。直接担当者に素材の買取をしてほしいことを伝え、その際に秘密にしてほしいことを伝えればいいでしょう。この件以外にもご用件はありますか?」
「いや、ない。ありがとう。たすかった。」
そういって席を立つ。
「ありがとうございました。またのご利用をお待ちしております。」
その声を背に商会ギルドを出る。
今日中に買取をしてもらおうと思いながら、ストルギー商会を目指した。




