28章 再び綴りし物語
なんとなく変な雰囲気なってしまった二人を元通りにする方法は、もうこれしかないだろう。
「てめッ、よくも人のプリンを食べくさりやがったな! 楽しみにしてたのに! お前みたいに卑しい奴なんてお家から出て行ってしまえ! むしろエントロピー最大で熱的死しろ!」
「プリン二個買って来て片方クロが食べていたらもう片方は私のだと思うでしょ! しかも片方だけ自分の名前を書くだなんて紛らわしい真似を! この業突く張り、未来ハゲ!」
「うるせえ、力尽くでダウンサイジングするぞ! お前なんてウェルテル効果によって後追いしてしまえ!」
「うっさい朽木糞牆! バーティツで怒涛の攻めを見せて夭折させるわよ!」
トキーオで色々起こった夜、二人は思う存分喧嘩していた。
あの後、二人の雰囲気は異様なもので、お互いを意識しまくる中学二年生のような間柄になっていたのだ。
その状態を打破する為に考えたのが喧嘩である。
毎度の如く悶着を起こした二人は、目論み通り以前のような間柄へと戻っていた。まるであの時交わした言葉が全て白昼夢であったかのように。
……とはいえ表面上というか、お互い自然にいつもの自分が出せるようになっただけ。心の中ではもうどうしようもないくらい好き合っているのだが。
「ああもうクロのいやしんぼに怒るのもバカらしくなってきたわ」
「それについては同感だ、フードファイターばりに食いまくるハルに対して、これ以上何を言っても無駄だってよーく理解できた。……とりあえず今回は見逃してやるから、贖罪として今夜も我が手足となって机に迎え!」
クロが懐から取り出したのは童話のプロットと設定集、その表紙には第二部と刻まれている。
無論これはクロが要求する三つの童話に属すものだ。第二番目の童話である。
「望むところよ、私のすんばらしい文章力で感嘆させ驚愕させ混乱させてやるわ! せいぜい眼球を水素水とかで洗って待ってなさい!」
その冊子を受け取って、ハルは中身をぱらぱらと確認し始めた。
登場キャラクターも舞台も全てが一新、前作とは世界観を共有していないらしい。
それどころか関連性が一切見つけられないのだが、これは本当に三部作にする必要があるのだろうか。
まずは登場人物を頭の中に叩き込み、次いでプロットのほうへと目を通し始めた。




