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ブレイブ・クロニクル・オンライン ~全員が捨てた初期職を7000時間やり込んだら、Lv1で最強になっていた~  作者: ぶらっくそーど


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【二つの声】


【封印の楔】を探すため、ソルシア南部の重度侵蝕地帯に向かった。



 トワ、セレス、タマキ、ゼクスの四人。タマキの浄化薬がなければ侵蝕地帯に入れないので、タマキは必須だ。



 黒く染まった地面を進む。タマキが浄化薬を地面にまきながら道を作り、三人がその後を歩いていく。



「タマキが歩いた道だけ色が戻るの、なんか絵になるな」ゼクスが横で言った。

「えへへ。わたし、人間浄化装置みたいですね」

「浄化装置は言い方が悪くないか?」

「タマキ、えらい。みちをつくってる」セレスがトワの肩から言った。




 侵蝕地帯の奥に進むと──また闇に堕ちたNPCが現れた。今度は三体同時。



 トワが前に出る。三体を同時に相手取りながら、殺さないように動きを止める。記憶干渉を一体に使い、残り二体は純粋にこれまで培ってきた戦闘技術で捌く。



 タマキが浄化薬を三体に投与。セレスが精霊の力を使う。


 しかし、セレスが精霊の力を使った瞬間──変化が起きた。

 セレスの身体が光に包まれ、【覚醒形態】に変わった。巨大な白金色の鹿の姿だ。



「──ルミナリアの封印の残滓が強い。このNPCたちは、長い間侵蝕されていた。浄化薬だけでは足りない、わたしの力を使う必要があるだろう」




 完全に流暢な、大人の女性の声は――あのセレスから。

 いつものかたことではない喋り方に、トワを含めた全員が固まっている。



「セレス──ちゃん?」

「いま、すごい流暢に喋ってなかったか……?」ゼクスも珍しく驚いている。


「セレス……お前……」



 もちろん、トワも驚いていた。でも、【覚醒形態】のセレスを見て思い出した。過去のソルシアで見た『昔のセレス』。今よりも大きく、流暢に話していた頃の姿だ。



【覚醒形態】になると──力が戻るのか?


 でも、今まではそうではなかった。

 ソルシアの浄化によって、セレスの力も戻っていっているのかもしれない。



 セレスがNPCたちに銀色の光を注いだ。瘴気が抜けていく。三体のNPCが正気に戻った。

 治療が終わると、セレスはまたいつもの小さな姿に戻った。




「──ふう。セレス、つかれた」



 そして、かたことに戻っていた。



「セレス……いま、いつもよりハッキリと喋っていなかったか?」

「え? セレス、いつもどおり、しゃべってたよ?」



 自覚がない。覚醒形態の時の記憶はあるが、喋り方が変わっていた自覚がないらしい。



「覚醒形態の時だけ、言葉が戻るのか……?」

「よくわかんない。でも──おっきいすがたのとき、あたまがすっきりする。いろんなことば、でてくる」



 ゼクスがじっとセレスを見つめていた。



「つまり、小さい姿の時は力がセーブされていて、覚醒形態になると全力が出る。言葉もその一部か」

「そういうことだろう。──セレス、無理に覚醒形態を維持する必要はない。普段は今のままでいい」

「うん。セレス、ちっちゃいの、すき。トワのかたに、のれるから」

「ああ、俺もそっちの方がいい」

「えへへ」



 タマキが横で微笑んでいた。



「普段は可愛い片言のセレスちゃんで、戦闘時は頼れる覚醒セレスさん。──二つの顔があるんですね」

「セレス、かおはひとつだよ?」

「比喩だよ、セレスちゃん」

「ひゆ、むずかしい」



 自分たちと一緒に、セレスも成長しているのか。


「トワ、どうしたの?」

「いや……気にするな、何でもない」



 トワとタマキは顔を合わせて、そして笑った。

 セレスだけは分からないみたいで、不思議そうな顔をしていたが。




    ◇




 治療したNPCの一人が──重要な情報をくれた。



「南の楔は──この先の渓谷の底にある。気をつけろ……楔の周りには、【守護者】がいる」

「守護者?」

「ルミナリアが楔を守るために設置した番人だ。──聖騎士の姿をしている」



 聖騎士。アストレアと同じ──ルミナリアの系譜。



「その番人は、生きているNPCではない。封印の術で作られた【光の幻影】だ。……強いぞ。ソルシアの旅人たちが、束になっても勝てなかった」


 ゼクスの視線に鋭さが増した。


「光の幻影──つまり、実体がないのか?」

「実体はある。だが……光属性の攻撃は一切通じない。光で作られた存在に、光は効かないんだ」

「物理攻撃はどうだ?」トワの問いに、NPCは、

「通じないこともないが、相性は良くないだろう。通じるのは……影だ、影の力が効く」

「だったら、問題ないな。光が効かないなら──影が効く。俺の出番だ」



 暗殺者の影の技術。ソルシアが生んだ【光に対抗する力】。

 ゼクスが自信に満ちた笑みを浮かべていた。


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