表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブレイブ・クロニクル・オンライン ~全員が捨てた初期職を7000時間やり込んだら、Lv1で最強になっていた~  作者: ぶらっくそーど


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

85/372

現実の旅路


 火曜日。大学。



 冬夜は講義の後、ゼミ室で学期末レポートのテーマ相談をしていた。比較文化論のゼミ発表が来月に控えている。



「久坂くん。テーマはもう決まった?」



 指導教授──四十代の物腰柔らかい男性、八坂が聞いた。



「……考えています」

「比較文化論のゼミだから、異文化比較が基本だけど。何か興味のある分野は?」

「──仮想空間内のコミュニティ形成と、現実社会のコミュニティの比較」



 ハッと、教授が驚きの表情を浮かべた。



「まさか……VRゲームの?」

「はい。VRMMOの中で自然発生するコミュニティと、現実社会の地域コミュニティの構造比較をしたいと思っています」

「面白いな。実体験があるのかい?」

「……あります。二年間、VRMMOをプレイしています」

「二年間! それは貴重なフィールドワークだ。──いいテーマだと思うよ。進めてくれ」



 ゼミ室を出て、食堂に向かった。宮瀬がいつもの席で待っている。



「ゼミ発表のテーマ、決まった?」

「BCOの中のコミュニティと現実のコミュニティの比較」

「すごい! 久坂くんの実体験が、全部使えるじゃん」

「ああ。旅人の集い、ギルド対抗戦、オフ会──全てが題材になれると思う」

「わたしもBCOやってるから、インタビュー対象にしてくれてもいいよ?」

「考えておく」

「また考えておくだ。──でも、今回は期待してるよ」


 二人きりの昼食。少し時間が遅いからか、辺りに人はいない。

 静かな時間で、お互いの箸の音、呼吸の音、食器の音が響く。

 そうして間を置いてから、宮瀬が口を開いた。


「ねえ、久坂くん。最近、変わったよね」

「何がだ?」

「前より、表情が豊かになった。笑うし、怒るし、困るし。前は『ああ』と『そうか』しか言わなかったって……これは、前にも言ったっけ?」

「言葉は増えた自覚がある」

「それも、セレスちゃんのおかげ?」

「セレスだけじゃない。レナ、カイン、ゼクス、ハル──全員のおかげだ」



 冬夜は箸を止めた。



「もちろん──宮瀬のおかげでもある」

「……わたしの?」

「鏡像の話をしてくれなければ、レヴナントに勝てなかった。BCOの画面を見たいと言ってくれなければ、誰にも見せなかっただろう。薬師を選んでくれなければ──裏世界で回復が足りなかった」

「そんな、わたしは全然──」

「宮瀬は、俺の旅の一部だ。……ゲームの外でも、そうなのかもしれない」



 宮瀬の口は、少しの間開いたままだった。

 嬉しいのか、驚いているのか、上手く返す言葉が思い浮かばないのか、それともその全部か。


「ねえ、久坂くん……」

「なんだ?」

「ううん、なんでもない」



 食堂で二人がぎこちなく笑った。通りがかった学生が「あの二人、付き合ってるの?」とひそひそ話している。冬夜は気づかなかった。宮瀬は気づいていたが、否定しようとはしなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ