37章 第三のプロット
昔々、大層仲のいい夫婦がいたそうな。
しかしある日海難事故に遭い、夫は妻を救うために命を捨て、死亡してしまう。
一人ぼっちになってしまった妻は塞ぎ込み、いつも暗い部屋で夫のことを想い続けるばかりだった。
今まで二人で暮らしていた家はすっかり広く感じ、それが一層妻の心を痛ませるばかり。
死んだ夫の魂は苗となり、庭に降り立って大きくなり、いつしか桜の木になっていく。
桜の木になった夫は、塞ぎ込み続ける妻を窓から見ながら、妻にこう語りかけた。
「大切な人を失っても、塞ぎ込んではいけない。自分の命を粗末にしてはいけない。君が生きているのは、大切な人がそう望んだからだろう」
夫が帰ってきたと喜ぶ妻、そして妻は毎日桜の木に寄り添い、夫と会話をし続ける。
しかし桜の花が散る頃、春の終わり。
桜の木が霞のように消えていく。
「もう私は消えてしまうけれども、君は現世で生き続けてくれ。いつか迎えに来るから、それまで幸せに生きてくれ」
その言葉に頷き、桜の木が枯れ果ててしまった後も、妻は前を向いて生き続けた。
やがて妻が老衰で意識を失いかけた頃、再び桜の木に花が咲き、満開の桜吹雪を散らせる。
とうとう妻が息を引き取った後、夫妻の庭には二本目の桜の木が生えてきた。
生えたばかりなのに年季を感じさせる二つの桜の木は、いつまでも、永遠に、寄り添い続けるのであった。
めでたしめでたし。




