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ある犠牲者の話

 朝、5:45 いつもの時間に起きる。

 起きたらいつものルーチンを済ませ、時間になったら1階に下りる。


 いつものようにギルドカードの確認をしてから朝食を頼み、しばらく待つ。

 今日はパン、ベーコンにスクランブルエッグ、ミネストローネが乗せられた。

 いつも通りうまい。


 食べ終えたら皿を返し、昨日作り終えることができなかったジャーキーを作るために部屋へと戻る。


 夕方になってようやくジャーキーを作り終えることができた。

 まあ、途中で息抜きに調薬したこともあってか、かなりの時間がかかったが無事に作り終えることができてほっとした。


 明日からは4か月ほどダンジョンに潜ろうと思う。

 というのも最近、夏が近づいてきたからか徐々に気温が高くなっているためである。

 俺は暑いのは苦手なのでこの時期はレベル上げもかねてダンジョンにこもるようにしているのだ。

 (ダンジョンは肌寒いくらいの気温を維持しているため、季節の影響を受けない。)

 

 ジャーキーだが、もうすでに健康状態を維持したまま食い切るには十数年くらいかかりそうな量があるので、そろそろ肉を売りに出したいと思ったところでいいことを思いついた。

 ダンジョンから出たら海沿いの町まで旅行に行って、この町とは反対の方向に進んだところにある町でたまりにたまった素材を売ってくればいいのではないかと。

 その町の商業ギルドで口が堅くて素材を買い取ってくれる商会を見繕ってもらえばいいとも考えた。

 もし俺のことが漏れたらその後は別の町で同じようにすればいいとも。

 そんなわけでダンジョンから帰ってきたら旅行の予定を立てておくことにする。


 この日は夕食の時間まで調薬をして過ごした。


 夕食を食べて、皿を返し、寝る。


 次の日の朝、いつもの時間に起きてルーチンを済ませ、時間になったので1階に下りて朝食をとった。


 皿を返し、認識阻害を軽めにかけていつもの食料品店に行き、いつもよりも多い量を買い込む。

 それが終わればいつもの鍛冶屋へメンテナンスを頼んだものをとりに行く。

 鍛冶屋につき、ギルドカードの確認をしたら預かり証を見せ、しばらく待つ。

 しばらくすると鍛冶屋の親父がものを持ってくる。


 「確認して問題がなければ持って行ってくれ。」


 「今日はこれから4か月ほどダンジョンに潜ろうと思うんだが、この辺はもつだろうか?」


 「4か月か、こっちのほうはもたないだろうな。」


 「そうか、それじゃあこいつを5本売ってくれ。」


 そういってそれなりの値段のする武器を選び会計を済ませ、ものを収納にしまい、店を出る。


 いつものようにメインダンジョン近くの検問所でギルドカードの確認を済ませ、町を出ていく。


 町を出たらメインダンジョンに向かって移動する。


 メインダンジョンに入り認識阻害を強め、魔力が循環し身体強化がきちんとかかっていることを確認する。

 人や魔物を避けつつスキルや魔法を使って移動して10階層を通過しようとしていると、強化している聴覚が遠くで誰かが叫んでいる声を捉えた。


 「嫌だ!!誰か!!!誰かだずっ!だずげでー!!!誰がぁーーーー!!!!」


 念のため遠くから隠れながら位置を確認してみるとゴブリンオーガ(ゴブリンとオーガの中間みたいなやつ。適性階層は13階層でその中でも強者。最後の獲物を嬲る生態を持つ。)に嬲られている少年が見えた。

 高練度の遠見を使ってみていると少し離れたところに2人の死体があった。

 嬲られているところから察するに、彼は運悪く最後の一人になってしまったのだろう。

 腕や足などの命には係わりにくい場所を執拗に粉砕されているのが見て取れる。


 もうしばらくするとゴブリンオーガが飽きて殺すか放り出すかするだろう。

 殺される場合はすぐに死ねるが、放り出されると失血死かほかの魔物に臓腑から食い散らかされてそのさまをまざまざと見せられ、じわじわと殺されることになるはずだ。


 おそらく身体強化や魔纏術を修めないまま自分の限界値に近い階層を選んでしまったのだろうとは思うが。


 まあ、冒険者は自己責任の仕事なのでたすけずに放っておく。

 そうは言っても人によっては助けることもあるようだが(特にナルシストとして有名な彼ならばこの少年だけでも助けたことだろう。)俺はしない。

 俺は彼が即死させてもらえるといいなと思いながら念のため隠密重視でこの階層を抜けた。



 ◇◇◇


少年Aの視点


 いつものようになれた階層で狩りをしていた時だった、3人のレベルが上がってもう少し上の階層でもやっていけるんじゃないかと思って。


 「なあ、レベルも上がったしそろそろ次の階層に行かないか?ここの経験値も渋くなってきたはずだろう?」


 「まだこの階層でもいいんじゃないか?めったに出てこないけど深層から上がってくるイレギュラーな個体もいるって先輩たちが言ってただろう?そんなのと出会ったら死んじまうかもしれないじゃんか。」


 「うーんそうねぇ。やれないわけじゃないとは思うけど・・・。」


 頼れるタンクの彼と研鑽の好きな魔術師の彼女が言う。


 「そうは言うけど、この4年間出会ったことないしさぁ。行けると思うんだよな。」


 「ダメだろう。せめて身体強化とか覚えてからじゃないと危ないって。」


 安定重視の彼はそう言っていた。

 確かに身体強化はすごいものだが今のままでも十分に渡り合えるように思うのだ。


 「でもお前だってここじゃ手ごたえがないって感じてるんだろ?魔物の攻撃を受けるとき十分余力があるじゃないか。」

 

 「それはそうだが・・・。」


 「じゃあ1回顔を出してみる程度にすればいいんじゃないの?少しでも無理そうなら諦めていつも通りやるっていうのはどう?」


 「うーん、それなら。いや、やっぱり俺達には早いような気がするが・・・。」


 「じゃあそれでいこうぜ。やっぱ、やってみなくちゃわかんないしな。」

 

 そういって俺たちは1つ下の10階層に挑むことにしたんだ。


 10階層でも順調に狩りができた俺たちは少しこの階層に滞在することにした。

 そんなときだったあいつが現れたのは。


 「やっぱり問題ないじゃないか、ビビりすぎだって。お前が1撃耐えてくれれば俺がその隙に攻撃して体制を崩したすきにあいつの魔法で片が付く。十分この階層でもやっていけるよ。」


 「そう、だな。すこしビビりすぎていたかもしれん。この感じなら1、2階層下の魔物でも十分に耐えられそうだ。」


 「ねえ、またなにか近づいてくるわ。ここまで出会った魔物とは少し違う反応なの。どうする?」


 「レアな魔物じゃないか?!せっかくだから倒そうぜ!!」


 「まあすでに補足されているなら逃げるのは難しいし、有利な状況で待ち構えた方がいいか。」


 「そろそろ見えてくるはずよ。気をつけて。」


 見えてきたそいつはゴブリンが大きくなっただけのように見えた。

 だからいけると思ったんだ。

 いつものようにあいつの盾が攻撃を受けきってくれると、そう、思っていたのに。


 「来るぞ!」


 そういった次の瞬間彼は盾ごと一撃で粉砕された。

 呆気に取られていると、今度は彼女が首をへし折られて死んでしまった。

 一瞬のことだった。

 イレギュラーな個体だと、そう思った瞬間、俺はヤツに背を向けて逃げ出した。

 しかしヤツのほうが早かった。

 すぐに足をつかまれてものすごい握力でへし折られた。

 痛みに耐えて必死になって叫んだ。


 「嫌だ!!誰か!!!誰かだずっ!だずげでー!!!誰がぁーーーー!!!!」


 だが、願いとは裏腹に誰もたすけには来てくれなかった。

 当たり前だ。

 ダンジョンでは少人数ごとに空間が分けられている。

 ほかのパーティーとすれ違うことは稀だ。

 よほどの幸運でもないかぎりたすけなど来ない。

 

 そうこうしているうちに魔物が俺の手や足の指から関節から何まで粉砕し始めた。

 もう痛すぎて絶叫も上げられない。

 気絶してしまえたらどんなにいいか。

 しかし痛みが強すぎて気絶することもままならない。

 しばらくして、もう腕や足の骨を砕きすぎて砕けるところがなくなったころか、気が付くと魔物は飽きたのか俺を放り出してどこかに消えてしまっていた。


 四肢は砕かれたが命だけはたすかったのだと思った。

 それが何を意味するのか全く考えずに。


 痛みがひどい。

 ちゃんと思考することすらままならない状態で、とっておきのポーションさえ使えればまだ何とかなるはずだと自分を鼓舞し、ポーションを使おうとした。

 ・・・どうやって?

 四肢が砕けた状態でいったいどうやってポーションを使うというのか?

 それを自覚した瞬間に悟った。

 誰かが通りすがってくれるという幸運さえなければ、己はこのまま生きたまま食われるのを待つしかないのではないかと。


 「ぁぁああああああああああああああlllllll」 


 瞬間絶叫した。

 それが悪手だった。

 もともと血の匂いをかぎつけて近くまで来ていたのだろう、肉を好む魔物に声を上げたことで居場所が確実にばれてしまった。

 もっとも声を上げようが上げまいが結末は同じであっただろうが。

 

 現れたのはつい先ほどまで自分たちがたやすく狩っていたはずの猪の魔物だった。

 1匹ではなく3匹ほど一緒にやってきた。

 鼻を鳴らし、よだれが垂れている。


 怖い。

 嫌だ、死にたくない。

 せめて一思いに殺してほしい。

 だが、その願いが叶えられることはなかった。

 そのうち3匹がそれぞれ腹の周りに集まり、服を引きちぎり、やわらかい己の腹にかみついた。

 再び鋭い痛みが体を襲う。

 臓腑が食われているのを体に感じる。

 鉄臭い血の匂いが辺り一面に広がっていく。


 嫌だと思うのに自分の四肢は動かない。

 そうして自分の臓腑が食い散らかされていくのをまざまざと見せつけられる。

 己の体から何か大事なものがあふれていくのを感じていると、だんだん瞼が落ちてきてしばらくすると彼の意識は失われた。

 そしてもう二度と目を覚ますことはないのだった。




やっぱり反応をもらえると嬉しいですね!

もうちょっと頑張ろうかなって思えるので。


肉付けって難しいですね。

なかなか文章に装飾できなくてほぼ骨だけみたいな感じがします。

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